「未来のために白紙の状態から再スタート」新LMP2規定の仕切り直しにコンストラクター4社が同意

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2024年06月27日 19:00  AUTOSPORT web

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2024年のル・マン24時間レースに参戦したAO・バイ・TFの14号車のオレカ07・ギブソン
 ACOフランス西部自動車クラブは、LMDhスパインに基づく次世代のLMP2レギュレーションという当初の計画を断念する決定を下し、カナダのマルチマチック社を含む4つのコンストラクターの同意を得た。新しいLMP2レギュレーションはまだ定義されていないが、より小さなエンジンを搭載した、より軽量なマシンを作ることを目的としており、“クリーンシート・デザイン”に基づくものとなる。

 今月ル・マンで行われたACOの年次記者会見で、2026年に予定されていたLMP2の新規定はさらに2年延期され、2028年となることがアナウンスされた。これにより既存のマシンは2027年シーズンまでELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズとAsLMSアジアン・ル・マン・シリーズ、そしてIMSAウエザーテック・スポーツカー選手権に参戦できることとなった。

 LMP2の新規定の構想では当初、WEC世界耐久選手権とIMSAのそれぞれのトップクラスに参戦しているLMDhマシンと同一のシャシーを、現在LMP2クラスに参戦している4つのライセンス・コンストラクター(オレカ、ダラーラ、リジェ、マルチマチック)が製造することになっていた。

 しかしLMEM(ル・マン・エンデュランス・マネジメント)のボスであるフレデリック・ルキアンはルールメーカーがまったく新しいフォーミュラを作ろうとしているため、この計画が中止されたことを事実上認めた。

「我々はパドックの声に耳を傾けた結果、この決断を下した」とルキアンはSportscar365を含む特定のメディアに語り、同時にオレカ、ダラーラ、リジェ、マルチマチックの4社も新ルールに参加することを認めた。

「LMP2の未来のためには白紙の状態から再スタートし、マシンを現在よりも軽量化し、より小さなエンジンを搭載して、より未来に繫がるものにしなければならないと考えている」

 IMSAのジョン・ドゥーナン代表は、セカンダリー・プロトタイプ・クラスをシリーズの“重要な一部”と位置づけ、現行のルールをさらに2シーズン維持するという決定を支持した。

「現行車両を延長するカギは、市場にかなりの量の在庫があることだ。我々はそれを時代遅れにしたくなかった」とドゥーナンはSportscar365に語った。

「次のマシンを適切なタイミングで投入し、みんなに長いランウェイを与えようということだ」

 2028年に次世代LMP2マシンがIMSAに参戦することについて問われたドゥーナンは、次のよう答えた。「たしかに、このように長いランウェイがあれば、誰もが計画を立て、2027年からテストを開始して2028年に備えることができる」

「IMSAがデイトナでの24時間レースで開幕するのは明らかなので、何をするにしても新製品を使う機会を持った人たちを集めたいんだよ」

■LMP2にもBoP(性能調整)を導入か

 マルチマチックのスペシャル・ビークル・オペレーションズ担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントであるラリー・ホルトは、次世代LMP2規定の改正計画を承認し、同社の関与を認めた。

 ワトキンス・グレンで行われたSportscar365の取材に応じたホルトは、フランスのオレカ、リジェ、イタリアのダラーラの代表とともに、先月パリで行われたACOとの会議に出席し、そこでコンストラクターたちに新しい計画が明らかにされたことを明かした。

 同氏はまた、ポルシェ963のためにマルチマチックが製造したものを含め、LMDhスパインから脱却するという選択に賛成だと語った。

「これはクリーンシートのデザインだ。(LMDhを使う)やり方は、当時まったく理にかなっていなかった」とホルト。

「LMP2とLMDhで共通のシャシーを持つことは、私のようなコンストラクターにとって、投資に対するメリットだった。その後LMDhが先になった。そして、そうなった途端それが正しいやり方だったのかどうかつねに疑問を抱くことになる」

「新しい計画を支持するよ。なぜならLMP2は手頃な価格になるべきだからだ。LMP2で、この(LMDhの)バスタブをどうするんだい? バッテリーシステムがあった場所が空洞になってしまうんだ」

「LMDhが一定のレベルであるため(シャシーに)施されたことはたくさんある。例えば、ポルシェ963のフロントサスペンションはかなり洗練されている」

「もっと手頃な価格のクルマを作るとしたら、ベース車に搭載されているものを使わざるを得ない。そして、このコスト上限でなければならないんだ」

 これと同時にホルトは、LMP2コンストラクター4社のうち1社が、2007年モデルでオレカが達成したように、新規定のなかでふたたび圧倒的なシェアを占めることになりかねないと警告した。

 しかし、ACOとFIA国際自動車連盟はこのクラスにBoP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)を導入する予定だという。

「誰かが最高のマシンを持ち、また36人の顧客を獲得することになるだろう」と現在のオレカ07の参戦台数から、ホルトは推察して語った。

「仮に(グリッド全体が)40台として、全員(コンストラクター4社)が10台ずつ手に入れたとしても、開発に100万ドルも200万ドルも費やせば、(1社あたり)10台では元が取れない。利益を出すためには性能競争に勝たなければならない。あるひとりが勝ち、みんながお金を賭けるような競争環境でなければならない」

「我々は大物だ。4つのライセンスコンストラクターのひとりであることを諦めるつもりはないし、もし100万ドルや200万ドルかかるとしても、私はそうする」

 昨年、ギブソン・テクノロジーが2030年までのLMP2エンジンプロバイダーとして発表されたにもかかわらず、ルキアンは次世代レギュレーションでもイギリス企業がエンジンを供給し続けるかどうか確認することを拒んだ。しかしホルトは、2017年の現行レギュレーション導入以来のギブソンの実績を称賛し、同社製エンジンが継続されることを望んでいるという。

「信頼性、走行距離、コストの面で、彼らは信じられないほど良い仕事をしていると思う」とホルトは述べた。

「ただ、制裁機関がターボについてやバッテリーについてなど要求し、先走ってしまわないことを願うばかりだ」

「LMDhを見てみろ、複雑だ。カスタマー・レーシングではバッテリーも制御ソフトも、すべて本当に難しいんだ」

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