柏木陽介が「敵わない」と脱帽したMFベスト5「この5人で中盤を組んだら、僕が興奮する(笑)」

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2024年06月07日 07:30  webスポルティーバ

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柏木陽介が選ぶ「脱帽したMF」ベスト5

◆柏木陽介「好きなFW」ベスト5>>「パサーとしての原点を叩き込んでくれた恩人」

 昨シーズンかぎりで現役を退いた柏木陽介氏。サンフレッチェ広島や浦和レッズで活躍した"走れるファンタジスタ"は、年代別代表や日本代表にも名を連ね、多くのゴールを演出した。

 溢れ出るアイデアと卓越した左足を武器に、ピッチに創造性をもたらしたプレーメーカーが「こいつには敵わない」と脱帽した5人のMFとは?

   ※   ※   ※   ※   ※

── 現役時代はトップ下やボランチとして活躍した柏木さんですが、同じポジションですごいと感じた選手を5人教えてください。

「先に名前を出していいですか。中村憲剛、遠藤保仁、香川真司、清武弘嗣。あとひとりは大島僚太ですね」

── スムーズに出ましたね。

「ほかにもたくさんいますけど、パッと思いついたのはこの5人です。この5人で中盤を組んだら、めっちゃ興奮しますよ。僕が興奮するメンバーということで(笑)」

── では、それぞれについて聞いていきます。最初に名前が出たのは中村憲剛さんですね。

「憲剛さんは文句のつけどころがないですね。対戦相手として本当に嫌だった。フロンターレのすべてを司(つかさど)っていましたからね。逆に言うと、『川崎以外のチームでプレーしたらどうだったのかな』という興味もありますけど」

── どのあたりにすごみを感じますか?

「とにかく賢いし、止めて、蹴るの基礎技術がめちゃくちゃ高い。パスのフィーリングも圧倒的ですね。これに関しては僕も自信があるんですけど、対戦したなかでは唯一、負けるというか、単純にすごいなと唸(うな)らされましたね。

 ヤットさん(遠藤保仁)のパスもすごいとは思うけど、ヤットさんはどちらかというとスルーパスより、組み立てのパスのイメージが強い。でも憲剛さんは、一発で決定機を生み出すパスが本当にうまかった。

 長短のパスも上手だったし、 身体能力やスピードも意外とあるんですよね。試合中に人が変わる感じも含め、最初に対戦した時は『こんなにすごい人いるんだな』って思いましたから。その感情は、憲剛さんが一番かもしれない」

【フロンターレで一緒にプレーしたかった】

── 代表で一緒にやったことはありましたっけ?

「ないんじゃないですかね。もしかしたらあるかもしれないですけど、あったとしてもほんのちょっとだったと思います。やっぱり川崎のサッカーのイメージが強いですよ。本当に嫌だったから。その中心というか、もう、牛耳(ぎゅうじ)っていましたからね(笑)。『川崎=中村憲剛』でしたから」

── 一緒にやってみたかったですか?

「もし、ほかのチームでやれるのであれば、川崎に入ってみたかったですよ。本当にそれぐらい川崎のサッカーが好きだったし、ここでやったらめっちゃ楽しいだろうなって思っていました」

── 川崎の流れで言うと、大島僚太選手の名前も上がっています。

「彼はもう、サッカーIQが半端じゃないと思う。あとは、トラップの置き所がほんとに上手。次に自分が何をしたいかというイメージが明確にあるから、置きたいところにトラップできるんですよ。そのへんの感覚は、5人のなかでも一番すごいかもしれないですね」

── 対戦相手としては嫌でしたか。

「ボールを取れる気がしなかったですね。トラップもそうですけど、身体の向きが常に的確なんですよ。だから取れないし、次のプレーへの移行も早い。うしろ向きじゃなくて、常に半身で受けられるのが、僚太のすごいところです」

── 代表では一緒にプレーしましたよね。

「僚太とは代表でサブ組のボランチを組む機会が多かったんですけど、めちゃくちゃ楽しかったですね。ナチュラルに預けたくなるというか、彼に預けとけば大丈夫でしょっていう感覚でしたから」

── 今でも代表で見てみたい選手ですよね。

「ケガが多いのでかわいそうだなと思いますけど、状態が万全なら、今でも十分に代表でやれると思いますよ。強度の高い今のサッカーでどこまでやれるかはわからないですけど、現代のサッカーのなかでも僚太みたいな選手が活躍するところを見てみたい。彼のプレーが好きだし、そのスタイルを貫き通して、『大島僚太ここにあり』っていうのを今後見たいなって思います」

【流れが悪い時、絶対に何かを起こしてくる人】

── 柏木さんと同じく昨シーズンかぎりで現役を退いた遠藤保仁さんに関しては、いかがですか?

「僕が何かを言うまでもなく、すごい人ですよ。レジェンドです。ヤットさんは、憲剛さんと一緒で賢すぎる。このふたりはチームを扱えるというか、その人のチームになっちゃうんですよ。『もう、監督いらないよね』って言うレベルで」

── 具体的にどのあたりにすごみを感じますか?

「いろいろあるんですけど、一番はポジショニングじゃないですか。ほとんどスプリントはしないのに、走行距離は(1試合で)12キロくらいある。それくらい、常に動いているんですよね。常に周りを見ながら、自分がどこに立てばいいのかっていうのが、頭の中にあるんだろうなと思います」

── ポジショニングひとつで、流れを変えてしまうような感じですか。

「そうです。自分たちの流れが悪い時に、絶対に何かを起こしてくる人なんですよ。たとえば何気なく引いてきても、絶対に思惑があるんですよ。引いて食いつかせて、『はいはい、食いついてくれてありがとう』って思っているタイプですよ(笑)。

 本当にいやらしいし、そういうとこまでも全部考えていると思う。僕も考えながらやるタイプでしたけど、ヤットさんはその一手も、二手も先を考えていたと思います」

── まるで棋士のようですね。

「本当に将棋をしているんじゃないかっていうくらいのレベルで、サッカーをしてたんじゃないですかね。それにヤットさんは、キックもうまいし、トラップもうまいし、視野も広い。よく俯瞰(ふかん)でピッチが見えるって言うじゃないですか。僕もたまにそういう感覚はありましたけど、ヤットさんの場合は常にそう見えていたんじゃないですかね。もう、特殊能力ですよ」

── 続いて、香川真司選手について聞かせてください。柏木さんの同年代の選手なので、若い頃はライバル意識もあったんですか?

「いや、全然。真司がすごすぎて、そんな意識はまったくなかったです。最初に出てきた時は『なんだ、こいつは?』って思いましたから。U-20日本代表の時はあとからメンバーに入ってきましたけど、『なんでこいつがスタメンで出ないの?』って思っていましたよ」

【パスを出すと勝手にチャンスを作ってくれる】

── ポジションを取られてしまう危機感があった?

「いや、当時はなかったですね。僕は無双していましたから(笑)。でも、その後の成長曲線がすごかった」

── 具体的に香川選手のすごさとは?

「もちろん考えてプレーしているとは思うんですけど、真司の場合は天性の感覚が僕らとは別次元にあると感じます。ドリブルの感覚もそうですし、人との距離感とかもそう。感覚的にそういったものが身についている気がします」

── 若手の頃から、世界に行ける選手だと思っていましたか。

「一緒にやっている側としては、絶対に世界に行くだろうなと思っていました。真司自身もその気持ちが強かったですからね。早く海外に行きたいんですよねっていう感じだったから。海外もそうだし、日本代表でもエースになれる選手だなと思っていましたね」

── 日本代表でも一緒にプレーする時期がありました。

「本当にやりやすい。やりやすいっていうか、真司は『陽介くん、俺のこと、見ておいてね』っていう感じだったので、真司のことを見て、普通に出すだけ。そうすれば、勝手にチャンスを作ってくれますから(笑)。

 真司はボールを持つのが好きなので、足もとに出すことが多かったですね。間、間に顔を出すので、そこにつけるという感じで。それでボールを受けた瞬間、一気にトップスピードに乗って、ドリブルでもワンツーでも打開できる。彼のすごさは、やっぱりトップスピードのままプレーできること。瞬間的な速さとプレーの連続性が、真司の真骨頂だったと思います」

── では最後に、清武弘嗣選手のすごさを教えてください。

「キヨは、ひと言でいえば『天才』ですね。サッカーが本当にうまい。あと、これは勝手に僕が思っているだけかもしれないですけど、感覚的に似ているので、めちゃくちゃやりやすかったですね。

 やっぱりそこにいてくれたんだ、とか、預けて動いたらタイミングよく戻してくれたり、とか、そのあたりの感覚が同じだった気がします。まあ、天才だから、結局、僕が操られていただけかもしれないですけど(笑)。でも、キヨと一緒にプレーしたことで、サッカー観を変えられた部分もあるんですよね」

【少しでも追いつきたい想いが原動力だった】

── どのように変わったんですか?

「トップ下は無理だなって。キヨがすごすぎて、僕は向いてないなと思わされたんですよ。こういうプレーがトップ下の選手だよねっていう、お手本みたいな選手だったから。

 いいところで受けられて、狭い局面でもボールを失わないし、パスも出せる。自分でゴールを狙うこともできる。加えて、FWと中盤の間でつなぎ目になってくれる。

 いてほしいところに、必ずいてくれるんですよね。それが本当に大きかった。代表の時も常に目が合ってやりやすかったし、こういう人がトップ下をやるべきで、俺には無理だなってなりました」

── いずれも日本を代表する選手たちですが、柏木さんがここだけは負けないと自負しているところはありますか。

「負けないところか。なんだろう? たぶん、この5人のなかでは誰よりも人づき合いがうまいです(笑)。でも、やっぱりラストパスだったり、FWに刺すパスというのは負けたくない。それ以外は負けているので、そこだけは互角に渡り合いたいですね」

── この5人と対戦する時は、意識しましたか。

「しましたね。この人たちに負けたくないという想いはありました。でも、こういう人たちがいたから、 自分も成長できたし、うまくなりたいと思えたし、長くプレーできたと思っています。少しでも追いつけるようにっていう想いが、原動力のひとつになっていましたよ。

 でも、本当に彼らは真剣にサッカーと向き合って、サッカーだけの生活をしてきた人たちなので、そうではなかった僕は負けて当然なんですよね(笑)」

<了>


【profile】
柏木陽介(かしわぎ・ようすけ)
1987年12月15日生まれ、兵庫県神戸市出身。2006年、サンフレッチェ広島ユースからトップチームに昇格。プロ1年目からレギュラーとしてプレーし、翌年のU−20W杯では10番を背負って「調子乗り世代」の主軸として活躍する。2009年に浦和レッズに移籍し、2010年には日本代表デビューも果たす。2021年よりFC岐阜でプレーしたのち、2023年に現役引退。国際Aマッチ出場11試合0得点。ポジション=MF。身長176cm、体重73kg。

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