俳優・新垣結衣の新章が始まった!映画『違国日記』での静かな熱演が観客の心に沁みる理由

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2024年06月06日 23:31  Pouch[ポーチ]

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【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、累計発行部数180万部を突破した同名人気コミックの映画『違国日記』(2024年6月7日公開)です。本作で新垣結衣さんが演じるのは、無愛想で人付き合いが苦手な少女小説の作家。

映画『正欲』の演技が絶賛された彼女が、本作でもしっかり役として生きて、スクリーンに爪痕を残しています! では、物語から。

【物語】

少女小説家の高代槙生(新垣結衣さん)は、15歳の姪・田汲朝(早瀬憩さん)と同居することになります。

朝が交通事故で両親を亡くした際、お葬式で親戚に心無い言葉で傷つけられたのを見て「あなたを愛せるかわからない。でも私はあなたを踏みにじらない」と、彼女を引き取る決心をしたのです。

しかし、槙生は朝の母である姉とは絶縁状態。姉に傷つけられた過去をずっと引きずっていました……。

【共感できるヒロイン・槙生】

人付き合いが苦手なヒロインが、大嫌いな姉の娘と同居することになり、不器用ながらもお互いに歩み寄っていく物語。設定そのものに新味があるわけではないですが、槙生のキャラクターは共感度が高かったです。

槙生のそばには、元カレ(瀬戸康史さん)と親友(夏帆さん)がいて、信頼関係を築いています。なので、完全な人嫌いというわけではありません。ただよく知らない人に対して慎重で、誰にでも心を開くタイプではない……というように特別に変わった人ではないんですよね。

こういう人いるし、私は槙生の人間関係の築き方には通じるものがあり、すごく共感しました。だから姪っ子を引き取ったはいいが、どう接していいのか、探り探りに付き合う様子など「わかる〜」と思いましたね。

【相手のことを尊重し、寄り添う】

両親を亡くした15歳の少女と聞けば、誰もが同情するし、なんとか助けてあげたいと思うでしょう。でもこの映画を見て、助けることは、あれこれ世話をしたり、優しい言葉をかけたりすることだけではないんだなと。

槙生は最初から朝を特別扱いしないし、彼女の心に踏み込んだりせず、朝と対等でいようとします。「あなたの感情も私の感情も、自分だけのものだから。分かち合うことはできない」「朝の好きにしたらいい」という言葉は、突き放しているようにも聞こえるけど、槙生はつねに朝に寄り添っています。

その場しのぎの優しさではないところが、槙生の誠実さ。そんな槙生の魅力を新垣さんは丁寧に演じて、スクリーンからその魅力がじんわりと伝わってきました。

朝を演じた早瀬憩さんも良かったですね〜。戸惑いながら同居を始めるけど、槙生がまめな世話焼きタイプではないから、自分でなんとかしなくてはいけない。だから自立していくんですよね。

徐々に槙生と朝がバディのようになっていく姿は微笑ましかった。早瀬さんの “隣に住んでいる女の子感” が、朝役にピタッとハマっていました。

【俳優・新垣結衣の変化】

清潔感のある可愛さで、ずっと大人気の新垣さんですが、前作『正欲』から、俳優・新垣結衣の第二章というか、新たなフェーズに入ったという感じがしていたんですよね。“変わろう” という意志を何気に作品から感じたのですが、『違国日記』を観て、やっぱりと思いました。

Pouchでも紹介した映画『ミッシング』(2024)で大熱演した石原さとみさんは「変わりたい!」と意思表示してがむしゃらにぶつかって変化していきましたが、新垣さんは『正欲』(2023)に続いて『違国日記』でも、粛々と地道に変化をしていると感じました。

本作も地味なキャラクターですが、意外と大衆に溶け込んでしまうような、こういう役の方が、新垣結衣の本質に近いのかも!と思ったり。

ガッキーの変化とともに、見終わった後、温もりを感じる映画『違国物語』。ぜひ劇場で観てくださいね!

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:Ⓒ2024ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

『違国日記』
2024年6月7日(金)より全国ロードショー
監督・脚本 :瀬田なつき
出演:新垣結衣、早瀬憩、夏帆、瀬戸康史

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