ソニーの「着るエアコン」前年比2倍の売れ行き、人気の秘密は?

4

2024年06月16日 06:40  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

ソニーの「着るエアコン」がバカ売れ

 猛暑対策として、毎年バカ売れしているのがソニーの「REON POCKET」(レオンポケット)シリーズだ。その第5世代モデル「REON POCKET 5」が4月23日に発売され、公式Webサイト上では、すでに前年比2倍の売れ行きを見せているという。今作では何が進化したのか。


【その他の画像】


●REON POCKETがさらに進化


 REON POCKETは、首元に装着することで本体接触部分の体表面を直接冷やしたり温めたりすることができるウェアラブルデバイスだ。2019年にクラウドファンディングから試験的に販売を始め、2020年7月から一般発売を開始して以降、毎年新機種を発表している。


 2023年に発売したREON POCKET 4も、リリース後3日で初回出荷分1万台が完売しており、今作もすでに前年比で2倍の売れ行き(公式Webサイト上)を見せるなど好調だ。


 具体的な販売数は公表されていないが、毎年生産量は1.5〜2倍ほど増やしているという。生産拠点も国内から中国に移転するなど、体制を整えている。


 好調な売れ行きについて同社は、「小型かつスタイリッシュな形がビジネスシーンで使い勝手がよく、冷却レベルが高い」ところが評価されていると分析する。もともと、開発に当たっては「都市圏のビジネスパーソンに使ってほしい」という思いがあり、購入者の8割ほどは想定していた通りにオフィスワーカーだという。


●サーモモジュールと放熱ファンが進化


 第5世代モデルは、本体とネックバンドのセットと、ウェアラブルセンシングデバイス「REON POCKET TAG」を同梱したキットの2タイプがあり、価格は公式Webサイトでそれぞれ1万7600円と1万9800円となっている。


 今回、新たに開発したサーモモジュールと放熱機構を搭載し、同社比で最大約1.8倍の駆動時間と最大約1.5倍の吸熱性能を実現した。これにより、パワフルな冷却と長時間の使用が可能となり、COOLレベル5が新たに使用できるようになったほか、COOLレベル4でも約7.5時間駆動するなど進化した。


 また、本体から発生する動作音を最大約5分の1に低減するなど、静音性も大きく向上した。COOLレベル4で動作している状態を測定したところ、耳に届く騒音は「ささやき声」「木の葉のふれあう音レベル」(同社調べ)と同等だという。


 駆動時間が伸びていることから、ほぼ1日中装着しているユーザーが多い。また、フルオートのため、会議で発言したときに体が熱くなると冷却モードがオンになるなど、感知する温度によって作動することもあるので、あらゆるビジネスシーンで気にすることなく使用できるよう静音性にはこだわった。


 行動や環境に合わせて、冷温を自動で切り替えられる機能「SMART COOL⇔WARM MODE」も強化した。付属のREON POCKET TAGをアップデートし、直射日光の検知を可能にしたことに加え、環境変化に合わせた温度調節にかかる時間が最大約3分の1に短縮され、状況に応じて最適な温度を提供する。


 さらに、本体とタグに搭載された計8個のセンサーを活用することで温度制御の精度が向上したほか、駆動時間も「SMART COOL⇔WARM MODE」は、最長約10時間使用できる仕様に進化した。


 そのほか、REON POCKE本体の熱を逃がす付属のエアフローパーツには、ビジネスシーンとカジュアルシーンに合わせた2種類を用意。ビジネスシーン向けには、首や背中の形に合わせて襟の高さまで伸びた形状、カジュアルシーン向けには低い襟元に合わせた短い形状で、いずれも目立たず効率的な排気が可能という。


●アプリ経由でフィードバックを獲得


 2019年当時、REON POCKETは該当する商品カテゴリーがなかったため、事前のユーザーアンケ―トだけでは市場の反応を読めない部分があった。クラウドファンディングで発売し、6日で4200台を完売したデータから市場を予測できるようになった。


 オンライン経由での購入が多いことから、同社はデジタルを活用したマーケティングを徹底する。データを重視し、数値を分析してアップデートを進めている。自社で運営するECサイトから定量的なデータを集め、同時に定性的なデータは連携するスマートフォンアプリからユーザーのフィードバックを得ている。


 今回、新たに発売した専用ケースもユーザーの声をもとに開発したほか、「排気が気になる」という声も一定数あったことから形状を変更し、排気が気にならない構造とした。


 ユーザーからのフィードバックには、「このように改善してほしい」という前向きな応援メッセージが多いという。それらの声を商品に反映することで、「自分たちの声が届いた」と感じるユーザーもいるだろう。


 「当社ではアプリをユーザーとのコミュニケーションの接点と考えている」と担当者は語る。ユーザーの声を商品改良に生かしているところも、評価が高い理由のひとつと言えそうだ。


●温度ソリューションサービスの「REON BIZ」


 REON POCKETは、工事現場などの屋外作業者からもニーズは高い。しかし、炎天下での長時間使用や40度近い環境下での使用を同社は推奨していない。そこで、4月にリリースしたのが、法人向けソリューションの「REON BIZ」だ。


 REON BIZは、屋内ファシリティや屋外の作業環境の温度を可視化し、快適性と省エネを両立するIoTクラウドサービスで、空間全体にTAGを設置し、温度ムラを可視化する。TAGは身に着けられるため、ユーザーによる周辺温度の違いも把握できる。


 各設置場所とユーザー周辺の温湿度データから、暑さ指数(WBGT)を算出し、その推移を比較することで、 特定の人が相対的に暑い環境に継続的に居ることも把握できる仕組みだ。ファシリティの温度環境を細かく把握することで、空調温度の最適化などのファシリティマネジメントに寄与する。


 今後は、法人向けのソリューションを強化する。温度環境を把握し、適切なソリューションを提供していくことを目指す。


 「例えば建築現場などでは、新宿は35度で、品川は30度など、マクロ的に温度を語るのではなく、われわれのセンシング技術(センサーを用いてさまざまな情報を数値化)で温度を細かく可視化し、ファシリマメージメンマネージメントと連携しながら『この時間は働くのに適さない』など、共通認識を持てるようにすることで、働きやすい環境を提供したい」


●世界レベルでの快適性と省エネの両立を目指す


 REON POCKETは、2022年から香港での発売も開始し、今年からはシンガポール、ベトナム、タイ、マレーシア、英国にも販路を拡大した。


 アクティブユーザー比率でみると、香港は「日本と比べると、人口に対して数倍売れている」という。オフィス街で働く人が多く、東京などの都心部と環境が近い点が好調の要因と同社は分析している。香港での好調な売れ行きから、東南アジアを中心に声がかかった。


 英国については、歴史のある伝統的な建物が多く、空調設備がそもそもないことも多い。気温が上がっている中、設備をイチから投入することはハードルが高いことに目をつけ、進出を決めた。来年以降、展開する国を増やすことも検討している。


 大きなトレンドとして、猛暑日が増えている昨今。ビジネスパーソンにとって仕事に取り組む際の暑さ対策は今後も欠かせないだろう。エアコンだけでは、個人による体感温度の違いや、電力消費、環境への負荷など問題が多い。そこで、自分だけの快適空間を身にまとうことを可能にしたREON POCKETが果たす役割は大きいと言える。


 「真夏日や猛暑日が多くなる中、都市圏で働く人々に対して、適したソリューションを提供していきたい」と担当者は語る。まもなく暑い夏がやってくる。今年もREON POCKETの需要は高くなりそうだ。


(カワブチカズキ)


このニュースに関するつぶやき

  • これからの時期、屋外作業、屋内の換気の悪いところの作業には充分体調管理にお気を付けください。
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(3件)

ニュース設定