ドライビング能力だけではない影響力。サインツ獲得の可否がアウディF1の分水嶺となる可能性

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2024年06月20日 06:50  AUTOSPORT web

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カルロス・サインツ(フェラーリ) 2024年F1第9戦カナダGP
 ルイス・ハミルトンにシートを譲るために、今季2024年の終わりにフェラーリF1を離れることを余儀なくされたカルロス・サインツは、次のチームをどこにするか決めようとしているところだ。

 サインツが、来るスペインGPにおいて来年加入するチームを発表すると予想する人は多い。そうすれば国内外のメディアでの露出が最大限に高まるからだ。マドリード生まれの彼は、前回選択肢について語った際、基本的に選択肢をふたつに絞っていた。それはアウディ(キック・ザウバー)とウイリアムズだ。

 サインツが決断を下すのにこれほど長い時間がかけている理由のひとつは、サインツ自身と最側近である父親のカルロス・サインツ・シニア、および従兄弟でマネージャーのカルロス・オノリオが、勝てるマシンが持てない状況を受け入れられなかったことだ。サインツの視点から見れば、彼はかつてないほど優れたドライビングをして常にトップ集団にいるし、世界チャンピオンになるという夢を追いかけるために勝てるマシンに乗るのに値する。

 サインツの現在のパフォーマンスを考えれば、彼の願望は至極まっとうなものだが、メルセデスのハミルトンのポジションとレッドブルの2台目のマシンという、2025年に獲得可能なふたつしかないトップシートが彼に開かれていないことは、今年の非常に早い段階から明らかだった。

 クリスチャン・ホーナー(レッドブルF1代表)はダニエル・リカルド(RB)のチーム復帰を夢見ていたが、彼がかつてのパフォーマンスを発揮できなかったため、セルジオ・ペレス(レッドブル)をさらに2年間とどめることを決めた。トト・ウォルフ(メルセデスF1代表)については、ハミルトンがフェラーリへの移籍を告げた瞬間から、アンドレア・キミ・アントネッリを第一候補としたことが明らかだったため、サインツがこれら2チームのどちらかに空きが出ることを期待して数カ月待ったのは、現実的な目標というよりも希望的観測に近いものだった。

 今後数シーズンは勝てるマシンを持てないことを受け入れたいま、サインツはウイリアムズやアウディとの交渉を加速させている。ジェームズ・ボウルズ(ウイリアムズF1代表)は、彼の歴史あるチームに加わるようサインツを説得するために積極的な売り込みをしているが、一方のアウディのアプローチはこれと比べると消極的であるようだ。

 ウイリアムズにとってサインツの獲得は大きな成功となり、才能あるエンジニアをチームに引き寄せることになるだろうが、もし彼がボウルズのオファーを受け入れなければ、チームにとってドラマにはならない。結局のところ、今でもバルテリ・ボッタス(キック・ザウバー)とエステバン・オコン(アルピーヌ)は来年の起用が可能だ。どちらもアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)とともに、非常に強力なラインアップになるだろう。

 しかしアウディにとって、市場で手に入る最高のドライバーを引き付けることができなければ、大きな打撃となるはずだ。最近のレースにおいて、ザウバーのホスピタリティではアウディの人員が多く流れて来ているところが見られたが、そのほとんどはF1の経験がない。もし彼らが思っているほどの影響力を持っているとしたら、チームは今世紀初めにジャガーやトヨタの取り組みを破滅させたのと同じ流れに苦しめられる可能性がある。

 アウディには、モータースポーツで生まれ育ったマネージャーが明らかに不足している。アンドレアス・ザイドルとアラン・マクニッシュは主な例外だが、このふたりがアウディの取り組みを推進するのに充分な力を持っていない場合、アウディはF1で印象を残すのに苦戦するかもしれない。

 そのマクニッシュはサインツにチームに加わるよう説得を試みてきた。彼はモナコでサインツ・シニアとかなりの時間を過ごし、自陣営に加入の利点を説明したが、サインツがウイリアムズへの移籍をまだ真剣に検討しているという事実は、ドイツメーカーの計画にそれほど説得力がないという深刻な兆候だろう。

 サインツの起用に失敗すれば、アウディにとって打撃となることは間違いないが、現在の状況を考えると、そのことが内部で警戒すべき兆候として受け止められている可能性は低いとみられる。しかし、プロジェクトの信頼性に深刻な影響が出て、もっとも才能のあるエンジニアたちはヒンウィルの拠点に移るのを思いとどまるだろう。F1で最高の頭脳を持つ人たちにとって、ニコ・ヒュルケンベルグとオコンによってレースが行われるという見通しが魅力的であるとは思えないからだ。

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