『ボブ・マーリー:ONE LOVE』レイナルド・マーカス・グリーン監督インタビュー 「次の世代に向かってインスピレーションを与えたい」

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2024年06月07日 12:01  ガジェット通信

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ガジェット通信

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カリブ海の小国ジャマイカで生まれ、世界中の希望となった伝説のアーティスト、ボブ・マーリー。その今なお愛され続け、心震わす音楽とメッセージ、知られざる激動の生涯を描いた映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』が現在公開中です。

マーリーが愛した妻のリタ、息子のジギー、娘のセデラがプロデューサーとして参画した本作は、奇跡のサクセスストーリー、そして妻リタとの絆など、彼の音楽とメッセージの背後にある物語を描いています。来日したレイナルド・マーカス・グリーン監督にお話を聞きました。

■公式サイト:https://bobmarley-onelove.jp/ [リンク]

●当初、ボブ・マーリーという偉大な人物を扱うことについては、どのような想いを抱かれましたか?

僕は謙虚さを自分の中で大事にしているので、とても光栄なことだと思いました。今でも(光栄に)思っています。世界中の人々にとって、ものすごく偉大な人ですよね。そういう人を忠実に描くには、きちんとしないといけない。個人的にはボブの音楽のノリみたいなものもあるので、楽しく撮影が出来るかなと思っていたのですが、撮影は大変でした(苦笑)。

●さまざまな場所で大規模なロケもしていましたよね。

それこそ言葉の課題があり、ロケも何か国も股にかけ、気候も寒暖差が極端で、今こうして振り返ってみると意外と大変でしたね。

●ボブ・マーリー役のキングズリー・ベン=アディルさんの熱演も素晴らしかったです。

本人の努力が素晴らしかったです。7〜9か月くらいかけて役作りをしていました。体重もボブに似せるため、20キロくらい減量しているんです。独独のなまりを身に着け、わたしたちも全面的に支えるサポートシステムを作るため、彼のバンドのメンバーもジャマイカの本物のミュージシャンにお願いしました。つまり俳優じゃないので誰も演技をしていないですし、みなさんパトワ語で話すので、キングズリー自身も話さざるを得ないんです。そういう状況を追い込むことで、上達も早くなると思ったんです。彼自身もボブの独独の声、歌、動きにしてもすべて、なるべく早くなり切れるようにしていたと思います。彼はもともと知的な俳優なので、つねに自分でメソッドを考え、役作りをしていました。素晴らしいと思います。

●俳優じゃなく、本物のミュージシャンの方々だったのですね。

そうですね。全員プロのミュージシャンで、中でもふたり、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのアストン・バレット役のベーシストは、実際の彼の息子さんなんです。また途中、ロンドンに行ってアフロヘアのギタリスト、ジュニア・マーヴィンと出会いますが、彼の息子さんがジュニア・マーヴィン役を演じているんですよ。

●また今回、ボブ・マーリーのご家族が、製作に参加されていますね。

今回はジギー・マーリーさんを筆頭に、妻のリタさん、娘のセデラさんと、マーリー一家がプロデューサーとして入っています。彼らはひとりひとりボブの違う側面を体現しているようなところがあるんです。血を受け継いでいますからね。たとえば娘のセデラさんであれば、粘り強さ、前に出ていく感じ、ユーモアのセンスなどです。つねに5〜6人のボブ・マーリーに囲まれてるような安心感はありました(笑)。

そういう意味では彼らは自分たちの父親をしっかりと描いてほしいという想いでいてくれたので、僕がブレそうになった時に戻してくれるようなところはありました。そうでなければ作れなかったとも思います。

●確かに人間味あふれるボブ・マーリー像になっていたと思いました

そうですね。まさに人間らしさがないと、いくらみなさんが知っている人物を描いたところで、誰も共感出来ないと思うんです。観客も、結局は自分と同じ人間だったのかというところに着地してくれて共感出来ると思いますし、神格化された完ぺきな人間など世の中にはいないわけですよね。

彼は人生でいろいろなことが重なり、“ボブ・マーリー”になり得たのですが、仮に運命が違うほうに転がっていたら、とんだ人生になっていたかも知れない。幼い頃に父親に捨てられ、路上生活をして、お母さんと離れ離れに暮らすなど、たくさんの困難があり、それを乗り越えてきた。それは人間らしさを持っていたからこそ、乗り越えられたと思うんです。ひとりの人間が、ボブ・マーリーという素晴らしい人物になったのだと、それで観客も励まされる部分があると思うんです。

●最後になりますが、日本のみなさんへメッセージをお願いします。

この映画は、何よりも次の世代に向かってインスピレーションを与えたいことが一番大きかったです。より多くの人、特に彼を知らなかった若者の世代たちが、ボブ・マーリーの歌に込められたメッセージを映画から受け取ってほしいです。社会を変えていくのは若者だと思うので、たとえばこれを観て、次の選挙で投票する人が変わるかも知れない。芸術にしても新たなムーブメントが出て来るかも知れない。いろいろな意味で次の世代にいい影響を与えられればいいなという想いを込めて作りました。

■ストーリー

1976年、カリブ海に浮かぶ小国ジャマイカは独立後の混乱から政情が安定せず、対立する二大政党により国民は分断されていた。僅か30歳にして国民的アーティストとなっていたボブ・マーリーは、彼の人気を利用しようとする国内の政治闘争に巻き込まれ、同年12月3日に暗殺未遂事件が起こる。僅か2日後、ボブは怪我をおして、その後伝説となった「スマイル・ジャマイカ・コンサート」のステージに立つが、身の危険からすぐにロンドンへ逃れる。ロンドンでは「20世紀最高の名盤(タイム誌)」と評されるアルバム『エクソダス』の制作に勤しみ、ヨーロッパ主要都市を周るライブツアーを敢行。かのザ・ローリング・ストーンズやザ・クラッシュと肩を並べ、世界的セレブリティの階段を駆け上がる。一方母国ジャマイカの政治情勢はさらに不安定化し、内戦の危機がすぐそこに迫っていた。深く傷ついたジャマイカを癒し内戦を止められるのはもはや政治家ではなく、アーティストであり国民的英雄であるこの男だけだった…

(C) 2024 PARAMOUNT PICTURES

(執筆者: ときたたかし)

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