インタビュアーの隠れた努力【山本萩子の6−4−3を待ちわびて】第118回

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2024年06月14日 09:50  週プレNEWS

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「インタビュー」について語った山本キャスター

選手の"人となり"が垣間見えるのがインタビュー。その人の魅力を引き出すには、インタビュアーにも技量が求められます。本日は僭越ながら、インタビューのコツについて私が思うことをお話しさせてください。

スカパー!さんで配信されている『スワローズ研究所』(スワ研)で、私は毎回、選手にインタビューする機会をいただいています。どの選手にオファーするかは特に決まっておらず、こちらからご提案する場合もあれば、球団から提案していただく場合もあります。

毎回のようにインタビューは新鮮ですし、常に勉強になることばかりです。「インタビューで大事なもの」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか?おそらく多くの方が、「準備」と思ったのではないでしょうか。相手のことを事前にしっかり調べた上で、こちらの聞きたい話をそっと引き出すのがインタビュアーの仕事だと私も思っています。

しかし一方で、準備を大事にし過ぎると、事前に用意した質問をするだけに終始してしまって(もちろん、それも大事なことですが)、面白味のないインタビューになってしまうことがあるんです。これまで私も、何度も反省をしました。

それらの経験を踏まえた上で思うのは、インタビューで大事なのは、「即興の掛け合い感」ではないかと。ジャズのフリーセッションのように、相手がこうきたら、自分がこう応える。それに対して、さらに相手が乗ってくる......。

インタビューも、基本は人間同士の会話ですから、「これを聞こう」と決めすぎると流れが悪くなってしまうと感じます。この仕事を始めたばかりの頃は余裕がなくて、相手が質問に答えている間に、次の質問のことを考えてしまっていました。その結果、相手の話をしっかり聞けていなかったんです。そういうインタビューを振り返ると、質問ごとにスパッと話の流れが途切れていて、相手のよさが引き出せてないことが多かったですね。

2年目くらいからは自分の感性を大事にして、ほかに聞くことがあったとしても、「ここをもっと深掘りしたい」と思った瞬間、そこをどんどん掘り下げることを心がけるようになりました。そうやって面白い話を引き出せた時は、満足感がありましたね。

極端な言い方かもしれませんが、ひとつ目の質問とその答えが面白かったら、その質問だけで終わったっていい。そう開き直ってから、臆することなくインタビューに臨むことができるようになりました(実際には、きちんと与えられた役割を果たすように頑張っています!)。

あと、インタビュー中は相手の目を見ますね。尊敬する気持ちを前面に出しすぎず。上手に抑えて(笑)、「あなたのお話を聞かせてください」という姿勢を示します。話が面白い時は自然と前のめりになりますが、そういった体の動きも大切です。

先日、ヤクルトの石川雅規投手にインタビューしたのですが、きちんと長くお話を聞くのは初めてで、とても緊張しました。私はそのインタビューの前に、「自分が入団したての選手だとしたら、偉大な石川投手が近くにいた時に何を聞きたいだろう」とイメージを膨らませました。そうしたら聞きたいことが次から次へと溢れてきたので、「この手法は今後も使える!」と思ったのでした(みなさんも、ぜひご活用ください)。

インタビューで大事なことはたくさんありますが、私が一番大事だと思うのは「相手を好きになること、興味を持つこと」です。

そう言ったら、担当さんから「興味がない相手だったらどうしたらいいの?」と意地悪な質問が飛んできましたが(笑)、そんな時の正解は「相手のことを調べまくること」だと思っています。どれだけ興味がなくても、調べているうちに絶対に聞いてみたいことが出てきます。そこまで徹底して相手のことを調べる。それが私の"インタビュー道"なのかもしれません。

そういえば、嬉しいことがありました。この連載の準レギュラーとも言えるヤクルトの岩田幸宏選手と久しぶりにお会いしたのですが、連載に岩田選手のことを書きまくっていることに気づいてしまったらしく(笑)、「ありがとうございます」とお礼の言葉をいただきました。

さらに、「実は、インタビューを受けたのはスワ研が初めてで。それが山本さんでよかったです」と言ってくださったのです。インタビュー当日の岩田選手は、初めてとは思えないほどスラスラと自分の言葉で話してくれたのがとても印象的でした。なので、そんなことを言っていただけるのは、インタビュアー冥利に尽きますね。しみじみ。

インタビューの主役はもちろん選手ですが、インタビュアーの隠れた努力もあるということを、ほんのちょっとだけでも知っていただけたらうれしいです。それではまた来週。

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作

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