「娘が友達と電車に乗ると中づり広告に“不倫”」安藤サクラへの思いを明かす父・レジェンド俳優74歳

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2024年06月20日 16:10  女子SPA!

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現在、杏さんが主演を務めるヒューマンミステリー『かくしごと』が公開中の奥田瑛二さん(74歳)にインタビュー。

長年絶縁状態にあった父が認知症を患い、介護のためにと帰郷した主人公の千紗子が、事故で記憶を失った、虐待の疑いのある少年と出会って一緒に暮らし始める本作。いい男っぷりに増々磨きのかかる奥田さんが、本編では認知症を患う父・孝蔵役で、全くの別人として存在しています。

妻・安藤和津さんのお母さんを、ともに介護した経験も持つ奥田さん。そんな奥田さんに、和津さんや、監督をしている長女・安藤桃子さん、次女で俳優の安藤サクラさん、さらにお孫さんへの思いを聞きました。

◆老人研究。認知症を知るために施設へ

――孝蔵さんが、まったく奥田さんに見えなくて、登場シーンから衝撃でした。

奥田瑛二さん(以下、奥田)「今回は、まず老人研究をしようとやっていきました。それから認知症についても知る必要があった。和津さんのお母さんが認知症で一緒に介護したことはあるけど、いろんな方がいらっしゃるからね。

知人から施設を紹介してもらって実際に見に行きましたよ。見学ではなく一緒に話したりして。ワイワイみんなで話している人もいれば、じっとひとりでいる人、テレビをずっと見ている人、いろんな人を見て、孝蔵はどういう人物なんだろうと考えていきました。

かつて学校の先生をしていて、奥さんが先に亡くなって、ひとりで山の上に引っ越した。いまは徘徊をしている。徘徊のシーンは本編にはないけれど、重要だろうと思って、普段からセリフを覚えに行ってる近くの公園に行って考えてみた。すると、林の中に孝蔵さんが歩いている姿が見える。“ああ、こういうことか”と、その通りに歩いてみる」

――孝蔵さんが歩いている姿が見える?

奥田「そう。“奥田孝蔵”が歩いているのが見えるわけ。次はベンチに座っている姿が見えて、“そうか、こうか”とその姿を作っていく。現れた人を迎え入れて、自分の体の中に入ってもらうんです」

◆「俺がもし認知症になったら」とは口にしない

――お義母さまのお話も出ましたが、認知症は誰でもなる可能性があります。介護側になることもあるわけですけど、ご夫婦でご自身や相手がそうなる可能性についてお話することはありますか?

奥田「年に4〜5回は出るね。夫婦喧嘩したりするときに。平和なときは出ないかな。僕からは言ったことないけどね。

和津さんは“私が認知症になったら施設に入れてね”と言っていて、俺はどうなんだろうと思うけれど、役者がそれを口にしちゃダメだと思ってるわけ。役者でも映画監督でも」

――口にしてはダメ?

奥田「死ぬまで俳優でいたい、死ぬ寸前まで監督したいと思っている人が、“俺がもしそうなったら”なんて口にしちゃダメに決まっています。和津さんがみんなのことを思ってそう言ってくれているのは100も分かるんだけど、僕は言わない。いつかバーンと来るかもしれないけど、僕自身は口にしちゃいけないと思ってます」

◆結婚当初、1週間で離婚するぞと言われた

――孝蔵さんが、千紗子を亡くなった妻だと思って本音を語るシーンで泣きました。娘には言えない、妻にだけ明かせる気持ちがあるというのは、実際に娘のいる父として共感できますか?

奥田「わかります。あります。血がつながっていると言えないことってある。逆に夫婦は所詮(しょせん)他人だから言えることがある。うちなんか48年くらい一緒にいるけど、“あいつら、1週間で離婚するぞ”と言われて、オリンピックじゃないけど、4年に1度は離婚騒動があった(笑)。でもそれを乗り越えて、いまでは誰より長く一緒にいる。

寄り添い合って助け合うことが必要なのは暗黙の了解だけど、それはお互いが信頼していたからというより、将来に向かって生きようとしていたことと、あとはお互いをリスペクト、尊敬をしているから。それを口に出さなくても分かる。絆もできている。所詮他人のふたりだからこそね。

占い師なんかが“前世も夫婦だった”なんて言ったりするけど、そんなのは当てにならない。でも他人同士が縁で結ばれて結婚したというのは、そこに愛情、想いが成立しているわけだから、娘に言えないことも言える。逆に子どもにはあれこれ言わない。その子の生きる自由を奪いそうになるからね。僕の感覚では自由にさせていたかな」

◆娘や孫のためなら命を投げ出せる

――娘と断絶していた孝蔵さんとは違いますね。

奥田「うちも断絶しそうになったことはあるけど……(笑)。俺は気づいてなかったんだけど。娘が友達と電車に乗ると、中づり広告に“不倫だ、何だ”と載ってたりして下を向いていたとか。のちのち言われたけどね。でも俺は娘のためには命を投げ出してもいいと思ってるから」

――それはお孫さんもそうでしょうね。

奥田「孫はね、青天の霹靂(へきれき)だった。今回の『かくしごと』の終盤でも、孝蔵が娘や孫を守ろうと身を挺(てい)する場面があるけど、もしも俺の目の前で娘が刃物か何かで襲われそうになったら、当然、俺が守る。それで俺が刺されたとする。そしたらやっぱり痛いと思う。

でも守る相手が孫だと、痛いとも思わない。守れたらそれでいい。そういう違いがあるかもしれないね」

<取材・文・撮影/望月ふみ ヘアメイク/田中・エネルギー・けん>
(C) 2024「かくしごと」製作委員会

【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi

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