小池都政8年間の“最大の問題点”。7つのゼロ未達成、謎の東京アラートよりも注目すべきは

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2024年06月08日 08:50  女子SPA!

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前回の東京都知事選・小池百合子氏の出馬表明会見(2020年6月12日)※小池百合子氏の公式Xより
 2024年6月20日に告示され、7月7日に投開票が行われる東京都知事選挙。

 2016年より8年間、東京都知事を務めている現職の小池百合子氏の近日中の立候補が予想される中、5月27日には立憲民主党・蓮舫参院議員が出馬を表明し、さらに注目を集めている。

 コロナ対策、「7つのゼロ」未達成、朝鮮人虐殺の追悼文不送付、学歴詐称疑惑……これまでの小池都政はどのようなものだったか。

 ヒップホップから政治コメンテイター、言論人としてマルチな活躍をしているラッパーのダースレイダー氏(@DARTHREIDER)が、解説する(以下、ダースレイダー氏の寄稿)。

◆「女同士の戦い」という“煽り文句”への違和感

 2024年7月7日に投開票される都知事選に、現職の小池百合子都知事が出馬するといわれています。5月29日に出馬表明するのではないかという憶測記事が出たのですが、現時点では出馬はしていません。

 しかし、こうした出馬の意向云々という記事が出る時点で、選挙戦は始まっています。小池百合子さんという人は、こうしたメディア戦略のセンスはとても巧みだと思います。ただ、そんな小池都知事も、今回の蓮舫さんの出馬表明には驚いたのではないかと思います。

 現職の小池都知事の対抗馬に蓮舫さんという大物政治家が出てきたことで、「女同士の戦い」的な煽り文句をする記事がたくさん出ているし、今後も続くと思いますが、これには違和感があります。

 選挙の報道で「男同士の戦い」という表記はほぼ見られません。もちろんそれが前提だと思われているから、女性対決というものにスポットライトが当たる形になる。ただ、少なくとも小池さんに関してはすでに都知事を2期務めていることもあり、女性対決だとか男女対決だとかっていう見立てにはあまり意味がないと僕は思います。

 この記事もそうですが、選挙戦に関しての報道がどこに着目しているか? を見るのも面白いと思います。選挙というのは人を選ぶものですから、政策だけを見ることではもちろんなく、所作、振る舞い含めて評価されていくのだろうと思います。

◆当選を目指さない候補者も

 そんな都知事選には現在30名ほどの立候補予定者がいるとされています。「NHKから国民を守る党」は都知事選に新人13人を擁立すると発表しているほか、前々回の都知事選に出馬していた元航空幕僚長の田母神俊雄さんや、タレントの清水国明さんといった方々の出馬表明もあります。

 実は都知事選は前回も非常に候補者が多く、“選挙祭り”としては見どころがたくさんある選挙になりました。権限の大きさや執行する予算が非常に大きい東京都は、特殊な地方自治体です。都知事選は、人口の多さもそうですが首都機能、および企業の本社等も集中している場所で、23区、市町村、諸島部含めて幅の広い自治体のトップを争う選挙になるわけです。

 そういった特色もあるため、注目度は大きい。注目されるということは、たとえここで落選したとしても、自身の政策だったり、政治スタンスを有権者にアピールする場として有効です。本来、選挙は民主主義における僕たちの代理人を選ぶための手段ですが、都知事選は国政選挙レベルの注目が集まり、たくさん報道もされます。当選した候補は、他候補の政策であっても都民のためになると思ったならば、自分が都政に関わる際に参考にしても良いと思います。その意味では選挙は政策の見本市ともいえます。

「当選を目標とせずに立候補するなんて」という正面からの物言いはさておき、立候補者が自身の政治スタンスを発表する場として使うならまだしも、単純に注目を浴びることで、X投稿のインプレッションを上げる、YouTubeの再生数を上げる、いいねの数を増やすといった、政治活動ではない意味で支持者を固めたいという目的にも、適してしまいます。このあたりをどう裁くかは、僕ら有権者にかかっていると思います。

「選挙はお祭り」「選挙ゲーム」といったいろいろな表現がありますが、主催者は僕たち有権者です。僕たちの代表を選ぶための場所なので、都知事選をさまざまな理由で利用する候補者の思惑に対しての審判を下すのは、われわれ有権者であるという意識を改めて強くしたいところです。

◆3密、ソーシャルディスタンス…小池都政のコロナ対策とは

 こうした選挙の場合、注目候補というのが出てきます。現職の小池都知事はすでに2期・8年を務め、次に当選すると3期目になるわけですが、小池都政に関してはいろいろな評価があります。

 これは日本に限らずですが、さまざまな地方自治体や、国家のトップは、2020年からコロナウイルスのパンデミックの対応に追われ、それによって本来目指していた政策とは異なることに労力を割いてしまった時期がしばらくあったことは共通しています。これは東京都も例外ではありません。ただ、コロナ禍は政治家の資質を問う局面でもあったと思います。

 東京都のコロナ対策はどうだったか。小池知事は全国に先駆けて積極的にコロナ対策を進め、時には国との対決姿勢も見せました。疫病の感染が拡大しているときにどういった対応したかという意味では、小池都知事は「3密」や「ソーシャルディスタンス」といったワードセンスでコロナ対策を打ち出していきました。「五つの小」もありました。小人数、小一時間、小声、小皿、小まめにマスク、換気、消毒と言う五つの習慣をコロナ対策として打ち出したのですが、小は小池の頭文字であり、小人数含め無理やり自分の名前にこじつけている印象が強いです。

 その実効性に関しては、僕は「20時」を境とした夜の街を控えろという政策の合理性にはかなり疑わしい。僕自身がミュージシャンでもあり、ライブハウスやクラブといった業種への締め付けのダメージは深刻であり、補償の問題もおきました。また、都民に警戒を促すため東京都庁やレインボーブリッジを赤くライトアップする「東京アラート」にどんな効果や意味があったのかにも、非常に疑問があります。

 ただ今回の都知事選を踏まえて言うならば、前回の都知事選がこうしたコロナ対策を行っている中で行われていたことを考える必要があると思います。結果として、小池都知事は366万1371票を獲得して当選しています。次点の宇都宮健児氏に280万票以上の大差をつけており、これはもう絶大な、そして圧倒的な選挙の強さだと思います。山本太郎さんだったり、後に日本維新の会から国会議員になる小野泰輔さんなどは、まったく及びませんでした。

◆前回は選挙活動をしなかった小池知事

 どんな選挙活動をして366万票を取ったのかというと、小池都知事は選挙活動をやらない選挙を展開したのです。各候補の討論会にも出席せず、オンラインのみで街頭演説も行わない。代わりに何をやったかというと、コロナ対策です。

「知事の仕事に注力することが現職の務めだ」というスタンスを取って、街頭に出るような選挙活動を行いませんでした。ただし、毎日の定例会見などでは常にメディアに対して、自分の政策や姿勢、名前、ビジュアルの露出を続けていたわけです。

 これは僕からしたら立派な選挙活動です。ただし、この選挙戦は現職のみが可能であり、そして他候補とは圧倒的に平等ではない選挙戦を展開していたとも言えます。記憶に残っているのは、小池都知事の声で流れる電車内などでのコロナ対策アナウンスの冒頭で「東京都知事の小池百合子でございます」と、自身の名前を言っていました。

 これも穿った見方かもしれませんが、選挙のときに街宣車から名前を連呼することと同じです。自分が立候補しているということを認識してもらうという意味で、実は名前の連呼にはすごく効果があると言われています。

 小池都知事の戦略は、既にある知名度に加えて、コロナ対策を通してのアピールもした。コロナ対策自体は自治体の長としては当然取り組まなければいけないことなので、これは選挙戦ではないという批判と切り分けるのは難しいのですが、僕は巧みな選挙戦略として受け止めていました。

◆「7つのゼロ」未達成、朝鮮人虐殺の追悼文不送付

 近年は明治神宮外苑の再開発事業への反対の声が出てきている中で、僕は小池都知事が当初、政策の一丁目一番地として掲げていた都政の透明化からは遠く離れてしまったのではないかと思います。

 選挙公約として掲げていた「7つのゼロ」の達成率はどうなっているんだ、というツッコミもあります。公約の達成は物によっては難しかったりもしますが、「7つのゼロ」を公約として掲げておいて、達成率がゼロなのは悪い冗談のようです。最初に大きな看板を上げても、時が経てば有権者は忘れると思っているのでしょうか? それとも本人が忘れてしまったのでしょうか。

 しかし、何よりも僕の中で問題だと思っているのは、関東大震災が起こった9月1日という日に、朝鮮人虐殺の犠牲者に送る追悼文を、小池都知事になってから送るのをやめていることです。石原慎太郎さんをはじめ歴代の都知事はみんな送っていました。

 この追悼文は、震災という自然災害の犠牲者ではなく、震災後に噂されたデマなどによって虐殺されてしまった朝鮮人の人たちに対するものです。人為的に引き起こされてしまったこうした悲劇が繰り返されないようにという意味も含めて、追悼文を送っていたわけです。

 加藤直樹さん著『九月、東京の路上で -1923年関東大震災ジェノサイドの残響-』(ころから刊)などの本でも明らかにされているように、行政、そしてメディアも含めてデマの流布に加担した結果、震災を生き延びた人たちが、市井の人の手によって犠牲になる事件が東京で起こりました。

 小池都知事は不送付の説明として、「都慰霊協会が営む大法要で、すべての震災犠牲者を追悼している」としているんですが、虐殺の犠牲者は、震災は生き延びているわけです。震災は生き延びているにもかかわらず、その後デマが流布されたことによって、人の手で虐殺されてしまったと。

 昨年、森達也監督の『福田村事件』なども劇場公開されて、こうした悲劇が、さまざまな場所でいろいろな規模で起こっていたということに、改めて恐ろしさを感じています。小池さんは東京都の知事として、このような悲劇を繰り返さないための強いメッセージを発していない。追悼文を送らない理由についても論点をずらした回答しかしていません。

 先日、小池都知事の名前と顔入りのメッセージ付きで東京防災ハンドブックが全都民に配布されましたが、防災後の悲劇から目を背けるような態度で自治体の長が務まるのかは疑問です。

◆くすぶり続ける小池氏の学歴詐称疑惑

 もう一つ、小池都知事に付いてまわるのが学歴詐称疑惑です。自身のプロフィール内に、エジプトのカイロ大学を首席卒業したとあったわけですが、この首席というのは本人の勘違いだったという弁解もされています。小池都知事は卒業証書を証拠として公開していますが、学歴詐称疑惑はずっとくすぶり続けていて、選挙のタイミングごとに取り沙汰されます。

 4年前の選挙のときにも、石井妙子さんによる『女帝 小池百合子』(文芸春秋 刊)という小池都知事を扱ったノンフィクションが出版され、その中で小池都知事のカイロ大学時代の同居人・北原さん(単行本出版時は仮名、文庫本出版のタイミングで実名で告発)の証言によって、カイロ大学の卒業にかなり疑わしい点があるという告発がされていました。

 この本は広く読まれ、再び小池都知事の学歴への疑問が高まったのですが、その際、Facebookの駐日エジプト大使館アカウントから、カイロ大学の声明文が発表されました。「小池百合子はカイロ大学を卒業しました」という声明がカイロ大学から出たため、追及は一旦は止むことになりました。

 ところが2024年4月に発売された『文芸春秋』で、都民ファーストの会東京都議団政務調査会事務総長を務め、小池都知事の元側近である小島敏郎さんが「私は学歴詐称疑惑の隠蔽工作に加担してしまった」という手記を発表しています。カイロ大学の声明文の原稿を書いたとされるジャーナリストも登場します。外国人記者クラブなどで会見をした小島さんは、もし次の選挙で学歴にカイロ大学卒業と小池都知事が記した場合は、公職選挙法違反による刑事告発も考えているという姿勢を見せています。

◆「小池都知事のプロフィール」が最大の注目点に…

 同居人からの告発がある中で、今度は元側近による告発が出ている点は、非常に大きいのではないかと思います。

 実はメディアはあまりこれを取り上げていなかったんですが、最近は毎日新聞でも小池百合子さんの過去の発言などを踏まえて、なぜこの学歴問題がいまだにくすぶっているのかという検証記事を上げています。小池さんのキャリアの出発点がカイロ大学卒業であったことを考えれば、学歴問題は決して小さなものではないと思います。

 小池都知事の出馬に関して、プロフィールに学歴のことを書くかどうかが、最初の注目点になってしまっていると思います。

 僕の予想では、小池都知事は非常に弁も立つし、メディア戦略に長けた人でもあるので、もしこの学歴詐称疑惑に向き合うとしたら、

「今後2024年からの東京は、学歴などのステータスに頼らずに、あらゆる人にチャンスを与えることができる。誰1人取り残さない行政を目指してまいります。そのために私も率先して学歴をアピールしない」

 とすら語るのではないかと思っています。これは完全に僕の憶測ですが。

<文/ダースレイダー 構成/女子SPA!編集部>

【ダースレイダー】
1977年、フランス・パリ生まれ。ロンドン育ち、東京大学中退。ミュージシャン、ラッパー。バンド、ベーソンズのボーカル。吉田正樹事務所所属。2010年に脳梗塞で倒れ、合併症で左目を失明。自身のYouTubeチャンネルから宮台真司、神保哲生、プチ鹿島、町山智浩らを迎えたトーク番組を配信している。2023年には映画『劇場版センキョナンデス』『シン・ちむどんどん』(プチ鹿島と共同監督)公開。近著に『イル・コミュニケーション―余命5年のラッパーが病気を哲学する―』(叢書クロニック)など

このニュースに関するつぶやき

  • まるで中身のない「悪夢の民主党政権時代」みたいな話だな。蓮舫はそこの主要メンバーだよな?その上、最近では立憲共産党になってきてるから、もっと悪くなりそうだ。
    • イイネ!8
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