杏38歳「1日2万歩くらいは歩いてます」パリでの“がんばらない”日々

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2024年06月17日 16:10  女子SPA!

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日本とフランスに拠点を持ち、俳優、モデルとしての活動を続けている杏さん(38歳)。現在、主演を務めた映画『かくしごと』が公開中です。

事故で記憶を失った少年の体に、虐待の痕を見つけた女性が、彼を守ろうと「自分が母親だ」と偽り、一緒に暮らし始めるミステリードラマ。

ラストシーンの撮影に改めて「これはミステリーなんだな」と感じたという杏さんにインタビュー。何事にもカンペキに見えますが、実は「おおざっぱな部分もある」という、その素顔に迫りました。

◆不可能をどんどん可能にしていく主人公、行動力がすごい

――出演を決めた一番大きな点はどんなところでしょうか。

杏さん(以下、杏)「ラストシーンに衝撃を受けて、やらせていただきたいなと思ったのが大きなきっかけでした。誰もが何かの秘密を抱えているというところが、ストーリーとして、ミステリーとして面白いなと感じました」

――演じた千紗子には共感できましたか?

杏「現実に起きているニュースや出来事で、子どもや動物といった立場の弱い存在が、何かに巻き込まれてしまうことがあります。そうした存在に対して、自分が年齢を重ねるにつれて、どんどん思い入れというか、思いを馳せることが多くなっていました。そんなときに、千紗子というキャラクターが飛び込んできました。

私自身、社会的な倫理やルールに照らし合わせながら行動を考えてしまいますが、そこをひっくり返して、千紗子は、いま目の前にある命を助けることを最重要視している。彼女が不可能をどんどん可能にしていく力は応援したくなります。法に触れるのはマズイと分かりつつも、彼女の行動力はすごいと思いました」

◆ラストシーンは背中になにかヒヤっとするものを

――出演の大きな決め手となったというラストシーンを実際に撮影にしたときは、どんなことを感じましたか?

杏「あそこは、拓未を演じた中須翔真君ありきでした。彼を見て、どんな感情が出てくるだろうかと。最後、私は背中に雨だれが落ちてきたような、なにかヒヤっとするものを感じました。もちろんそれだけではないんですけど、そういう感情が返ってきて、改めて“これはミステリーなんだな”と思いました」

――予想外の感情でしたか?

杏「生の感じが出せたと思います。特に最後のシーンに関しては、あまりテストをせずに本番にのぞみたいと関根(光才)監督にお願いしました。現場にレールを敷いてあったり、本当は、カメラワーク的にもいろいろテストをしたかったと思うのですけど、最後の感情の部分に関しては大切にしたかったんです」

◆終盤の雨は、演出ではなく本当に降り始めた

――本作は、風景も作品のカラーや世界観を作るのに役割を果たしています。

杏「本当に作っていない風景なんですよね。終盤に、雨がバーッと降って来るシーンがありますが、あれも神がかっていたなと」

――演出ではなく、実際の雨なんですか?

杏「あの瞬間から本当に降り始めたんです。みるみる暗くなって。スケジュールもあったので、降る前に早く撮影を終わらせなきゃと思っていたんです。詳しくは言えませんが、あの大事なシーンの本番、あの瞬間に、ザーっと降ってきた。“すごいね”と話していました」

◆子どものすごさ。はじめは歩くこともできなかったのに

――さて、杏さんご自身は、お子さんのいるお母さんでもあります。改めて「子どものすばらしさ」を言葉にするなら?

杏「すべてをゼロスタートで頑張らなきゃいけないわけですよね。日々知らないものに直面して。朝から夕方まで座りっぱなしで勉強するなんて、すごいなと思います。よく頑張ってるな、すごいなと。

はじめは歩くこともできなかったのに、すべてを新しく獲得していく。新しい言葉を知って、文字が書けるようになって。すごいと思うとともに、自分もそうだったんだなと、循環(じゅんかん)して考えるようになりました」

――杏さんには「キレイでしっかりしていて何でもできる」といった完璧なイメージを持つ人が多いと思います。そんななか、YouTubeチャンネル、InstagramといったSNSでは素顔を少し見られます。SNSはご自身にどういった影響がありますか?

杏「役者やモデルとしてパリっとしたところを見せていると、どうしても“スゴい”と見られてしまうというか。そういったイメージを持たれがちだなというのは思っていました。でも全然そうじゃないし、おおざっぱなところもすごくあるので、“実はこうなんだよ”というのは、共感して見てもらいたいなというのはあります。

それこそインタビューしてくださる方からも、“お水ひとつから全部選んでらっしゃるんですよね?”なんて言われたりするんですけど、“いやいや、全然水道水をジャーですよ”とか。ひとり歩きしている部分もあったので、もう少しみんなに知ってもらえるようになった部分はあるかなと思います」

◆30歳を過ぎてから、休んで何もしない日も大事だなと

――いまは仕事だけでなく余暇も大事だと言われる時代になっています。杏さんはどう捉えていますか?

杏「20代はとにかくがむしゃらでした。振り返ると、もうちょっと自分の時間や余裕を持てれば良かったのかなと反省もします。でもあそこで頑張ったから今があるのも事実なので、何が正解かは分からないんですよね。

それにどうしても私はいろいろ詰め込んでしまう性分で、テトリスみたいに組んでいっちゃって、何もしないことができなかったりするんです。貧乏性で(笑)。でも30歳を過ぎてからは、休んで何もしない日も必要だな、大事だなと思ってます」

◆頑張らない部分があっても全然いい。私も人に頼って生きてます

――人生100年時代と言われますし、そのためにも余暇は大事ですね。

杏「そうですね。足腰が元気なうちにできることが変わって来ると思うので、今しかできないことを探しながら、これからもやっていきたいなと思います」

――足腰を鍛えるために何かしていることはありますか?

杏「特にないです。ただ、パリにいるとよく歩くんです。1日2万歩くらいは歩いてます。ちゃんと運動も本当はしたほうがいいだろうなとは思うんですけどね。

あ、あと先ほどの休むじゃないですけど、“頑張らない”ってことも今は思ってますね。ほっといても頑張ることを求められる今の世の中だから。

それこそみなさんも、頑張らない部分があっても全然いいんだよと思います。私もいろんなことをひとりじゃできてませんし、人に頼りながら生きています」

<取材・文/望月ふみ スタイリスト/中井綾子(crêpe) ヘアメイク/犬木愛>
(C) 2024「かくしごと」製作委員会

【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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