「タリーズの紅茶店」じわじわ増えて30店舗に 客単価が高い理由は?

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2024年06月06日 06:10  ITmedia ビジネスオンライン

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「タリーズコーヒーの紅茶店」7年前に誕生して、その後は?

 タリーズコーヒーの新業態として2017年に誕生した「タリーズコーヒー&TEA」(以下、&TEA)。通常のタリーズコーヒーよりも紅茶メニューを多くとりそろえる紅茶特化型の業態だ。現在、全国に30店舗とじわじわと数が増えている。


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 紅茶関連のメニューだけで20種類ほどあり、他店ではあまり見かけない「ロシアンティー」や「ティースムージー」なども。スイーツは、フランス五つ星ホテルで日本人初の製パンシェフを務めた毛利将人氏が立ち上げたカフェ「MainMano(マンマーノ)」がプロデュース。


 ちまたではふつふつと紅茶市場が盛り上がっており、例えば、スターバックスコーヒーでも紅茶特化店の「スターバックス ティー & カフェ」を拡大していて、2024年5月末時点で全国に11店を展開する。セブン-イレブンでも淹(い)れたて紅茶マシンをテスト的に導入して、話題を呼んでいる。


 &TEAの拡大には、どんな狙いがあり、どんな効果が出ているのか。タリーズコーヒージャパン マーケティング本部 ドリンクマーケティンググループ グループ長の本間代子氏に聞いた。


●バラエティー豊かな紅茶とこだわりスイーツ


 タリーズコーヒーが&TEAを始めた背景には、「若年女性を取り込みたい」という狙いがあった。タリーズコーヒーには幅広い層が訪れているが、若年女性層が少なめの傾向があったためだ。


 「タリーズコーヒーを利用されている若年女性のお客さまが好むメニューを分析したところ、紅茶の購入比率が高いことが分かりました。では紅茶メニューを強化していこうと、種類を増やしたり、季節限定の紅茶メニューを販売したりするなかで、徐々に紅茶カテゴリーの売り上げが上がっていきました」


 タリーズコーヒーでは、以前から「ロイヤルミルクティー」の評判が高く、紅茶は一つの強みだったという。紅茶メニューを増やしていったことで紅茶メニューの認知が得られたため、2017年に新業態の&TEAをオープンさせた。


 &TEAでは「ストレート」「フルーツ」「ロイヤルミルク」「スムージー」「季節限定」と紅茶関連のメニューを5つのカテゴリーに分けて、約20種類を展開。タリーズコーヒーでは、ショート、トール、グランデと3つのサイズから選べるが、&TEAの紅茶メニューは「トール」のみとしている。


 「紅茶は小さなカップに2〜3杯飲むような文化があり、特にスイーツと一緒に楽しむなら、たっぷり飲めたほうが良いだろうと。ゆっくり滞在して紅茶をじっくり味わっていただきたいと考えました」


 ドリンクは、タリーズコーヒーで提供するメニューも8〜9割取りそろえている。つまり、通常店のメニューに紅茶メニューが上乗せされているわけで、そのぶんオペレーションは大変になるそうだ。


 スイーツは、フランス五つ星ホテルでシェフを務めた毛利将人氏が監修したオリジナルメニュー5種類をそろえる。注文を受けてからソースやホイップを盛り付ける一手間を加えるなどの工夫もあり、タリーズコーヒーのスイーツより100円ほど単価が高い。


●店内はやや広め、駅ビルや商業施設に出店


 実際に「&TEA KITTE丸の内店」へ足を運んだところ、筆者が訪れたことがあるタリーズコーヒーの店舗よりも広くて明るい印象を受けた。


 本間氏は「&TEAでは一定の広さを確保しており、1人席よりも複数人で座れる座席を多くつくりました。また、くつろぎやすいようにナチュラルな風合いの木材を増やして明るいデザインにしています」と説明した。


 「特に若年女性のお客さまにお越しいただきたい考えがあり、駅ビルや商業施設の女性が集まるフロアを中心に出店しています。実際、女性のお客さまが買い物の合間に立ち寄ることが多いようです」


 &TEAは新規出店するケースが多いが、4月17日にリニューアルオープンした「アトレヴィ巣鴨店」など、通常店をリニューアルして業態転換している店もある。


 「現在、北海道から沖縄まで30店舗に広がっていますが、出店できていない都道府県もあります。タリーズコーヒーは現状、47都道府県に出店しているので、&TEAもゆくゆくはそうできればと」


 出店のハードルとしては、「テナントの意向を汲(く)む必要がある」「タリーズコーヒーと比較してメニュー数が多く、オペレーションが複雑になる」などが挙げられるそうだ。


●タリーズコーヒーより客単価が高い


 &TEAの効果を尋ねると、タリーズコーヒーと比較して客単価が1〜2割ほど高いという。紅茶メニューをトールサイズのみで提供していることに加え、「スイーツ」と「季節限定メニュー」の売上構成比率が高いことが起因するようだ。


 「飲み物と一緒にスイーツを注文される方の比率が高いですね。週末のティータイムが最も混み合う傾向があり、そういったタイミングでスイーツの注文が増えています。また、季節限定商品の売上構成比率もかなり高いですね」


 スイーツは3カ月ほどの周期で、既存メニューとの入れ替わりで新商品を発売している。現在のラインアップで人気のメニューは、「&TEA ミルクレープ ヴァニーユ with T’s アイス」(660円)と「&TEA ルラード カラメッラwith ブルーベリー」(650円)の2つだという。


 季節限定商品については、「見た目がかわいらしい商品は売れ行きが好調。ちょっと特別な気分になれるメニューを求める方が多いのではないか」とのこと。


 例えば、ノンアルコール赤ワインテイスト飲料やブルーベリーを使用した「フローズンティーサングリア」(2023年5月発売)、マスカルポーネ風味のホイップクリームの上に、いちごやブルーベリーをトッピングした「ベリーベリーフロマージュティー」(2024年3月発売)は、販売数が伸びたという(いずれも終了)。


●紅茶市場は盛り上がっている


 本間氏によれば、ここ2年ほど「アフタヌーンティー」や「スコーン」がトレンドなっているそうだ。


 「紅茶そのものというより、紅茶に合う食事やスイーツが主体かもしれませんが、紅茶を楽しむスタイルが盛り上がっています」


 調べてみると、英国式スコーンはクックパッドが2023年に発表した「食トレンド予測2024」に選ばれており、アフタヌーンティーを楽しむことを指す「ヌン活」のブームとともに注目を浴びているそう。スコーン専門店も増えており、百貨店ではスコーンをテーマにした催事を開催していた。


 最近は写真映えするアレンジが施された「進化系スコーン」も登場。スコーンといえば、クロテッドクリームやジャムをつけて食べるのが主流だが、中にフルーツを挟んだり、表面をカラフルにデコレーションしたり、映えるスコーンの人気が高まりつつあるようだ。


 日本紅茶協会によれば、2023年紅茶業界10大ニュースとして、「紅茶のバラエティー化」や「和紅茶への関心」が挙げられていた。例年よりも幅広いフレーバーや淹れ方などを楽しむ紅茶が人気を集め、和紅茶が国内外のお茶品評会やアワードで高評価を得ているという。


 盛り上がりが続きそうな紅茶市場。本間氏いわく「&TEAの知名度はまだまだ」とのことだが、このトレンドに乗って注目度が高まる可能性はありそうだ。


(小林香織)


このニュースに関するつぶやき

  • 自販機に紅茶を増やして欲しいわ。 コーヒーばかり色々種類あって紅茶すらない自販機も………
    • イイネ!18
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