森崎ウィン『せん』が「SSFF & ASIA 2024」グランプリ 俳優で監督の受賞は史上初

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2024年06月18日 17:31  cinemacafe.net

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『せん』
今年で26回目を迎えた米国アカデミー賞公認、アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF & ASIA)2024」が終幕、アワードセレモニーが行われ、グランプリ「ジョージ・ルーカス アワード」は森崎ウィン監督『せん』に決定。俳優が監督として受賞するのは史上初となった。

今年の映画祭では、「Illuminate Your Life〜いのち照らせ セカイ照らせ」をテーマに、「いのち」や「人生」、「生活」と、それを取り巻く「セカイ」を照らし出す各作品を発信、作品を通じて観る人自身の生活や人生にもライトをあて、共感や発見、感動が生まれる場、そして世界へと目を向けるきっかけを作ることを目指し、世界114の国と地域から集まった4,936点の中から選びぬかれた約270作品を上映・配信やイベントを実施してきた。

アワードセレモニーでは、映画祭では最多となる計5作品が推薦可能となった、翌年の米国アカデミー賞につながるライブアクション3部門(インターナショナル、アジア インターナショナル、ジャパン)、ノンフィクション部門、アニメーション部門のほか、講談社シネマクリエイターズラボ第2期優秀企画へのアワード授与、HOPPY HAPPYアワードの発表・授与が行われた。

そして、審査員を務めた藤岡弘、、永作博美、本木克英、山崎エマ、ティム・レッドフォード、シャロン・バダル、シシ・ヤマザキから選出された、栄えある映画祭最高賞ジョージ・ルーカスアワードは、ライブアクション部門ジャパンカテゴリー優秀賞/東京都知事賞を受賞した、森崎監督の『せん』に決定。

グランプリ受賞作品には、副賞としてクイーン・エリザベスの2025年日本発着クルーズ/海側バルコニー客室1組2名様が提供された。

審査員からは、「ショートフィルムは自分の心の中を素直に、詳細に伝える努力が必要。そんな宝物を優しく包み込んで作られた作品群に感動した」(永作博美)、「永遠のテーマであり、私たちが常に直面している『死』と、日常の営みの中にある、未来に残したいもの。我々人間が忘れてはならないものが多くの作品に描かれていた。」(杉山知之)、「エキサイティングで刺激的で、多様な国の物語や問題意識が感じられる作品に大いに考えさせられ、感動した。映像を通じて、世界が平和に向かってほしいと希望を感じた」(藤岡弘、さん)と評されたオフィシャルコンペティション。

なお、各受賞作品含むオフィシャルコンペティションノミネート作品は、6月30日(日)まで映画祭オンライン会場グランドシアターにて特別延長配信される。

★グランプリ「ジョージ・ルーカス アワード」受賞作品
 ライブアクション部門 ジャパンカテゴリー優秀賞/東京都知事賞
【第97回アカデミー賞短編部門ノミネート候補】

『せん』
監督名:森崎ウィン/24:45/日本/ドラマ/2024

田舎暮らしをするおばあさんのいつもの一日が始まる。ちゃぶ台で役場の若者と朝食をとり、縁側で配達員とお茶飲み話をする。そんないつもと変わらない日常に、微細な不協和音が聞こえてくる。

【受賞理由】
ある田舎の一軒家というワンシチュエーションで繰り広げられる物語ながらその背景から聞こえてくるメッセージ、音楽と役者の見事なパフォーマンス。ショートフィルムらしい圧倒的な構成力で無駄がなく、大変力強い作品。ミュージカルアクターである監督ならではの演出が光っており、グランプリにふさわしい作品であった。

[審査員のコメント]
ラジオから聞こえてくる世界情勢と変わらない日常生活の中に、歳を取ることや孤独といったテーマがあり、さりげない中に深いメッセージが隠されている。全体的に自己の周囲を見つめて深堀りしていく似通ったテーマが多い中で、オリジナリティがあり、新鮮で意外性のある作品だった。
(ライブアクション部門 ジャパン 審査員:シャロン・バダル、藤岡弘、、本木克英)

★ライブアクション部門インターナショナル 優秀賞
【第97回アカデミー賞ノミネート候補】

『ヤマアラシのジレンマ』
監督名:マテウス・リビンスキー/16:10/ポーランド/ドラマ/2023

この映画は全編手話で構成されている。作品の舞台は、依存症に悩むろう者の若者向けのリハビリ施設。新患の主人公は長期入院者に惹かれていることに気がつき、治療中に2人の絆を深めようと奮闘する。

[審査員のコメント]
2人の人間が出会って、化学反応が起こって変わっていく様子が初めから最後までストーリーの流れがよくまとまっていて、キャラクターディベロップメント、ストーリーディベロップメント、演技、全てにおいて長けていた。全編手話で台詞が全くない中で、映像演出のメッセージが素晴らしく、見たことのない世界を体験させてくれる例外的に素晴らしい作品。
(ライブアクション部門インターナショナル 審査員:永作博美、山崎エマ、Tim Redford)

★ライブアクション部門アジアインターナショナル 優秀賞/東京都知事賞
【第97回アカデミー賞ノミネート候補】

『いつの日か』
監督名:プラディーダ・ブリファ・ラハユ/22:08/インドネシア/ドラマ/2023

目の見えない10代の少女、スリとヤンティは寮に住んでいた頃からの親友同士。2人は切っても切れない仲で、いつも一緒。ある日ヤンティが夢を追うために町を離れると言い出したことで、2人は喧嘩になってしまう。ヤンティは自分たちに夢を持つ権利はあるのだろうかと問いかける。

[審査員のコメント]
視覚障害のある役者の演技が素晴らしく、友達同士の中で1人が成功を収め、1人が取り残されるという誰もが経験する人生の葛藤を見事に演じ切っていた。障害を中心にするのではなく、友情の物語として誰もが共感でき、夢と希望をもらえる素晴らしい作品。
(ライブアクション部門アジア インターナショナル 審査員:シャロン・バダル、藤岡弘、、本木克英)

★ノンフィクション部門 優秀賞
【第97回アカデミー賞ノミネート候補】

『ナイジェリアのバレエダンサー』
監督名:ジェイコブ・クルプニク/14:44/ナイジェリア、アメリカ/ノンフィクション/2023

雨の中バレエを踊る子どもたちの映像がSNSを通じて拡散されると、ナイジェリアはラゴスの小さなバレエスクールに世界中の注目が集まった。YouTubeの動画でバレエを習得したダニエル・アジャラは今世界のステージに立つため稽古に励んでいる。

[審査員のコメント]
テーマ、メッセージ、創造性、カリスマ性、サウンド、尺、全ての分野においてショートフィルムとしてずば抜けて優れており、人物を描くドキュメンタリーが多い中で、他のどの作品よりもオリジナリティが光る作品であった。残酷だけれども美しく力強いメッセージと若者のパッションがいつまでも心に残る作品。
(ノンフィクション部門 審査員:永作博美、山崎エマ、Tim Redford)

★アニメーション部門 優秀賞
【第97回アカデミー賞ノミネート候補】

『プールのカニ』
監督名:Alexandra Myotte & Jean-Sebastien Hamel/11:11/カナダ/アニメーション/2023

荒れ果てた住宅街で、ゾーイと弟のテオはたった2人きり。思春期のゾーイは、内なる恐怖に取り憑かれた怒りの塊。テオはまだ子どもで、空想の世界に現実逃避している。

[審査員のコメント]
少年の持つ想像の双眼鏡、空間コンピューティング的表現、カラフルできめ細やかなタッチが素晴らしく、現代的で非常に優れた作品。狭い世界を描いていそうで深いテーマがあり、人間の様子がリアルによく描かれていた。
(アニメーション部門 審査員:川田十夢、シシヤマザキ、杉山知之)

★HOPPY HAPPY AWARD
『十日と永遠』
監督名:倉田健次/24:59/日本/ドラマ/2024

故郷を捨て、カメラマンとなっていたアキラは、弟ジュンの残した不思議なメッセージから十数年ぶりに帰郷する。しかし弟の姿はなく、弟の娘サナから渡されたのは赤い封筒。それは【宝探し】の始まりだった…。

「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2024」はオンライン会場にて6月30日(日)まで配信中。




(シネマカフェ編集部)
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