湖池屋“究極のポテチ”が好調 まずは「安さ」からの決別、その後どうなった?

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2024年06月11日 06:11  ITmedia ビジネスオンライン

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湖池屋の「究極のポテチ」が好調

 湖池屋の業績が好調だ。2024年3月期の売上高は548億円と、前期比23%増となった。要因のひとつに2017年から推進する「高付加価値戦略」によるリブランディングの成功が挙げられる。高品質な製品を提供し続けたことで、業界における地位を再確立したようだ。


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 2016年に現社長の佐藤章氏が就任し、湖池屋は「高付加価値戦略」に舵(かじ)を切った。当時のポテトチップス業界は価格競争が激しく、ポテトチップス自体もコモディティ化していた。同社広報部の伊藤恭佑さんは「味と品質が同じなら、安いほうが選ばれる時代だった」と振り返る。


 安売り合戦が続く中でも、スケールメリットを生かせる競合は利益を確保していた一方、湖池屋は消耗戦を強いられていた。そこで、佐藤氏は業績改善のために「高付加価値戦略」を掲げた。


 その象徴として、2017年2月に発売したのが「湖池屋プライドポテト」だ。同商品は、当時の定番商品と比べて売価が1.5倍ほど高かったため、湖池屋の社内や流通先からも「本当に売れるのか?」という疑問の声が多かったという。


 ところが、想定以上のヒットを記録し、初年度の売り上げは40億円に。「ヒットしたことで、社内でも戦略の方向性に自信を持てた」(伊藤さん)


 その後、じゃがいもの素材本来の味わいにこだわった「PURE POTATO じゃがいも心地」、濃厚な食べ応えが特徴の「湖池屋ストロング」などを発売したほか、定番商品の「スコーン」や「ドンタコス」についてもパッケージを含め刷新。新商品を含む各ブランドのリブランディングを推進していった。


 「それまでのコモディティ化された市場にはなかった付加価値のある商品が増えたことで、スナック菓子の食シーンの多様化が進み、需要拡大につながったのではないか」(伊藤さん)


 さらに、昨今の物価高により厳選消費のが高まる中、差別化された商品づくりを推進してきたことが消費者から評価され、現在の業績につながったと同社は分析する。


●国産じゃがいものブランド化を目指す


 高付加価値戦略を推進している一方で、創業当時から変わらないこともある。それは「国産じゃがいも100%」へのこだわりだ。


 農林水産省によると、全国的にじゃがいもの作付面積(田畑に作物を植え付けた面積のこと)は、他作物への転換や生産者の高齢化などで減少傾向にある。さらに、100年前に投入された品種が現役で使われるなど、じゃがいもは米やイチゴのようにブランド化が進んでいない。この現状に対して湖池屋は、ある取り組みを開始する。


 それが「KOIKEYA FARM」プロジェクトで、「おいしいじゃがいもだから、おいしいポテトチップスになる」という思いのもと、原料となるじゃがいもを育む畑から商品になるまでの過程をトータルコーディネートする取り組みだ。


 同プロジェクトのブランドマネージャーを務めるマーケティング部の矢野匠さんは、「国産じゃがいもの価値向上を目指している」と語る。


 湖池屋のポテトチップスに“適した”じゃがいもはどれか。海外に足を運んで星の数ほどある種類から見つけ出し、それを日本の土壌に合うよう育てていく。日本でポテトチップスに加工できるまで、おおよそ4世代は育成する必要があるという。


 時間と手間のかかる作業を繰り返した結果、湖池屋だけのオリジナルブランド芋を使用したポテトチップスが誕生した。「消費者にダイレクトに伝わるのは『味』。そこに、とことんこだわった。オリジナルブランド芋を使用していることが買う理由となれば、売り上げや認知率に応じて農家の方々へも還元できる」(矢野さん)


●第1弾は先行予約分が初日に完売


 「KOIKEYA FARM」は、佐藤社長の肝いりプロジェクトとして2017年からスタートした。6年の歳月を経て、2023年12月に第1弾となる「黄金の果肉 北海道産 帆立と昆布とオホーツクの塩」「黄金の果肉 青のりの王様 すじ青のり」(いずれも参考小売価格180円前後)を発売した。


 原料となるオリジナルブランド芋「黄金の果肉」の生産量の関係から数量限定で販売したところ、先行予約分は初日に完売。その後の店頭販売も好調だったという。「リピートでの購入も多く、味を高く評価いただけた」(矢野さん)


 そして、第2弾として「白金ダンディ 平釜の塩と九州産柚子」と「女神のえくぼ 香る焼きあごと青のり」(いずれも参考小売価格160円前後)を8月5日より発売する。


 原料には、果肉の色味などの特徴から「白金ダンディ」と名付けたオリジナルブランド芋を使用。販売数量は、全国の一般スーパーが取り扱える程度のボリュームを予定しており、前回を超える売り上げを見込んでいる。


 2024年秋からは「黄金の果肉」「白金ダンディ」の通年販売も予定している。2026年には、オリジナルブランド芋を使用した世界最高峰のポテトチップスの商品化に挑むという。


 今後について、広報部の伊藤さんは「高付加価値戦略を推進しつつ、スナック菓子を『食』に近いものにしたい。今までのスナック菓子という領域から進化できるようチャレンジしていきたい」と語る。


(カワブチカズキ)


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  • プライドポテトは確かに美味しい。ちょっと高くても買おうかなって思える
    • イイネ!1
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