物価の上昇や増税などによって、より多くの所得が求められる昨今。就職している企業での仕事の他に、副業をおこなう人も少なくありません。
【グラフ】会社員が明日仕事を辞めると…「10ヶ月以内に“詰む”」半数以上
40代女性のAさんも、日中は会社員として働きながら、帰宅後に副業をしているひとりでした。Aさんは副業で順調に収益が出始めた2年前に開業届も出しています。そして、いよいよ副業の収入のみで生活ができるようになったため、会社を退職するのでした。
Aさんは、個人事業主として生活することに不安はあったものの、会社を辞める際にもらえる失業手当もあるので、何とかなるだろうと思っていました。しかし、開業届を出している人が退職した場合は、失業とは見なされないため失業手当を受け取ることができないと役所で指摘を受けます。
20年以上も企業で働き、雇用保険を支払っていたAさんは、失業時に1円も受け取れない状況に納得がいきません。はたして開業届を出している人は会社を退職した際に失業手当を受け取る方法はないのでしょうか。失業手当の受け取りについて、社会保険労務士の鈴木教大さんに聞きました。
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─会社員で働きながら副業をしている方が開業届を出した場合、退職した際に失業手当が受け取れないという実情について、どうすることもできないのでしょうか。
現在は、「雇用保険受給期間の特例」を申請すれば、条件を満たした場合に失業保険を受け取ることが可能です。その条件とは開業した仕事を休廃業した場合です。失業手当の受給期間を延長しておき、もし、休廃業して失業手当が必要になった際に受け取れるという仕組みです。
─将来休業もしくは廃業した時のために失業手当を取って置けるイメージですか。
その通りです。失業手当は通常、退職した日(離職日)の翌日から1年以内が受給期間となります。しかし、「雇用保険受給期間の特例」は、開業した仕事を続けている限り、失業手当の受給期間を最大3年間カウントしないという特例です。つまり、失業手当が受給可能な期間を延長できるため、この期間中に休廃業した場合、失業手当を受け取ることが可能になったのです。
おそらく開業届を提出して副業をしている方は、一定の収入があるため退職を決意されたケースが多いでしょう。しかし、退職後の1年から3年はまだ収入が不安定で、なんらかの保障が欲しい期間でもあります。この期間に、退職時に受け取ることができなかった失業手当を、休廃業のタイミングで受け取れることは大きなメリットです。
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─雇用保険受給期間の特例の申請はどこでできるのですか。
「雇用保険受給期間の特例」は、退職日以降に、開業していた事業に専念し始めた人、開業した人、開業の準備を始めた人が対象となる場合があります。申請はハローワークでできるので、対象となる可能性がある人は、申請を検討してみてはいかがでしょうか。
◆鈴木教大(すずき・のりひろ)特定社会保険労務士。社会保険労務士法人レクシード代表。現実的な解決策や予防措置提案に定評があり、幅広く企業の人事サポートを行っている。ゴルフ、ロードバイク、小型船舶免許など多趣味。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
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