「澤瀉屋!」市川團子『ヤマトタケル』に大阪喝さい 堂々のきらめき「天翔ける心、それがこの私だ!」

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2024年06月10日 14:09  ORICON NEWS

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大阪松竹座でスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』開幕
 大阪松竹座(大阪市)で8日、スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』が幕を開けた。二世市川猿翁さんが生み出した歴史的作品で、同劇場では16年ぶりの上演となり、猿翁さんの孫・市川團子がヤマトタケル役を大阪で堂々披露した。

【写真】キラキラと“天翔ける”…宙乗りを披露した市川團子

 スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』は、「古事記」を題材に哲学者の梅原猛氏が書き下ろし、三代目市川猿之助(のちの猿翁さん)脚本・演出で、1986年2月に東京・新橋演舞場で初演され、その後8作品が続く“スーパー歌舞伎”という新たなジャンルを日本演劇界に拓いた。

 今年2、3月に東京・新橋演舞場、5月に名古屋・御園座で上演され、ついに大阪松竹座へ。1998年10月に猿翁さんがヤマトタケルを最後に勤めた劇場で、今回ヤマトタケル役を勤める、孫の團子にとっては大阪松竹座初出演となった。

 初日の幕開き、盆がまわり、「大和の国の聖宮」の豪華な舞台セットが現れると、客席から拍手。歌舞伎俳優として現役最年長の市川寿猿演じる老大臣の「おはようございます」のせりふから『ヤマトタケル』の世界が広がり、團子演じる小碓命(後のヤマトタケル)が舞台中央に表れると「澤瀉屋!」のかけ声と同時に、待ちかねた客席から大きな拍手が沸き起こった。

 一幕目の最初の見どころは「大碓命の家」での團子による大碓命と小碓命の兄弟二役と中村壱太郎による兄橘姫と弟橘姫の姉妹の早替り。次々と入れ替わる二役に、客席からは大きな拍手とともに感嘆の声が漏れた。

 「熊襲国」では、大和の踊り女に扮装した小碓命が熊襲国へ一人乗り込み、熊襲タケル兄弟を倒す。市川猿弥演じる熊襲兄タケルや、中村歌之助演じる熊襲弟タケルたちのコミカルな演技では客席のあちこちから笑い声。女と見せかけた小碓命が一瞬で男性の姿に変わると、暗闇の中大勢の兵士を相手に舞台狭しと迫力の大立廻りを繰り広げ、熊襲弟タケルから「ヤマトタケル」の名を授けられた。

 二幕目の最初の見どころは「焼津」の火攻めで、タケルと中村福之助演じるタケヒコが大きな旗を翻しながら炎の中で立廻り。続く「走水の海上」では、中村壱太郎演じる弟橘姫が海の神の怒りを鎮めるため、自ら犠牲となって入水。愛する弟姫を失ったタケルの悲しみが観客の涙を誘った。

 三幕目では、山神の化身である白い大猪におびき寄せられたタケルが雹(ひょう)に打たれ満身創痍となり、「能褒野への道」で故郷・大和へ思いをはせながら力尽きる。

 「志貴の里」では、タケルの墓から白鳥となったタケルの魂が飛び立つ。團子演じるタケルの「天翔ける心、それがこの私だ!」のせりふから宙乗りになり、キラキラと光る照明を浴びながらタケルが飛び去っていくと、満席の客席からは「澤瀉屋!」の大向うと鳴りやまない大きな拍手が送られ、感動の中幕となった。
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