元セクシー女優の川上なな実、過去を家族に隠さない理由「功績があって今の私たちがあることを共有したい」

0

2024年06月25日 16:11  日刊SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

川上なな実さん
 俳優・川上なな実(@nanamikawakami)。2012年1月にセクシー女優・川上奈々美としてデビューした彼女は、ストリッパーや歌手、バラエティなどで数々の才能を発揮し、作品以外の場でも大いに活躍をしていた。
 さらには高い演技力を評価されて映画界にも進出。Netflixの『全裸監督』への出演などで注目を集める中、2022年1月をもってセクシー女優を引退。その後は「川上なな実」に改名し、俳優業に専念することを表明していた。

 その一方、プライベートでは2022年7月に映画関係者である男性と入籍し、翌年の1月に男児を出産。現在は一児の母となり子育てに奮闘中だ。

 元・セクシー女優の肩書きを消すことなく、俳優として母として生きる川上さん。彼女のインタビューから、業界を退きながらも活躍し続ける一人の女性の“生き方”が見えてくるかもしれない。

◆引退の理由は「脱ぐことに意味を持たせたかったから」

――引退した理由は何だったのでしょうか。

川上なな実(以下、川上):ひと言でいうと、俳優業へのステップのためです。現役でいることの障壁が高くなったと感じたことが大きいですね。

――その当時、すでに一般作品の映画にも数多く出演していましたよね。両立していくことは選択肢になかったのでしょうか。

川上:デビューして10年近く経っていたので、出演作品数が200本くらいになっていました。正直、撮影現場でも動きが流れ作業になってしまっている自覚があったんです。

 引退を決めた頃には、脱ぐことがゴールになっている作品づくりに興味が持てなくなっていました。裸=リビドーに訴えるためだけのものではなく、お芝居を通じて脱ぐことに意味を持たせたいと思うようになったんです。

◆産後ボケがひどすぎて人としゃべれなくなった

――新たなステージに踏み出すための引退だったわけですね。2023年1月に出産をされてからは、育児に専念していたそうですが。

川上:はい。ここ1年は、本当に育児のみの生活でした。私、産後ボケがひどすぎて、子どもを産んでからは全然人としゃべれなくなっちゃったんですよ。言葉が出なくなったりテンパったりで、すごく大変だったんです。

――マミーブレインという症状らしいですね。物忘れが激しくなったり、集中力が低下したりするようです。

川上:でも最近、ちょうど俳優業が動き始めたところなんですよね。先月も映画の撮影に参加してきました。そのお陰で、今はもうマミーブレインからは抜けられています。

 子どもが3か月くらいの頃に、搾乳をしながらちょっとだけ撮影に参加した時も思ったんですけど、改めて自分はやっぱり外で活動したい人、家でじっとしていられない人なんだと実感しています。

◆子供を産んだことが自信につながっている

――久しぶりの撮影現場で、演技の面で何か変化は感じましたか?

川上:良い意味で力が抜けたように思います。普段の自分と役の自分とのスイッチングが上手になりました。以前は寝る間も惜しんで役作りに集中していましたけど、今は「どうせ現場に行けば絶対にデキる! だから今は寝よう!」といった風に切り替えられています。

――川上さんには、役作りにストイックというイメージが強かったので意外ですね。

川上:今は役作りに全振りで頑張る時間がない分だけ、意識的に「現場で集中!」みたいなやり方になっているんです。この前も、楽屋でグっと役に入り込んでから出ていったら「話しかけられないオーラが出てた」なんて言われたんですよ(笑)。

 他にも「すごく撮影映えをしていた」と言われました。これはストイックすぎない今の自分を認められたようで嬉しかったです。きっと私は子どもを産んだことが、自分の自信にも繫がっているのでしょうね。気づいたら自然に自分のことを好きになっていました。

◆夫の反応は「セクシー女優なの?!すげー!」

――川上さんのご結婚相手はどういう方なのですか?

川上:映画の助監督です。彼とはドラマ『TOKYO VICE』の撮影で2021年に知り合ったのですが、超スピーディに恋愛関係になりました。お互いに「この人だ!」と思ったんですよね。

――川上さんがセクシー女優をしていたことについては、どう思われていたのでしょうか。

川上:彼は海外の元映画プロデューサーの母と俳優の父を持つ人で、もともとアメリカ出身のハーフなのもあってセクシー女優に対して偏見がなかったんですよ。最初は「セクシー女優なの?!すげー!」って感覚だったみたいです(笑)。

 でも、ある時に私が演技について悩んでいることを話したら、「この子も悩み事を抱える一人の人間なんだ」と感じたようで。そこからは普通の女の子としてもちゃんと想ってくれるようになりました。

――素敵なお話です。そういった環境ならば、セクシー女優だった過去を隠さなくても問題ないでしょうね。

川上:でもきっと、かなりの数のセクシー女優がパートナー問題を抱えているはずです。相手がこの仕事をどう思うか、打ち明ける否か……絶対に気にすると思うんですよ。

 でも世界的な視野で見ると、この職業ってリスペクトの対象でしかないんですよね。夫も夫の家族もみんな私をリスペクトしてくれている。だからこそ、自分の子どもにもリスペクトして欲しいという気持ちがあります。

◆子どもにもセクシー女優だった過去をリスペクトして欲しい

――お子さんにもいずれは伝えるつもりがあるのですか?

川上:ママはこんな功績を残しているんだよ、培ってきた過去があって今の私たちがあるんだよってことを、家族で共有したいと思っています。

 ただ、具体的にいつどうやって伝えるかはまだわかりません。彼がもう少し成長して「あれ?」と疑問を持ったタイミングで話し合うつもりです。とりあえず今は、夫婦で私の肩書きをポジティブに捉えているということだけはハッキリしています。

――今の生活圏のご近所さんたちにバレて生活しづらいなんてこともありませんか?

川上:全くないですね。実は、近所に私のファンが住んでるっぽいんですよ。子どもを連れて擦れ違った時に「あっ!」って顔をされたんですけど、何回目かでさり気なく「お疲れ様です」って声を掛けられたんです。そういう絶妙な距離感がなんとも気持ちが良いというか。

――もはやセクシー女優だからといって、周囲が騒ぎ立てる時代ではない?

川上:今って多様性の時代だからこそ、みんな良い意味で察してくれているんだと思いますよ。以前お子さんを生んだセクシー女優さんが、「周りにはぜんぜん気づかれてない」って言っていましたけど、絶対に気づかれてはいるんですよ。でも、敢えて何も言わないよう空気を察しているだけ!

 ぶっちゃけ現役で尖っていた頃は、そういうお察しにイラっとしたこともあるんですけど(笑)。今は素敵なことだなと思えるようになりました。

◆出産後に性への捉え方が180度変わった

――子どもを産んで最も変わったと思うところは何でしょうか?

川上:性行為についての捉え方ですね。改めて考えてみると、私はすごく性のことを疎かにしていたような気がするんですよ。

 現役だった頃の私は、撮影にしてもプライベートにしても、「ちょっとストレス発散してくるわー!」のノリで性行為をしていたんです。でもきっと、それがないと生きていけない時期でもあった。ただ、上手くは言えないのですが……今は考え方が180度変わったように思います。

――今の川上さんにとっての性行為とは?

川上:オプションみたいなものだと思っています。あったらあったで幸せだけど、それ以上に幸せなことがこの世にはあるんだって知りました。自然の摂理として性行為が出来ないこともあるのもわかったし、手を繋いだりキスしたりするだけでも幸せだと考えています。

――本当に大きく変化していますね。

川上:昔は女友達から「最近レスで……」なんて相談されたら「ヤバいじゃん!やらなきゃ!」って、ずいぶんと失礼なことを言っていたんですよ。でも、レスだって別に悲しいことじゃない。あの頃は他人の幸せを限定してしまっていたな、と反省しています。とはいえ、きっと年を重ねるごとに、私の性に対しての考えは変わっていくと思います。

◆マイノリティに生きてきた人たちに孤独を感じさせない世界に

――今後は俳優業にまい進していく予定ですか?

川上:俳優活動をしていくのはもちろんですが、最近は他にもやりたいことができました。それが、女性に向けての性教育なんです。

 実は現役時代からずっと興味を抱いていた分野なんですよ。婦人科系のクリニックよりももっと性のことを気軽に話せるような場所をつくりたいと思っていたのですが。ようやくそろそろ形になりそうなんです。

――もう、すでに動き出しているのですね。

川上:女医さんと現役のセクシー女優さんと3人で組んで性教育プロジェクトを立ち上げる予定です。今の性教育って矛盾がいっぱいだし、性病のことなんて学校でもやらないじゃないですか。

――確かに、すごく大事なことですよね。何もかも包み隠さず活動し続けている川上さんだからこそ、伝えられることかもしれません。

川上:私は自分のために生きることが大事な人間ではあります。でも、人を救うために何かしたいという思いが根本にあって、それが今の自分に繋がったような気がしています。今後は母として俳優として性教育の発信者として、前を向いていきたいです。

 さらにその先には、マイノリティに生きてきた人たちが感じている孤独の手助けをしていきたい。性産業従事者だけでなく、LGBTQの方や夫のようなハーフの方、育児で孤立してしまいがちなママさんたちも含め、仲間として気持ちを共有していければと思っています。

<取材・文・撮影/もちづき千代子>

【川上なな実】
2012年1月に「川上奈々美」でデビュー。2015年、浅草ロック座でストリップデビュー。同年9月から「恵比寿マスカッツ」に加入し、2017年7月まで副キャップを務める。ドラマや映画に多く出演し、2019年のNetflix「全裸監督」での演技は話題に。2022年2月に現在の名前に変更、俳優業に専念することを宣言。2022年結婚、翌年に第一子を出産
    ニュース設定