ナプキンの「表と裏がわからない」生涯約450回やってくる「生理」を男子校の生徒が学んでみた

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2024年06月10日 06:10  週刊女性PRIME

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実際にナプキンに触れ、吸水される様子を見て学ぶ男子生徒たち 撮影/山田智絵

 今期の朝ドラ『虎に翼』で、ヒロインが重い月経痛で4日間寝込むシーンが登場。そんななか、東京都豊島区の男子校・本郷学園で、中1〜高3の生徒30人を対象にした生理セミナーが行われた。講師を務めたフェムテック会社Be-A Japan社長・高橋くみ氏(高=はしごだか)が語る、生理を取り巻く環境の変化とは。

2020年よりスタートした「生理セミナー」

 5月中旬、東京都豊島区にある本郷中学・高等学校(本郷学園)で、生徒を対象にした生理セミナーが開催された。同校は、中高一貫の男子校。従って、参加者は全員男
子生徒だ

 この日は教員と一部の保護者のほか、取材に訪れたメディア関係者も多数参加し、教室内はほぼ満席だった。

 セミナーを主催するのは、サニタリーショーツなどの女性用商品を販売する株式会社Bベアe-A Japanの代表取締役CEO・高橋くみ氏。経営の傍ら、生理への理解を深めることを目的とした「生理セミナー」を、2020年よりスタート

 本郷学園での開催は、2022年以来2度目となる。「生理の基礎知識」「近年の生理用品事情」「生理と社会」の3つをテーマに、男子生徒たちに生理を伝える

 前半では、女性の身体のメカニズムと、生理が起きる仕組みについて解説。生徒たちのテーブルに、ピンクに着色された水が入ったメスシリンダーが置かれる。

「メスシリンダーには140mlの水が入っています。個人差はありますが、これが1回の生理で排出される経血の量の基準値です」

 と高橋氏から説明されると、生徒たちから思わず、「えー」という驚きの声が漏れた。

 さらに、現代の女性は、生涯で約450回の生理を経験すること、生理の期間以外もホルモンバランスの影響で体調がすぐれない日が多くあるという話に、生徒たちは熱心に耳を傾けていた。

 セミナーでは、生理用ナプキンに実際に触れてみるワークショップも実施。ナプキンを手にした生徒たちからは「表と裏がわからない」「なんで糊のりがついているの?」など、疑問の声が上がる。

 高橋氏から「メスシリンダーにある水を、ナプキンにかけてみてください」と声がかかると、恐る恐る、水をナプキンにかける生徒たち。吸水される瞬間を見て、「思ったよりも吸水が速い」「この状態で生活するんだ」など、さまざまな感想がこぼれた。

 続いて、ディスカッションのコーナーへ。高橋氏から「経血が服からにじみ出ている女性を街で見かけたら、どう対応すべきか」という問いが投げかけられると、各テーブルで真剣な議論が交わされた。

月経不調による労働損失は4900億円を超える

「異性から声をかけられるのを嫌がる人もいる。近くにいる女性に事情を話して、助けてもらう」「電車で隣り合わせた人がそうなった場合は、手伝えることがあるか聞いて、必要なら一緒に降りる」など、相手を慮おもんぱかる意見が多くあがった。

 休憩を挟んで後半は、「生理と社会」について。近年注目されている「生理と貧困」の問題や、月経不調による労働損失が4900億円を超えるという事実、さらに生理用品の税率問題といった、社会的課題についての講義が行われた。

 すべての講義が終了すると、代表の生徒から高橋氏へ感謝の言葉が述べられた。

「生理は個人の悩みに捉えられがちですが、それが社会全体の課題になることがわかりました。われわれ男子校生は、生理に接する機会が極端に少ないので、今回のセミナーは大変有意義な時間でした」

 こうして2時間のセミナーは幕を閉じた

 セミナーを主催した高橋氏によると、生理を取り巻く環境は、「この数年間で驚くほど変わった」という。

「4年前、生理に関する特集を組んでもらうため、テレビ局に企画書を出したことがありました。ところが局から『地上波で生理を扱うのは無理です』と言われたんです」

 結局、2つのテレビ局からNGを突きつけられ、企画は立ち消えに。企画を後押ししてくれた女性プロデューサーからは「私たちメディアから社会を変えていかなければならないのに、すみません」と謝られた。

 しかし、百貨店の催事などで地道に生理セミナーを続け、2022年に本郷学園で1回目の生理セミナーを開催。すると、NHKをはじめ、3つのテレビ局が取材に訪れ、その様子が地上波で放送された。

 2年の間で、メディアが生理を取り扱うようになっていた。その背景には、コロナ禍で浮き彫りになった「生理の貧困」が関係していると高橋氏は分析する。

「経済的な理由と生理に関する知識がないことで生理用品を購入することが難しい『生理の貧困』と呼ばれる問題が、に社会的な問題であることが認知され、世の中全体が、生理から目をそらすことができなくなったのだと思います」

 テレビで放送されたことで、男子校での生理セミナーは大きな反響を得た。同時に女性たちから、「自分たちの時代では、あり得なかった」という驚きの声が高橋氏の元に届いた。

「私もそうですが、かつて小学校で生理を学ぶ際は、女の子が別室に集められ、こっそり話を聞くのが普通でした。その結果、男子生徒は生理に対して“触れてはいけないもの”と思わされていたのです」

 この慣習が、生理の理解を遅らせる要因となる。実際に、男性が生理を知らないことによる問題は、たびたび発生する。

 例えば今年1月に発生した能登半島地震では、避難所で物資を配る男性が「生理用ナプキンは1人2個まで」と指定したことが波紋を呼んだ。2個では到底足りないということを、男性は知らないのだ。

生理についてオープンに語れるようになれば、社会は変わるはず

 しかし、世の中の男性の生理に関する知識は、これとほぼ同程度だという。

「社会人の男性を対象にした生理セミナーを開催すると、ナプキンは1日1枚でいいと思っている人がほとんどです。でもそれも仕方ないことで、これまで男性は生理を知るチャンスが、とにかくなかったんです」

 一方で女性も、全員が生理について正しい知識を持っているかというと、そうではない。経血の量や月経痛に、想像以上に個人差があることを知り、驚く女性も多い。

「自分の生理を、人と比べる機会はほぼありません。月経痛がどんなにひどくても『みんなもこの痛みに耐えている』と思い込み、1人で抱え込んでしまうんです。また、セミナーに参加し、『月経痛に悩んでいるのは自分だけではなかった』と、涙される方もいます」

 セミナーでは、サニタリー期間の選択肢のひとつとして、吸水ショーツの紹介もされた。

「長らくサニタリーアイテムは進化してきませんでしたが、近年はさまざまな選択肢があります。吸水ショーツもそのひとつ。ショーツ自体が水分を吸収してくれるので、ショーツ1枚で漏れの心配をせず1日過ごしていただけます」

 生理が始まったばかりで周期が安定しない小学生や、月経の乱れが始まる更年期の女性たちを中心に、広がりを見せている。

「ユーザーの中に、知的障害のあるお嬢さんがいらっしゃいました。ナプキンをうまく使うことができず、お母様のお手伝いが必須だったそうです。でも吸水ショーツに替えてから、その必要がなくなり、お母様から本当に助かったと言っていただけました。サニタリー期間でも、快適に過ごせる選択肢がたくさんあることを、もっと広めていきたいんです」

 高橋氏が目指すのは、生理があることで女性が諦める必要のない社会づくりだ。

「生理は性別関係なく、みんなで学ぶべきこと。生理についてオープンに語れるようになれば、もっと社会は変わるはずです。今ようやく、そのスタート地点に立ったと感じています」

取材・文/中村未来 

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  • 彼女が歴代いれば自ずと身につく。女性で括った所で個人差がかなりある。
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