退職代行を利用した38歳「自力では辞められなかった」“家族経営”のブラック企業から抜け出すまで

0

2024年06月14日 16:21  日刊SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

前原達哉さん(仮名・38歳)。お子さんが2人いるも、収入は共働きで月収40万円。精神的に追い詰められ、「自力では辞められなかった」と振り返る
 この4月に社会人デビューした人たちがすでに退職ラッシュをキメている。しかも自ら退職届を出すのではなく、「退職代行サービス」を利用しているという。
 人気拡大中のサービスだけあって、利用方法はいたって簡単。代行業者と打ち合わせのうえ退職日を決め、料金を支払うと、業者が本人に代わって会社に退職の連絡をしてくれるのだ。彼らはなぜ業者にすがったのか、事情を探るべく直撃してみた。

◆毎日3時間以上サビ残、有休をとれたのは10年で2日

 地方の家族経営の機械商社に、営業事務として10年間勤めた前原達哉さん(仮名・38歳)は、昨年末に退職代行を使い、会社と縁を切った。

「従業員数は15人程度の地元の小さな会社です。毎日3時間以上残業して、残業代はゼロ。有休をとれたのは10年で2日。出退勤はカレンダーに印鑑を押すだけで、ずさんなものです。経営者は『タイムカードを入れたらおしまいだ。即、労基に潰される』と言うほどブラックな会社です」

◆退職希望者が出るたびに“見せしめ”

 月給は手取りで19万円弱。子供は0歳と2歳でまだ幼い。妻に働きに出てもらい、なんとか生活費を工面してきた。

「毎回退職希望者が出るたびに、経営者や幹部社員たちによる強引な引き留めがあるんです。会議室で4時間拘束されて、説教のような説得が続く。会議室の壁は薄く、会話は私たちのところにも筒抜けで、怒号や説教の内容が全部聞こえてくる。『辞めたいヤツはこうなるぞ』という“見せしめ”でもあったのでしょう。実際、私も退職を言い出せませんでしたし……」

◆退職代行の存在に命を救われた

 執拗な退職妨害により、退職を取りやめた社員や、うつ状態になる者もいたという。必死に耐え続けた前原さんだが、ついに限界を迎えた。

「2年前から、常に無気力状態になり、自律神経失調症と診断されました。そして決定的だったのは、去年次男が生まれたときです。我が子を一切可愛いと思えなかった。目が合って指を握られても、何も心が動かない。それが怖くて、『このままだといつか自分で命を絶つかもしれない』と、退職代行にすがりました」

「自力で会社とやりとりする気力は皆無だった」と前原さん。現在はホワイトな食品会社で黙々と働いている。

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[退職代行する人]の主張]―

    前日のランキングへ

    ニュース設定