『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.35【コミックス派はネタバレ要注意!】

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2024年06月24日 00:10  週プレNEWS

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『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが5月の連載を激論!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻、『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが5月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

第451話 ウォーズマンライジング!!の巻(5月13日更新)
第452話 五大刻の暗躍!!の巻(5月20日更新)
第453話 最強の男を閉じこめる方法!!の巻(5月27日更新)
あらすじ 宇宙崩壊の元凶である時間超人軍団・五大刻(ごたいこく)が世界中に散らばった。その行方を追う、キン肉マン、テリーマン、ウォーズマン、ネプチューンマン、ネメシスの5人。そんな中、ウォーズマンが志願してまで向かったのは祖国ソ連のパトムスキー・クレーターだった

●誰よりも人間らしい"ロボ超人"

爪切男(以下、爪)  5月の連載は、まず451話「ウォーズマンライジング!!の巻」で、ウォーズマンが自らのルーツであるソ連の"狼の部屋(ヴォルグ・コームナタ)"へ到着すると、ペシミマンが侵入して大暴れしている。ウォーズマンは"狼の部屋"から脱走した身なので、アンドロイド・サルダート("狼の部屋"の兵士)のひとりに扮して、ペシミマンを止めようとする、というところから、始まりましたね

燃え殻(以下、燃) この対談で最近よく、『キン肉マン』が終わりに向かい始めている、って話になるじゃない? そのウォーズマン編というか、ウォーズマンの総決算的なものを感じた。

 うん、感じますね。

 前回も言ったけど、ウォーズマンに負けフラグが立っているのも、総集編感があるというか。でも、負けフラグが立っていたとしても、プロレス的に言うと、勝ち負け論だけじゃないじゃない? 決着がつくまでのストーリーを楽しむものだと考えると、ここからのストーリーは見応えがありそうだと思った。

 この闘い、レフェリーの宇宙超人委員会がいないから、ストリートファイトってことですよね?

 ああ、そうだね。いつもの観客もいないし。ノーピープルデスマッチ。あ、このリング、練習用のやつだろうから、じゃあ道場マッチか。

 ウォーズマンらしい場所ですよね。しかし、ウォーズマン、このリングまで来たら、アンドロイド・サルダートに扮装してなくてもいいだろ、っていう気もしますけど(笑)。

 でも『キン肉マン』って、このパターン、前からあるよね。ラーメンマンがモンゴルマンになって出てきたり、キン肉マングレートの正体がプリンス・カメハメだったり。

 今のファナティックもまさにそうですよね。「サイコマンじゃないの!?」っていう。でも、ここでウォーズマンが変装にこだわったというのが、このあと何か意味を持ってきそうな気もするんですけどね。だって、「この施設のヤツらにしてみれば、オレも侵入者でしかも脱走者...今このまま出ていってもますます混乱が広がるのみ」って、べつに混乱してもいいじゃないですか。

 はははは。

 アンドロイド・サルダートたちもコワルスキー長官も、ウォーズマンには刃が立たないだろうし。でも、緊急事態なのにわざわざ変装をしたのは、そこに何か理由があるんじゃないかな、と思っちゃうんですよね。燃え殻さんが言う「ウォーズマン総決算」ならではの、何かとんでもないことが起きるんじゃないかな。

 ......どうしよう、何も起きなかったら。

 闘っていて服が破れて、長官が「お前はウォーズマンじゃないか!」と言っただけで終わる、とかね(笑)。

 それも含めて、『キン肉マン』っぽいけどね。あと、楽しみなのが、ウォーズマンって、闘うといつも激しく壊れるじゃない? 全部の試合に哀愁があるし、物語性もあって......『キン肉マン』のキャラクターの中で唯一、読んでいる子供が本気で泣いちゃった、そういうものを背負っている、ある種特殊なキャラクター。ほかの試合と違って、カラッとしてない。ウェッティじゃない?

 それがいいんですよね。

 そこが、僕らがウォーズマンを好きなところだね。試合中に雨が降るし......ウォーズマンの時だけだよ、雨が降るの(笑)。そこに悲しみと、おかしみみたいなのがあって。で、ウォーズマンのパロ・スペシャルって、『キン肉マン』に出てくる数々の技の中でも、みんなが実際にやってみたことがある技の第1位じゃない? キン肉バスターよりも上だと思う。

 ああ、そうですね。

 僕も中学の頃、かけたし、かけられたし。そういう日常でも可能な技を持っていて、読者にいちばん近いキャラなんだよね。プロレスの技、足四の字固めとかコブラツイストと、同じくらいメジャーなところにあると思う、パロ・スペシャルは。ウォーズマンってそれぐらい、読者に近いし、痛みも伝わるし......たとえば、ジェロニモって人間じゃない?

 ああ、なのに、機械であるウォーズマンのほうが、読者に近い。

 そう、機械なのに人間味がある。表情がないのに痛みも悲しみも読者に伝わる、不思議なキャラクターだよね。

 負けフラグはビンビンに立ってるけど、勝ってほしいな。ここで負けると2連敗になっちゃいますからね。

 そうなんだよね。

 ウォーズマンと同時進行で試合をしているネメシスも......。

 立ってる。マンガの構成で言うと、このふたつの闘いを同時進行で描くっていうことは、ダブル負けフラグだから......。

 でも、負けフラグのふたりが同時に闘ったら、さすがにどっちかは勝つんじゃないか、っていう気もするな。もし、どっちかが勝つとしたら......俺は、ネメシスのほうが、勝てそうにない気がします。

 うん、無理だろうなあ。だって、ネメシスの強さって、どのくらいだっけ?

 え? いや、キン肉マンとやり合うぐらいやから、エース級ですよね、超人側の。

 だから、ネメシスがここで負けると、他の超人たちも簡単に勝たせるわけにはいかなくなる。パワーバランスがおかしくなるから。

 でもファナティック、五大刻の中でも特にキャラが立っているから、ここで負けて物語から退場、というわけがない気もするし。

 それは読者はみんな思うことだよね。

 ですよね。ちなみに、453話で明かされた、ダンベルの設定はどう思いました? ファナティックが完璧超人始祖たちのダンベルを、ニセ物とすり替えてサグラダファミリアに持ってきた。ダンベルは元の所有者たちの命そのもので、それをマグネット・パワーの海で固めて封印したから、ジャスティスマンは一切の動きを封じられてしまった、という。

 あの、オレ、ちゃんと理解できていないので、もう一回読みます。よくわかんなかったんだよなあ......(読み直す)......なるほど......。

 あんまりピンときてないですね(笑)。

 でも、嶋田先生の視点になって考えると、物語上、ジャスティスマンを封じて排除する必要があった、っていうことだよね、たぶん。

 ここでジャスティスマンが動いちゃったら、勝たせないわけにいかないし。どうやって動けなくしようか、と考えて、ダンベルすり替えにたどり着いた。この封じられ方だったら、ジャスティスマンの株は下がらないし。

 強い弱いは関係ないもんね。

 この件でわかったのは、『キン肉マン』を読む時は、登場人物たちの後ろに飾られている物とかも、ちゃんと見とかなあかん、ということですね(笑)。「後ろのあれにもちゃんと意味あったんや?」っていう。そういうミステリ要素も意外とあるということですね。

 気になったのが、さっき話したように、このウォーズマンvsペシミマン、道場マッチじゃない? レフェリングどうするの?

 あ、そうか。闘う場所が屋上なら、宇宙超人委員会がヘリで飛んでくるだろうけど。

 もしくは、リアタイで闘いを観れるよう、映像で中継されているとかね。

 そこも『キン肉マン』のよさですもんね。必ず裁く人がいる。ただ闘うんじゃなくて試合なんだ、という線は外さないのが。

●7月7日初回放送のアニメの話

 ......あ、そうだ、『キン肉マン』ジャンプvol.5が出るんだよね。我々の対談も載る。

 アニメが始まるタイミングで、『キン肉マンジャンプ』が出るのはいいですよね。YouTubeの『キン肉マン』公式チャンネルにアップされている、声優さんたちのインタビュー動画、観ました?

 観た。みんな楽しそうなのがいいよね。

 楽しそうだし、本音でしゃべってる。ミスターカーメン役の谷山紀章さんなんて「ほかの役がよかったなと思いました」と言っているし(笑)。

 言ってた。昭和50年生まれで、自分らこそが『キン肉マン』世代のどまんなかだという自負がある、っていう話を最初にしてたよね。だからこそなんだろうけど──。

 「『キン肉マン』じゃなかったらやってないよ」とまで(笑)。

 ミスターカーメンを超人募集に出したのは、愛知県のナントカくんだった、って言ってたよね。そんなことまで憶えてるんだね。

 七人の悪魔超人のうち、七人目に登場したのがミスターカーメンだった、ゆでたまご先生は最後の最後まで「七人目どうすっかなあ」と決めかねていたはずだ、という話も。

 ガチだよね、完全に。

 「ミスターカーメン、はっきり言って俺じゃなくてもいい」なんて言いながら、ミスターカーメンについて、めちゃめちゃ詳しくしゃべっているし。

 他の声優も、そういうガチな人たちばっかりなんだよね、YouTubeを観ると。

 そんな声優ばかりが出演している、ということ自体、考えたら異常な作品ですよね。

 ほんとに!

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、エッセイ集『それでも日々は続くから』(新潮社)『これはただの夏』(新潮社)、『ブルー ハワイ』(新潮社)など多数の著作がある。最新著は『夢に迷ってタクシーを呼んだ』(新潮社)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで配信中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00〜27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で、コラム『午前三時の化粧水』、ドライバーWebで『横顔を眺めながら 〜爪 切男の助手席ドライブ漂流〜』を連載中。5月21日には『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化、さらに読売テレビ・日本テレビ系プラチナイト木曜ドラマとして7月11日(木)23時59分より同作ドラマがスタート(主演:木村昴)

取材・文/兵庫慎司  撮影/鈴木大喜 ©ゆでたまご/集英社

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