「Galaxy Z Fold6/Z Flip6」は何が変わった? 折りたたみ×AIで新たな価値提案へ

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2024年07月13日 10:31  ITmedia Mobile

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サムスン電子が7月10日に発表したGalaxy Z Fold6(右)とGalaxy Z Flip6(左)。日本では、KDDIとサムスンが7月31日、ドコモが7月下旬以降に発売する

 サムスン電子は7月10日、仏パリで「Galaxy Unpacked」を開催し、フォルダブルスマホの最新モデル「Galaxy Z Fold6」「Galaxy Z Flip6」を発表した。同モデルは、海外でのお披露目と同時に日本でオープンマーケット版を7月31日に発売することが明かされた他、イベント翌日の7月11日にはドコモとKDDIがそれぞれ取り扱いを表明している。


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 折りたためるスマホの先駆者としてGalaxy Zシリーズのハードウェアを進化させてきたサムスンだが、Galaxy Z Fold6/Flip 6では「折りたたみAIフォン」というキャッチコピーで、「Galaxy AI」を打ち出してきた。フォルダブルとAIの掛け合わせで、新たな価値を提案するというのが2モデルの方向性といえる。その戦略を見ていきたい。


●フォームファクターに磨きをかけたFold、対するFlipはカメラを強化


 Galaxy Z Fold6/Flip6は同じフォルダブルスマホだが、その進化の方向性が異なっている。まず、横折りのGalaxy Z Fold6は、前モデルからディスプレイのアスペクト比を変え、より正方形に近づいた。開いたときの横幅は、2.7mm増加。逆に縦の長さは1.4mm短くなっている。この変更に伴い、閉じたときのカバーディスプレイがより一般的なスマホのアスペクト比に近づいている。


 また、薄型化、軽量化には継続して取り組んでおり、閉じたときの厚みは12.1mm、重量は239gになった。前モデルの「Galaxy Z Fold5」と比べ、厚みで0.5mm、重量で14gを削減できた格好だ。閉じた際の0.5mm差は体感しづらいかもしれないが、14gの違いは手に取ってみればすぐに分かる。メインディスプレイは素材を見直し、より折り目がつきにくくなっている。構造を見直し、初めて防塵(じん)に対応した点も、注目のポイントといえそうだ。


 フォルダブルスマホの基本ともいえるディスプレイに改良を加えたGalaxy Z Fold6に対し、Galaxy Z Flip6はカメラやバッテリーを刷新した。もともとGalaxy Z Flipは同時期に発売されていたGalaxy SやGalaxy Z Foldと比べると、ややカメラ性能が低めだったが、Galaxy Z Flip6では、これを刷新。メインの広角カメラが5000万画素になり、4つのピクセルを1つに束ねて感度を上げるピクセルビニングに対応した。


 また、バッテリーも1割増の4000mhAになり、動画やオーディオの連続再生時間が伸びている。カメラを刷新したのに伴い、レンズ周りの縁を強調するデザインを採用。これに合わせるよう、フレームなどのデザインも直線的な形状になった。この点はGalaxy Z Fold6も同じで、同モデルの見た目はGalaxy Sシリーズの最上位モデルである「Galaxy S24 Ultra」などに近づいている。


 とはいえ、ハードウェアが前世代から大きく変わったかというと、必ずしもそうではない。もともと完成度が高かったこともあり、前モデルから継承している部分は少なくない。一例を挙げると、Galaxy Z Fold6のカメラセンサーは前モデルまでと同じで、バッテリー容量も変わっていない。デザインは変わったものの、スペックでは現状維持の部分も残る。


 Galaxy Z Flip6も同様で、前モデルの「Galaxy Z Flip5」で3.4型まで拡大し、売りになっていたカバーディスプレイの仕様はそのまま維持されている。メインディスプレイはピーク輝度が上がるなど、スペックは上がっているものの、サイズ感などはほぼ変わっていない。フラグシップモデルとはいえ、ハードウェアのフルモデルチェンジはなかなか難しい状況になりつつある。


●フォルダブルに最適化したAI体験ながら、方向性が異なるFoldとFlip


 一方で、サムスン電子はGalaxy S24シリーズで採用を始めたGalaxy AIを前面に打ち出すことで、Galaxy Z Fold6/Flip6の差別化を図ろうとしている。それを象徴しているのが、折りたたみAIフォンというキャッチコピーだ。Galaxy Unpackedでも、ハードウェアの進化以上にフォルダブルという形状にAIを掛け合わせたとき、どのような利便性が発揮されるのかが強調されていた。


 ただし、大画面になるGalaxy Z Fold6と、持ち運ぶときだけコンパクトになるのが売りのGalaxy Z Flip6では、その方向性が少々異なる。どちらかといえば、前者はクリエイティブな作業を助けるためのAIを訴求していたのに対し、後者はカスタマイズによる自己表現のためのAIという打ち出し方をしていたのが印象的だ。同じGalaxy AIでも、フォームファクターによって売りになる機能が異なるというわけだ。


 例えば、Galaxy Z Fold6の場合、Notesアプリでメモを取りながら録音し、その音声をテキスト化できる機能が大々的に紹介されていた。取ったメモと文字起こししたテキストは同期しており、書いたメモの部分をタップすると、音声から起こされたテキストを確認できる仕掛けだ。Sペンに対応しており、大画面でメモが取りやすいGalaxy Z Fold6ならではの使い方といえる。


 また、PDFを中に含まれている画像も含めて丸ごと翻訳する機能も、7.6型のメインディスプレイを備えたGalaxy Z Fold6におあつらえ向きだ。同じことはGalaxy Z Flip6でもできるが、A4などの用紙に印刷することを前提したPDFファイルは、Galaxy Z Fold6の方が圧倒的に見やすい。資料に翻訳をかけ、そのまま端末上で読めるという一連の流れは、Galaxy Z Fold6の魅力を引き出している。


 下書きのような走り書きからイラストを生成する「スケッチアシスト」も、大画面でSペンを利用可能なGalaxy Z Fold6向きの機能だ。似たような機能を備えたタブレットは存在するため、生成AIによるイラスト作成が珍しいわけではないものの、移動中にポケットからサッと取り出して絵を描けるフォルダブルスマホとは相性がいい。同じGalaxy AIでも、大画面でかつSペンを備えたGalaxy Z Fold6なら、ここまでクリエイティブな作業ができるとアピールした格好だ。


●カスタマイズにAIを活用するGalaxy Z Flip6、差別化が今後の課題か


 一方のGalaxy Z Flip6では、同じ通訳機能でも、カバーディスプレイに翻訳した言語を表示できる機能が強調された。Galaxy Z Fold6にも同機能は搭載される他、他社の端末ではGoogleの「Pixel Fold」が真っ先に実装した仕組みだが、縦折りフォルダブルスマホのGalaxy Z Flip6であれば、手に持ったままでも相手との会話がしやすい。一般的なスマホと同程度の軽さで、かつ折り曲げられるGalaxy Z Flip6のフォームファクターを生かした打ち出し方といえる。


 カバーディスプレイが常時露出しているGalaxy Z Flip6ならではのAI活用方法として目を引いたのが、AIによるカスタマイズだ。同モデルではカバーディスプレイの待受けとして表示しておきたい画像を選ぶと、自動的に時刻や日時がレイアウトされる他、エフェクトをかけることも可能。カバーディスプレイを個性に合わせてカスタマイズしやすい、Galaxy Z Flip6の特徴を生かしたAIの活用方法を提案してきたというわけだ。


 また、カバーディスプレイを飾るイラストを、自らの写真から作成できる「ポートレートスタジオ」も搭載されている。これは、写真を元に3Dアニメや水彩画などにした似顔絵を生成する機能のこと。折りたたんだまま画質の高いメインカメラでセルフィーが撮れるのは、フリップ型のフォルダブルスマホを使うメリットの1つ。折り曲げられることや、どのように折り曲げるかをしっかり考え抜き、そこにGalaxy AIを最適化していることがうかがえた。


 実際、サムスン電子はGalaxy AIの搭載によって、スマホの新機軸を打ち出すことに成功している。これは、日本市場でもだ。サムスン電子ジャパンのCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)の小林謙一氏によると、「Galaxy AIをベースにしたGalaxy S24は、われわれの予想をはるかに超えるレベルで多くの方に手に取っていただける結果になった」と語る。各種販売ランキングでも、同シリーズが好調なことは伝わってくる。


 サムスン電子の社長兼MX事業部長のTMロー(盧泰文=ノ・テムン)氏も、Galaxy Unpackedで「Galaxy S24ユーザーの3人に2人は、世界を検索し、発見する新しい方法(かこって検索)やコミュニケーション、言語の壁を取り除く新しい方法(通訳機能)、より簡単に創造し実行する新しい方法(文章生成などその他の機能)を享受している」と語り、同機能がGalaxyシリーズの売りにつながっていることを強調した。Galaxy Z Fold6/Flip 6では、この“勝ちパターン”をフォルダブルスマホに最適化しながら踏襲したというわけだ。


 「Galaxy AIによって世界で最もパーソナルでインテリジェントな“折りたたみ体験”を提供する」と語ったロー氏だが、フォルダブルというフォームファクターを手に入れたことで、Galaxy AIが一段進化したように見えた。とはいえ、既存のモデルで使うGalaxy AIには、精度面でまだまだ改善の余地がある。特に日本語環境で使うボイスレコーダーの文字起こしは、現状だとPixelシリーズのそれに及んでいない。不定期のアップデートで改善はされているものの、実用性を高めるにはブレークスルーも必要になる。


 また、ソフトウェアアップデートを適用した既存の端末とどう差別化を図っていくのかも、今後、課題として顕在化する可能性がある。Galaxy Z Fold6/Flip 6はプロセッサのNPUが大きく性能を上げたため、過去モデルとはAIの処理速度に違いが出る。限界まで性能を必要とする機能であれば、過去モデルへの搭載を見送ることもあるはずだ。ただし、この点がまだ十分訴求できていない印象を受ける。新機種での機能差や性能差をどのようにアピールしていくかは、2025年以降のフラグシップモデルに先送りされた宿題になりそうだ。


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