生活保護家庭から東大に現役合格したけど学費が払えず…「もっと働けと言われるのはつらい」

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2024年06月09日 16:31  日刊SPA!

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鈴木優斗さん
―[貧困東大生・布施川天馬]―
 2024年5月に東大が授業料引き上げを検討したと報じられました。現在の学費は年間53万5800円ですが、64万2960円へ上昇する見込み。

 40%以上が世帯年収1,000万円以上と目される東大生。多くは親が学費を払い、彼らに10万円の値上げ程度は問題ないように見えます。

 しかし、少数ながら貧困にあえぐ東大生も存在します。奨学金や学費免除制度を駆使しながら、なんとかしがみつく学生たちにとって、学費値上げはどれほど負担なのでしょうか。今回は、現役東大四年生の鈴木優斗さん(仮名・22歳)にお話を伺います。

◆学費も生活費も自腹。休学を余儀なくされる

「僕は大学院進学を考えていますが、このニュースは寝耳に水でした。大学院に進学する前に値上げされたら、10万円上乗せで払う必要が出ます。ただでさえ金がない大学院生には痛手すぎます」

 大学院は修士課程と博士課程の2つに分かれており、博士号をとるためには修士号を取らなくてはいけません。学部時代よりも勉学に励まなくてはいけませんが、彼には一人で学費を工面する必要があるといいます。

「親が払ってくれるような裕福な家庭ならまだしも、僕は生活保護世帯の出身で、学費や生活費も全額自腹です。奨学金も借りましたが、東京で一人暮らしする生活資金に消えました。今は仕方なく休学して、学費を稼ぐために働いています」

 彼は、月に15万円は最低でも稼ぎたいと語ります。内訳は、水道光熱費、家賃、食費や通信費で10万円。さらに、学費の貯金を5万円。

「週20時間程度にセーブして、学習支援のアルバイトをしています。時給はいいんですが時間が固定ではないので、朝6時から21時まで働くこともありました。その日は帰宅して26時まで勉強しましたね。どんなに疲れていても、毎日勉強していないと不安になります」

◆「もっと働け」の声がつらい

 決して少なくない労働時間ですが、周囲からは「もっと働け」と厳しい言葉をかけられることもあるそうです。

「僕は大学院で研究者になるための勉強がしたい。いまも毎週同期と集まって一日がかりの勉強会を開催しています。その日はもちろん、発表準備や予習復習の時間を考えると、これ以上働く日を増やすことはできません。勉強を頑張りたくて大学に入ったのに『もっと働け』と言われるのはつらい」

 彼の本懐は勉強で一旗揚げ、研究者になることです。しかし、稼いでいる額がギリギリなので、最近では仕事を優先せざるを得ず、勉強がおざなりになっていると語ります。本来の目的がおろそかになっている現状に迷いも生じるそうです。

「ストレートで大学院に進学する予定でしたが、一度就職することも考え始めました。これ以上不安定な生活を続けていけるか、自信がありません。

 ただ、労働に追われる日々になったら、今と同じレベルまで勉学を磨きなおせる確証もない。生活保護の家庭から頑張ってきたけど、結局お金の問題で夢をあきらめざるを得ないのは本当に悔しいです」

 大学院入試が学部入試より簡単だと考える人もいるようですが、こと東大に限ってそれはあり得ません。彼の選考する学科では30人が受験して2、3人しか合格できないような狭き門です。

 本来大学は研究機関であるべきで、そこから大学院に進学希望を出す学生は、大学の設立目的を果たした希望となる存在のはずです。しかし、現状は大学側の采配が大学院進学希望者を絶望させています。研究者をおろそかにする国に未来はあるのでしょうか。

―[貧困東大生・布施川天馬]―

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Twitterアカウント:@Temma_Fusegawa)

このニュースに関するつぶやき

  • 博士号取得には課程博士(大学院博士後期課程修了者)と論文博士(大学院を経ずにいきなり博士論文を提出し、認定してもらう)があるが、論文博士は先ず出ないからな…
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