1988年からフジテレビ系で放送されていた『あっぱれさんま大先生』の第一期生だった“かなちゃん”こと中武佳奈子さん。6月20日放送の『ABEMA Prime』(ABEMA)に出演し、話題を呼んでいます。女子SPA!では、過去に掲載した中武佳奈子さんのインタビューをお届けします。(初公開日は2023年8月13日 記事は取材時の状況)
中武佳奈子さんは芸能界引退後の離婚、生活苦、親の逝去……どん底の生活の中、たまたま実家で見つけた明石家さんまさんからの手紙で、意識が大きく変わったといいます。
そして現在、中武佳奈子さんはどんな生活を送っているのか、これからの目標を聞かせてもらいました。
◆芸能界しか知らずに育ったと離婚後に実感
―― 一時期は水道が止められるなど生活インフラも食べるものにも苦労していたようですが、今はそこまでではない状況ですか?
「そうですね。だいぶ安定しました。税金もちゃんと払えていますし。それでも野菜の値段が高騰しているので、プランターでトマトを作ったり、水菜の根っこを植えたりと、節約はし続けていますよ」
――元芸能人とは思えないほど、地に足のついた生活をしている感じがしますね。
「私は幼い頃から芸能界しか知らずに育ってきて、ポンと一般社会に出た時に常識を知らな過ぎだったと実感したんです。特殊な世界で生きていくつもりで、何も身につけてこなかったから。
子役時代はずっと親からお小遣いを貰っていたし、結婚後も当時の旦那の実家で暮らしていたので稼げなくても生活ができていたので、離婚して初めて生活のために必要なことを知ることができました」
◆履歴書の職歴が真っ白で「逃亡犯?」と言われた
――疑問に思っていたのですが、離婚して厳しい生活になった時、芸能人時代の知人に連絡して助けてもらうことはできなかったのですか?
「元旦那が業界関係者の連絡を取り続けることを嫌がったんです。『過去の栄光にすがるな、今を生きろ』『引退した以上は一般人として振舞え』なんて言われて、連絡先を絶ってしまいました」
――結婚して移住した大阪では実質、孤立無援状態だったのですね。
「大阪で知り合った人に心を開こうとすると、自分の状況を説明すると芸能人だったことを話さざるを得ないじゃないですか。ちらっとそんな話をしたら『惨(みじ)めに見えるから昔の話はしない方がいい』なんて言われちゃいました。
だからバイトの面接で履歴書を書くにしても、職歴が真っ白なんですよ。『あなた、大丈夫なの?実は逃亡犯じゃないわよね』なんて言われることもありました(苦笑)」
――そういったことが積み重なって、笑顔がなくなってしまったのですね。
「それでも、今バイトをしている、おおがみ呉服の方と知り合ってからは自分が良い方向にまわっていったような気がします。もともといっぱい助けられてきたのですが、さんまさんからの手紙で笑顔を取り戻してからはさらにシフトを増やしてくれたりして、本当に感謝している人たちですね」
◆ひたすら頑張る姿勢を子どもに見せていたい
――不躾(ぶしつけ)な質問ですけど、これまで借金はしてこなかったのでしょうか。
「ないです。電気代の件で親に頼み込んだくらいですが、それも断られてますし。正直、知人から借りるのは簡単でしょうし、そのためのアピールも容易だと思います。でも、お金の切れ目は縁の切れ目。いつ返せるのかもわからないということは、その人との関係もどうなるのかわからないですから。
ただ違う観点で見れば、子どもに苦労させないためにもお金を借りたり、夜の仕事で稼ぐっていう手段もあったはずなんです。それでも私はバイトを掛け持ちしてでも、日々ひたすら頑張っている姿勢を子どもに見せていたい。頑張ることは恥ずかしいことじゃない。いつかは絶対に抜け出せる。だから一緒に頑張っていこうって」
――そんな佳奈子さんの背中を見ているお子さんは、きっとたくましく育っているのではないでしょうか。
「でも最近聞いたのですが、電気が止まってランプだけとか、水を公園に汲(く)みに行ったりとか、子どもにとってはそれが一番楽しい生活だったらしいです。ちょっとうちの子が変わっているのかもしれないですけど(笑)」
◆『あっぱれ』同窓会番組に出演しても周囲は気づかず
――先日放送された『あっぱれさんま大先生2023同窓会スペシャル』(フジテレビ)を見た周囲の人たちから何か反響はありましたか?
「放送の翌日に素性をバラしていないバイト先で『あっぱれ』のことが話題になってたんですよ。でも、全然誰も私のことに気付いてなくて(笑)!普段の私は眼鏡をかけてるから同一人物とはわからなかったのかもしれません」
――同窓会の収録以降、昔の仲間との交流は復活したのでしょうか?
「はい。みんな私のことを心配してくれていました。あーやん(村岡綾佳さん)とは毎日電話をしてるくらい仲良しです。
山崎裕太くんからは最近YouTubeのことを教わってるんですよ。実はYouTubeでの活動を始めようと考えていて。試しに撮った動画を送ってみたら『なんでこんなくだらないものを送ってくるんだ!』って、めっちゃスパルタなんです(笑)」
◆さんまさんの言葉に救われたように、体験や苦しんだことを伝えられたら
――引退から13年。ついに表舞台にリスタートするのですね。
「周りの人たちから『おまえの人生ヤバいから発信しろよ』ってしょっちゅう言われますし、さんまさんからも勧められたので。大々的にではなく、コツコツやっていければと思います。
最近、InstagramのDMで色んな悩みを送ってくる方が増えているんですよ。解決策は人によって違うから、こうした方がいいとは言わないですけど、私が体験したことなら伝えることはできるなと思って返信しました。そしたら『共感してもらえたことが嬉しい』って返ってきて、その時にすごく私も嬉しかったんです。みんなが『発信すれば』っていうのは、こういうことだったのかと理解できました」
――波乱万丈な半生をおくってきた佳奈子さんだからこその説得力ですね。
「これからは私の体験してきたことを、今苦しんでいる人に届けられたら。私がさんまさんの言葉に救われたように、私の言葉で誰かを救えたらいいなと思っています。
人生は本当にいろいろあります。悪いことの後にさらに悪いことがあって、やっと良いことがある人もいる。そう考えるようにすれば、頑張ってさえいればいつか人生が明るく拓(ひら)けることもある。これからも、悪いことが悪いだけで終わらない人生を過ごしていきたいと思います」
【中武佳奈子】
Instagram:@nakatake.kanako
YouTube:@kanakonakatake
<文/もちづき千代子>
【もちづき千代子】
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:@kyan__tama