妊娠9ヵ月の女医、出産とキャリアを両立させるには?「”無理な理由”を考え出すとキリがない」

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2024年06月09日 16:30  ORICON NEWS

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ワーキング妊婦・ちまさん
 宅浪での医学部再受験を経て29歳で医師国家試験に合格。臨床医として研修をスタートさせたちまさん(@chimachima_chim)のSNSでの発信が話題に。なんと20代最後の年に、研修医としての新生活に、結婚、妊娠・出産が一度に押し寄せることとなり、ライフステージに劇的な変化をもたらしたという。女性医師の産休や育休は、その後のキャリアを考えるとなかなか難しい側面もあるが、妊娠適齢期に直面したときにはそのバランスをどう捉えたらいいものなのか。実体験をもとにちまさんに話を聞いた。

【写真】美人女医・ちまさんの袴姿、ワーキング妊婦研修医に

■妊娠中に医師国家試験の勉強もしていた…「両立可能」と判断した真意

――29歳で「大学卒業・研修医スタート・結婚と妊娠」が同時にやって来たそうですが、どのようにして全てをやり切る決断に至ったのですか?

【ちま】妊娠したのは昨年の秋頃で、今後のキャリアを見据えたときに、やるべきことが2つあり、どちらも両立可能と考えました。まずは1月の「医師国家試験」、次に4月から始まる「2年間の初期研修」です。国家試験の勉強に関しては「悪阻の度合いはわからないけどなんとかなる、やろう」という楽観的な考えがありました(笑)。 初期研修は「90日間休みがあると修了できない(延長になる)」との規定があったので、最短の産休期間なら両立可能だと予測しました。

――実際にはどうでしたか?

【ちま】将来像の話をする上で、夫は「家族が軸」という価値観があり、「育休を取る」と言ってくれていました。また、国試直前は安定期だったことや、運良く悪阻がほとんどなかったこともあり、無事に国家試験に合格することができました。現在妊娠9ヵ月ですが、今のところ順調に研修医として勤務を続けることができています。

――現在、妊娠9ヵ月で6月中旬から産休に入られるそうですが、職場の理解度はどういった感じですか?

【ちま】勤務先の病院には、国家試験合格のタイミングで妊娠や産休についてお話ししました。産休期間や復帰時期についても体調に問題なければと、こちらの意向を承諾してくださり、とても楽しく勤務させていただいています。

――ご家族にもサポートをしてもらっていますか?

【ちま】出身は関西で現在は関東勤務ですが、里帰り出産を予定しているので、産前産後は実家で過ごす予定です。再受験で医学部に入学したので適齢期であることや、私が「やりたいと思ったらやる、頑固で突発的なやつだ」ということは母も理解していたので、「またかいな〜。私に迷惑かけへん限り好きにし〜や」というスタンスで楽しみにしてくれています。

――では、パートナーさんは?

【ちま】夫は私の「突発的・ガサツ・欲深い性格」を理解し、尊重してくれています。彼は私と正反対で、かなり穏やかで真面目な性格なので、私に足りないところを補ってくれています。お互い前向きな性格なので、不安よりも「どうしたらお互いが快適に乗り越えられるか」を話し合い、彼が育休を取って私は研修に最短で戻るという結論になりました。私だけの力ではどうしようもなかったことですが、職場・家族・パートナーなど周りの方々に恵まれたことに本当に感謝しています。

■「自己分析」と「環境設定」が大事 出産とキャリアを両立させる上で欠かせないこと

――女性がキャリアを築く上で、産休や育休が足かせとなるケースもあるかと思います。女性医師の方たちが置かれる現状はいかがでしょうか?

【ちま】医師の仕事は常に勉強の日々です。科にもよりますが、ブランクが空くと手技の感覚が抜ける不安もあり、長期で育休を取る可能性を考えると、妊娠に踏み出せない女医さんは多いと思います。一方、医師は働き方次第でコスパ良く収入を得る方法もあります。だからこそ、プライペートとキャリアを考える上で大事なのは、「自己分析」と「環境設定」の2点だと感じます。

――具合的に言うと?

【ちま】「自己分析」は自分の数年後の理想の医師像を細かく分析することです。例えば、「専門性を極めたい?」「プライベート重視でコスパ良く稼ぎたい?」など。専門性を極めたいのなら、長く休暇を取るのは難しくなるため、両親やパートナーの協力はマストになる。だから、そのための土台固めを早めにしておく。一方、収入とQOLを重視するのなら、美容に進んだりフリーランスになったりすることで、効率良く働くことも可能です。その場合、育児を軸にして、医師のアルバイトで生活を送る選択肢もあります。

――すごく参考になる考え方です。

【ちま】出産育児とキャリアの両立は「無理な理由」を考え出すとキリがないので、逆に「どうすれば理想に近づけるか=実現する方法」を考えて、自分の理想から逆算して計画を立てる必要があると感じます。

■女性は「年齢によるリスク」が付き物 産みたいと思ったときに産める環境が理想

――投稿に対して「職場に迷惑なのでは?」といったコメントをもらうことも。どう受け止めていますか?

【ちま】「産休で当直要員がいなくなると誰かが穴埋めする必要がある」「上級医が気を使わなければならない」という2点があるようでした。前者については、幸いなことに今の勤務先では研修医は当直要員ではなく任意なので、「迷惑」にはならないと判断しました。後者については、考えてもどうしようもないので、なるべく気を使わせないために「妊婦とは関係ないクオリティで働く。それが無理そうなら研修期間が延長になるとしても休みを取る」と決めて、上級医の先生にもそう伝えて毎日勤務しています。

――非常に難しい問題ですよね。

【ちま】妊娠時期に関しては、女性には「年齢によるリスク」が付き物です。「マイナスな想定が先行して考えても答えが出ないこと」を懸念して自分の選択肢を狭める必要はないと感じます。とはいえ、それが自己中心的な選択となり、周囲に迷惑をかけることはあってはならない。両者のバランスは難しいと感じますし、今後も私の課題でもあります。一番の理想は、どのフェーズにいる女性も「産みたいと思ったときに産める環境」を設定すること、例え匿名であっても、「迷惑だ」などとマイナスな個人的な主観を発信しないことだと感じます。

――旦那さんが育休を取り、ちまさんは最短復帰を目指すとのことですが、夫婦ではどのような話をしたのですか?

【ちま】話す上で軸に置いたのは、お互いの「幸福観」です。彼の一番の幸せは「家族の幸せ」。私は「家族も仕事も友達も遊びも全て100でいること」。彼はそんな私の価値観を尊重して、育休を取る選択をしてくれました。

――臨床医としてやりがいを感じる部分と今後の目標を教えてください。

【ちま】自分の治療で患者さんの状態が改善することにやりがいを感じます。(今は指導医の先生のご指導のもとなのでまだまだですが…)小さい頃から「オンリーワンになる」ことが好きでした。「ナンバーワンになる」よりも性格的にオンリーワンでいる状態が快適で、そのためなら自分は頑張れると感じました。とはいえ、医師を極めるのは非常に大変な道のりだと感じています。なので、今はまだ臨床医としてのキャリアを進むかどうかも不透明ですが、2年間の研修医を全力で全うし、その中で自分が一番ストレスなくオンリーワンを目指せて、かつ人を幸せにできる進路を考えていきたいと思っています。その過程で研修中に取得可能な資格の勉強も進めていきたいです。今は「とにかく毎日全力で」を積み重ねる研修生活を送ることを自分に課しています。

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