スーパーでは“常温”で売られることもある卵ですが、家ではどうして“冷蔵保存”するのでしょうか?→「卵のプロ」が語る理由に納得 おすすめの保存方法も紹介

126

2024年07月13日 08:13  ねとらぼ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ねとらぼ

卵のあれこれについて聞いてみた

 実は、世界第2位の卵消費国である日本。そんな食卓に欠かせない鶏の卵ですが、スーパーでは常温で売られているのを見たことはないでしょうか? しかし、家庭で保存するときには冷蔵庫に入れることが一般的です。これはいったいなぜなのか。鶏卵の販売・加工などを手掛けるJA全農たまごと、数々の鶏卵関係者が加盟する日本卵業協会に話を聞きました。


【画像】理論上「常温保存」で生食できる期間


●スーパーでは常温で売られているのに、家では冷蔵庫で保存するのはなぜ?


―― 卵はスーパーなどでは、よく常温で売られていますが、一般的に家庭では冷蔵保存が推奨されます。なぜなのでしょうか?


・・・・・・・・・・


JA全農たまご: 家庭用で生食用として消費される鶏卵については、日本養鶏協会の「鶏卵の日付等表示マニュアル(改訂版)」により、販売後に家庭等で冷蔵庫(10℃以下)に保管されることを含んで賞味期限が設定されています。鶏卵の品質維持と温度管理は密接な関係があり、保管温度が高いほど劣化が早く進みます。


・・・・・・・・・・


日本卵業協会: 卵殻は次亜塩素酸ナトリウム溶液150ppm以上、または同等の効果を有する消毒剤で洗浄していますので、サルモネラ属菌は付着していません。ただし、まれに卵内にサルモネラがいた場合を考慮し、サルモネラの発育温度が10℃以上、特に20℃以上になるとよく増殖することから、10℃以下での冷蔵保管をお願いしています。 


・・・・・・・・・・


 冷蔵保存をするのは、卵を長持ちさせ、サルモネラ属菌の増殖を抑えるためなのですね。なるほどー!


●卵の保存期間はどれくらい?


―― では、卵は大体どれくらいの期間保存できるのでしょうか?


・・・・・・・・・・


JA全農たまご: 鶏卵の賞味期限は、食中毒防止の観点からサルモネラ属菌が急速に増殖を始める前までの期間を生食できる期間と定めています。


 サルモネラ属菌に汚染されている卵はおおよそ10万個に3個くらいと極めて低いものですが、万が一鶏卵内にサルモネラ属菌が存在していたとしても、採卵から10℃以下で保管していた場合、50日ほどは生食できる期間となっております。


 一方、鶏卵を生食できる期限の算出根拠は上記の通りですが、消費者等により良い状態で使用していただくため、賞味期限はその範囲内で卵質の変化等を考慮し、産卵日を起点として21日以内を限度として設定します(家庭用の鶏卵の賞味期限は、温度管理の状態がコントロールできないので、短めに設定されています)。


 なお、賞味期限を過ぎた場合は、見た目・におい等の異常がないことを確認し、十分な加熱をして召し上がっていただくことを推奨しております。


・・・・・・・・・・


日本卵業協会: 卵の賞味期限とは、生で食べられる期限です。卵黄膜は保存温度及び保存期間と一定の関係で弱化し、一定レベルまで弱化が進むと卵黄成分(鉄・脂質等)が卵白へ移動を起こします。すると、まれですが卵白にサルモネラ属菌がある場合、急激な増殖をおこすことになります。


 これをサルモネラ属菌の研究の第一人者であるイギリスのハンフリー博士が数式により表しました。菌の急激な増加が起こるまでの日数は次の式により求められます(ハンフリーの法則)。


D=86.939-4.109T+0.048T2D:菌の急激な増加が起こるまでの日数T:保存温度


 この答えに冷蔵保存7日をプラスした日数が賞味期限となりますが、パック卵の賞味期限は安全を加味して14日程度を表示するのが一般的です。


・・・・・・・・・・


 ハンフリーの法則! そんな数式まであるとは……。ちなみに、季節ごとの基準となる気温(夏期27.5℃/春秋期22.5℃/冬期10.0℃)で保存した場合の生食可能な期限は、採卵後から夏期は16日以内、春秋期は25日以内、冬期は57日以内なのだとか(ただし、通常市販の卵はそれよりも短い日数を賞味期限として設定)。


 以上の話と組み合わせると、10℃以下での冷蔵保存、つまり「冬期」レベルの温度を保てば、理論上卵はかなりの期間生で食べられるといえそうです。ただし、卵を長持ちさせるには輸送時の環境も重要であり、この「輸送時の環境」というのがくせ者。運ぶときの温度変化が激しいとそれによって卵がいたむため、変化を最小限にするために“売るときまでは常温”という選択がしばしば採られるのだといいます。


 また、賞味期限は日本養鶏協会の「鶏卵の日付等表示マニュアル」が平成22年3月に改訂され、生鮮食品としてのタマゴという視点から「産卵日を起点として21日以内を限度」とすることが定められているといいます。したがって現在ではいくら低温で保管されていても21日以上には表示していません。そうした背景を踏まえると、やはり賞味期限の範囲内での生食が推奨されます。


●結局、卵はどう保存したらいいの?


 では、結局のところ卵はどう保存したらいいのでしょうか? 「JA全農たまご」「日本卵業協会」はそれぞれ、以下のように回答しました。


○「JA全農たまご」が推奨する保管方法


1.品質保持のため、購入後は速やかに冷蔵庫に保管し、冷蔵庫内でも温度変化が多い場所を避け、結露等の発生を防ぐようにしてください。


2.鶏卵は温度や結露のほかにもドアの開閉による衝撃によって殻にヒビが入ってしまうことがあるため、ドアポケットよりも振動の少ない冷蔵庫内の奥での保管を推奨しています。


3.現在のパックは衝撃吸収にも優れていて中の卵が割れにくく、鶏卵の鋭端部(とんがったほう)が下向きに入れられていることで品質を保つことができる点や、賞味期限が印字してあり分かりやすい点からも、パックに入れたままの保管を推奨しています。


○「日本卵業協会」が推奨する保管方法


1.卵の鋭端部分(とんがった部分)を下向きに保存する


卵殻は鋭端部分が厚く鈍端部分が薄くできています。薄い鈍端部分を下にすると割れやすくそこから雑菌等が侵入しやすくなるため、鋭端部分を下向きに保存することを推奨しています。また鈍端部分を下にすると、気室が上の鋭端部分に移動(上昇)して卵内容物の動きが大きくなることも考えられるため、鋭端を下にするのが望ましいです。


2.冷蔵庫保管時はパックに入れたままで。ドアでなく振動の少ない冷蔵室等での保管が望ましい


ドアの開け閉め時に発生する振動で卵黄が動き、卵黄膜の弱体化が考えられます。卵黄膜が弱体化すると、鉄分等が卵白に移行しやすくなり、鮮度低下につながりやすいです。卵白に万一サルモネラが存在していたら増殖の心配もあります。


3.購入後水道水で洗って保管しないこと(必須)


消費者からよくある質問として、卵殻の汚れが心配で、水道水で洗って保管したいが大丈夫かというものがありますが、スーパーで販売している卵は洗浄消毒されているのでそのままの保管が望ましいです。卵殻には微細な穴が7000〜1万5000個程度あるといわれ、水で洗うと浸透圧の原理で水分と細菌が一緒に卵内に入ることが危惧されるためです。


・・・・・・・・・・


 なんと、両者ともに卵パックから取り出さず、冷蔵庫のドアで保存しないことがおすすめとのこと。どっちもよくやっちゃうから気を付けねば……!


 身近なのに意外と知らない卵のこと。適切に保存して、卵と安全に付き合っていきましょう。


※取材協力:JA全農たまご/日本卵業協会(順不同。五十音順)


●参考文献


・日本養鶏協会鶏卵日付表示等改訂委員会『鶏卵の日付等表示マニュアル改訂版』


・一般社団法人日本卵業協会『タマゴのソムリエハンドブック タマリエ検定公式テキスト』


・食品安全委員会事務局『平成22年度終了食品健康影響評価 技術研究課題の事後評価結果について』


・たまご知識普及会議“たまペディア”「たまごの国別消費量」


●文:近藤仁美(こんどう・ひとみ)


クイズ作家。国際クイズ連盟日本支部長。これまでに、『高校生クイズ』『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』等のテレビ番組の他、各種メディア・イベントなどに問題を提供する。2023年、「Trivia Hall of Fame(トリビアの殿堂)」殿堂入り。著書に『人に話したくなるほど面白い! 教養になる超雑学』(永岡書店)など。


このニュースに関するつぶやき

  • 「スーパーでは常温で売られている…」スーパーは店舗内は温度管理されているけど、家庭内は仕事から帰ると35℃突破しているよ。
    • イイネ!28
    • コメント 1件

つぶやき一覧へ(80件)

ランキングライフスタイル

前日のランキングへ

ニュース設定