「2040年には働き手が1100万人足りなくなる」。2023年3月にリクルートワークス研究所から発表された衝撃的な未来予測シミュレーションです。今回紹介するのは、その発表を書籍化した『「働き手不足1100万人」の衝撃』(プレジデント社)。
これまでにもニュースで「働き手が不足している」「人手が足りない業界がある」とさかんに取りざたされていたため、「またか......」と思った人もいるかもしれません。しかしこれから起ころうとしている人手不足は、「経営者は大変だなあ」と他人事でいられる事態ではありません。まさに私たち生活者の暮らしに直結する危機が16年後に迫っているのです。
「業種別の労働需給シミュレーションの結果を見てみると、2040年には介護サービス職で25.2%、ドライバー職で24.1%、建設職で22.0%が不足することがわかった。
すると、どうなるか。(中略)
働き盛りの家族が介護をしなくてはならない。宅配便の遅延が当たり前になり、買い物に行くために行き来をする時間も増える。ドライバー不足でコンビニやスーパーの商品の補充も毎日はされないかもしれない。さらに、建設現場の人手不足で地方の生活道路が穴だらけになってしまう」(同書より)
16年後、あなたやあなたの親は何歳になっているでしょうか。もちろん介護をする必要がない人にとっても深刻な事態です。子どもがいる人なら保育・教育サービスが必要ですし、医療サービスやゴミ処理、災害が起きたときの対応など、何もかも人手不足によりままならなくなってしまいます。つまり「生活を維持するために必要な労働力を日本社会は供給できなくなるのではないか」という、そんな状況が生活者の私たちの目の前にあるのです。同書を読むのと、その恐ろしさをありありと感じます。
著者はこれを「みなが無人島に住むような社会」と表現。私たちは今、誰かの労働を消費して豊かな生活を営んでいますが、他者の労働の恩恵を受けられなくなってしまうと、生活だけで精一杯の日々を強いられます。
なんて絶望的な未来なんだ......と思ってしまいますね。しかし著者は同書で希望のある道も示しています。このまま座して待てばシミュレーション通りの結果になってしまうけれど、そうした未来を回避する4つの方法が同書に記されており、いち早く危機を察知した人々はすでに動き出しています。
働き手不足を解消する4つの打ち手の1つは、徹底的な機械化・自動化をおこなうことです。こうした話題になると「AIに仕事を奪われる」とネガティブな意見も耳にしますが、深刻な働き手不足となった今の社会には必要不可欠なものであり、著者は「仕事の自動化を急速に徹底していかなければ、生活に必要なサービスが提供されなくなる事態に陥ってしまう」と主張します。それでは「機械化・自動化が進んだあとに人間がすべき仕事はなんなのか」。これに関する詳しい内容は、ぜひ同書を読んで確かめてみてください。
同書は、前半で非常に厳しい日本の現状を突き付けられるため、読み進めるのがつらいかもしれません。しかし後半では「じゃあ私たちはどうすればいいのか」「どういう思考が必要になるのか」といった解決策が具体的に提示されています。「危機と希望の書」である同書を読んで、あなたの16年後を具体的にイメージしてみてはいかがでしょうか。
[文・春夏冬つかさ]
『「働き手不足1100万人」の衝撃』
著者:古屋星斗,リクルートワークス研究所
出版社:プレジデント社
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