中学受験に失敗する子の両親の特徴とは?東大卒の人気家庭教師が語るリアル

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2024年06月10日 09:00  女子SPA!

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※イメージです
 こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。

 中学受験は子どもの幸せのため。当たり前の事実ですが、いざ競争の中に身を置くと、気づけば親の理想の押し付けになっているケースは少なくありません。

 中には夫婦の教育方針がすれ違ってしまったり、子どもへの一方的な押し付けから、子どもが疲弊してしまったりする話しも耳にします。

 当事者としてはもちろん避けたいことですが、親としてどういった点に気をつけていけばいいのでしょう。

 今回は前回記事に続き、東大卒の家庭教師として25年以上のキャリアを持ち、年間300件のコンサル依頼が殺到する“中高一貫マニア”・長谷川智也さんに、中学受験に挑む親子の実状を聞きました。

◆「お金は出しても無関心」は受験失敗の要因に

 近年、教育熱心なあまり、親が子どもの心身が耐えられる限度を超えて勉強を強制してしまうケースが「教育虐待」として社会で問題視されるようになってきています。

 長谷川さんから見て、親の問題による受験のつまづきにはいくつか傾向があるといいます、

「一つめのタイプは『圧倒的な準備不足やフォロー不足』が上げられます。過去に見た親子ですと、親が気持ち的には熱心だけど、子どもの学習状況にはあまり関心を持たず、塾や家庭教師任せといったケースがありました。当然お子さんは勉強に意識が向かず、成績は一切上がっていません。

 その家庭は首都圏・関西圏の中学受験の大手塾である『SAPIX』に入塾後、最初中間レベルのEクラスにいたものの、すぐに最下位クラスであるAクラスに落ち、以降一度も上がっていませんでした。SAPIXでは1か月に1回(4年生以降)のクラス分けテストが実施されるのですが、3か月以上Aクラスにいると、理解度の低い子に合わせた授業内容になるため、上位クラスにいる子との演習量と得点力の差が埋められず、再度浮上する可能性は低くなります。

 この家庭の問題は、僕から見ると、そもそもSAPIXに入塾するための準備をまったくしていなかった点にあります。具体的には基礎力を高めておくことで、読解力や計算力を上げておくことです。こうした準備をしていないから、解説を聞いても理解できない。SAPIXは基本的にあまり世話を焼かない塾なので、結局親がフォローに入らないといけないのですが、その親は無関心です。5年生くらいになると親も教えられないレベルの問題になり、結局家庭教師を頼るといった状況になりました。すでにそれでは、対策が後手後手になってしまい、よい受験にはなりにくいでしょう」

 長谷川さんはこのご家庭のサポート時、生まれて始めて0点の解答用紙を見たといいます。親は受験に対する熱自体は高かったそうですが、同時に「塾や家庭教師が何とかしてくれる」とどこか他人事。結局得意な理科・社会をなんとかするなど、対応に苦戦したといいます。

◆親子の足並みが揃わないまま受験したら…

「次のケースは、両親が共働きで激務の中で、中学受験に挑んだケースです。僕は家庭教師として定期訪問していましたが、子どもはそもそも塾や勉強を嫌がり、一切勉強をやっていなかったんですね。母親がこれをやるようにと指示を出しても、一切やらない。結構厳しく言ってもやらない。だから私が居るときに喧嘩になることも日常茶飯事でした」

 この家庭では、母親が忙しい合間を縫って学習のフォローをしていたそうですが、それでも、子どもと母親の足並みが揃うことはなかったといいます。

「両親がかなり激務なご家庭だったので、僕は娘さんに『このままだとお母さんが倒れるから、ちゃんとやりなさい』と伝えてはいました。でも結局子どもはやらず……その家庭は、なんと6年生に上がってすぐに、母親が脳梗塞で倒れてしまったんです」

 長谷川さんの予言通りとなってしまったわけですが、その後の展開は、意外にもドラマティックです。

「驚いたのが、そこから半年くらいしたら、子どもはあんなに嫌がっていた勉強を自主的にやり始めたんです。6年生の10月頃なので遅いとはいえ、そこから白地図(書き込み式の地図問題集)や基礎トレ(基礎力向上のために行う、ドリル形式の計算問題集)に取り掛かり、最終的にはBクラス(下から2番目のクラス)に上がり、中堅校に合格を決めました。

受験のテクニック本などでは、『子の受験は親のフォロー次第』と煽るものも多いですが、実際に親主導で受験に挑もうとすると、共働き家庭は倒れます。このケースは最終的に合格という結果で終わりましたが、受験で心や体を壊してしまったら、元も子もないから注意が必要です」

◆負担がかかるのは必然的に親

 長谷川さんはブログの裏テーマとして、「親が倒れない受験情報を伝えること」を念頭に置いているといいます。近年は子どもだけでなく、親が受験中に心身を壊すケースも少なくないのです。

「近年の大手塾の傾向として、難易度の高いカリキュラムを提供する代わりに、学習サポートをしない流れがあります。こうした仕組みは、必然的に親に負担がかかる状況が生まれています。そこで親が手を抜くと子どものクラス順位が下がるだけなので、親はやるしかありません。

しかし、親にやらされている感の強い子は、この仕組みを理解できません。親御さんには、ご自身が倒れないためにも、子どもに自分から勉強するよう仕向けてほしいと思いますし、親御さん自身が子と自分を同化させず、おおらかな気持ちを持って受験に挑んでほしいと思っています」

◆母と娘は、受験においてもこじれやすい?

 子と自分を同化させずという話がありましたが、長谷川さんによると、親子でこじれるケースは、圧倒的に母と娘であることが多いといいます。その理由はどこにあるのでしょう。

「すべてとは言いませんが、母と娘でのトラブルは多いように思います。同性同士という側面からか、母親は“娘に自分を見てしまう”傾向が強いように見受けられますね。その結果、娘の結果=自分の母としての評価という感覚に陥り、娘が勉強しないと母親が自分を責め、心を病んでしまうようです。

僕は受験という経験において結果を左右する要素は、親ではなく、そこでできる友人関係や先生だと思っています。つまり娘の成績は良いときも悪いときも、母親が原因ではありません。

それに塾には、明らかな“ハズレ”が存在します。具体的には、どんな塾でも、素行の悪い子や、クラス崩壊を招くような行動を取る子が一人でもいたり、クセの強すぎる先生に当たったりすると、その時点で受験は上手くいきません。こうした要素もありますから、親御さんは勉強するよう仕向けつつも、最終的には運の要素が大きいのだというおおらかさを持って望んでいただきたいなと思います」

“おおらかさ”について具体的に聞くと、「子どもの点数ばかり気にするのはダメですよ」と注意を促します。

「点数ばかりに親がコメントすると、子どもは『良い結果を出したら褒められる』といった条件付きの自信を持ちます。その体験はクセとなり、後の人生にも影響が出てしまいやすいんです。普段親御さんには、『点数ではなく、前向きにチャレンジした過程の部分を評価するように』と伝えています。チャレンジするからには、結果(点数)も取ってほしいと思う親の気持ちも分かりますが、そこはチャレンジの部分を意識的に見るようにしてください」

こうした側面を知ると、中学受験は子どもと親の人間力を試されているようにも感じられるのでした。

【長谷川智也】
ブログ名はジュクコ。1980年兵庫県明石市出身。高卒の両親のもとに育つもハードな中学受験を経験。白陵中学校・高等学校を経て、東京大学卒業後、大手塾に勤務、人気講師となる。2009年に独立してフリーランスの「プロ家庭教師」に。年間300件を超えるコンサル申し込みが殺到する。甲冑メタルバンド「Allegiance Reign」のベーシストとしても本気で活動中。ブログ「お受験ブルーズ」を運営。近著に『中学受験 奇跡を引き出す合格法則 予約殺到の東大卒スーパー家庭教師が教える』(講談社)など

<取材・文/おおしまりえ>

【おおしまりえ】
水商売やプロ雀士、素人モデルなどで、のべ1万人以上の男性を接客。現在は雑食系恋愛ジャーナリストとして年間100本以上恋愛コラムを執筆中。Twitter:@utena0518

このニュースに関するつぶやき

  • 受験は早くても高校受験に限るわ……… 仮にええとこ入ってもそこの授業に着いていけてなかったら意味無いし。
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