サイゼリヤのスマホ注文が合理的なワケ 実体験で分かった“利用者ファースト”な仕組み

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2024年06月09日 06:11  ITmedia Mobile

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サイゼリヤが新たに導入した「セルフオーダー」。メニューに記載の番号をスマートフォンで入力し注文する

 サイゼリヤの注文方法が激変した。これまでは利用者が各テーブルにある注文用紙に注文したい商品の番号を記入し、店員に渡すことで注文できたが、一体、何がどう変わったのか。都内近郊の店舗で試して分かったことをまとめる。


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●どのように注文するのか


 サイゼリヤは、店舗と同じ屋号の企業、サイゼリヤ(埼玉・吉川市)が運営するイタリアン・レストランのチェーンで、メニューが豊富で低価格なことで知られる。2023年8月時点での店舗数は、国内で1055店舗、海外で485店舗となっており、合わせて1540店舗だ。


 レストランの注文方法といえば、紙カタログをめくって食べたい料理を注文するスタイルが一般的だが、ここ数年でタブレット端末などを使った注文に切り替える店舗が多い。サイゼリヤでは、タブレットは導入していないが、注文記入票が紙からデジタルに置き換わった。新たな注文方法は「セルフオーダー」という名称だ。


 ここからは、実際の注文手順を見ていく。


 利用者はまずテーブルに設置された札のQRコードを読み取り、画面に表示されたリンクをタップする。すると、注文者の人数を選ぶ項目が表示されるので、1席を何人で利用するのかを選択する。


 ここからが注文だ。スマートフォンの画面にメニューが表示され、そのまま注文できるわけではなく、テーブルに置かれたメニューブックを見て、どの商品を注文したいのかを決める。注文商品の番号を入力したら、「次へ進む」をタップする。


 次にいくつ注文するのかを決め、「注文かごへ追加する」をタップする。1度に複数の料理やドリンクを頼むことはできるが、自分のペースに応じて何度かに分けて注文することも可能だ。他のメニューを頼む場合は「追加」、注文を完了するには「注文」を選択する。


●合理的なシステムも、まだ試験導入の段階


 一通り使って特に便利だと感じたことが2つある。


 1つは食事中であることを明示できること。一度注文すると、札(電子ペーパー)に記載の文言が、「いらしゃいませ」から「お食事中」に切り替わり、トイレなどを理由に離席している間、食器を片付けられる恐れがない。


 もう1つはデザートをいつ持ってきてもらうのかを指定できること。例えば、「イタリアンジェラート」のメニューには「(すぐに)3205」「(あとで)3905」が並んでおり、食前なら3205を、食後なら3905を入力すれば済む。これにより、店員側はデザートを提供するタイミングを利用者に聞かずに済み、利用者側も店員とやりとりをせずに済む。


 なお、インターネットへの接続が途切れるなどの理由で、途中から操作できなくなってしまった場合でも、インターネットに再接続して改めて札のQRコードを読み込むことで注文ができるようになっている。


 食事が済んで会計を行う場合は、「会計する」をタップし、スマートフォンをレジへ持っていく。店員は利用者のスマートフォンに表示されたバーコードをレジでスキャン。最後に利用者が支払いへ進む流れとなる。紙のレシートを店員に渡すことでも会計できる。


 サイゼリヤがスマートフォンの注文に切り替えているのはなぜだろうか? 同社広報はITmedia Mobileの取材に「DX化により、お客さまにはより便利にご利用いただき、従業員はより働きやすくするために導入を進めております。また、タブレットを用いたセルフオーダーより投資対効果が高いと考えたためです」と答えた。


 なお、全店舗でこのセルフオーダーを利用できるわけではなく、まだ一部の店舗で試験的に導入している段階という。「現在は紙を用いたオーダーとの併用をしておりますが、今後についてはスマホオーダーへ移行予定しております。QRコード等の決済手段やスマホ決済の連携などについても現在検討を進めております」(同社広報)


 DX化を理由にタブレットを使う注文に切り替える外食チェーンはコロナ以降で増えた。かつて店員のiPod touchで注文をする方式を採用していたサイゼリヤも、この潮流に乗ると思われたが、注文の全てをスマートフォンやタブレットにせず、大きなメニューを見ながら注文したり、会計もあえてスマートフォン決済だけにしたりしないところは、利用者ファーストな考え方だ。


 もっといえば、スマートフォンを持っていない、あるいは通信障害などでインターネットに接続できない場合でも、紙のメニューをあえて廃止しないサイゼリヤなら、従来同様、メニューを見て店員とやりとりをし、注文から決済までを行える。


 実体験をへてあらゆるシーンを想定した合理的なシステムだと感じた。これがさらに普及していくのか、あるいは実験的な導入で終わるのか、利用者の反応も含め見ものだ。


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