初めての雨レース。宮田莉朋が感じたF2のタイヤ事情「日本での経験とは違う」難しさ/FIA F2第8戦レビュー

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2024年07月17日 12:10  AUTOSPORT web

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2024 FIA F2第8戦シルバーストン 宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)
 2024年FIA F2第8戦シルバーストンのスプリントレースを10位、フィーチャーレースを17位という結果で終えた宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)は「課題の多い一戦になりました」と、第8戦終了後に行われた取材会で振り返った。

 第8戦はフリー走行と予選が行われた金曜日、そしてスプリントレースの行われた土曜日に降雨があった。宮田にとって雨のなかでのFIA F2の走行は、開幕前に行われたバーレーンでのプレシーズンテスト初日、そして第5戦モンテカルロのフリー走行で経験しているものの、レースでのウエットタイヤはこのシルバーストンでのスプリントレースが初めてだった。

 FIA F2ではウエットタイヤが1台につき3セットしか供給されないため、もしフィーチャーレースまでウエットタイヤを使い続ける状況となると、4セッション(フリー走行、予選、2度の決勝)を3セットのウエットタイヤで走ることになってしまう。そのため、フリー走行では計時上10周を走行しているが、プッシュランは2周ほどに留めタイヤを温存することになった。

 また、宮田にとってシルバーストンでの実戦は今回が初めてとなるため、フリー走行で周回を重ねることができなかったことは痛手になるかと思われた。しかし雨が止み、オプションタイヤ(ソフト/レッド)を履いて臨んだドライコンディションの予選を、宮田はポールシッターのアイザック・ハジャル(カンポス・レーシング/レッドブル育成)から0.808秒差の11番手で終えることになった。

 なお、FIA F2のスプリントレースのスターティンググリッドは予選トップ10がリバースグリッドで決定されるため、10番手タイムを記録したアンドレア・キミ・アントネッリ(プレマ・レーシング/メルセデス育成)がポールシッターとなった。このアントネッリのタイムと宮田の差は0.007秒だった。

「予選9番手や10番手とのタイム差を見ると、8番手くらいには入れただろうなと思いました。というのも、僕がアタックに入った際、ターン1からターン5までトラフィックがあり、クリアな状況でのアタックができなかったためです」と、宮田。

「2セット目のタイヤに履き替えて僕がアタックに入ったところで(宮田の少し前を走行していた)ポール・アーロン選手(ハイテック・パルスエイト)がターン1でスピンをしたことがトラフィックの要因になりました。イエローフラッグが振られてしまったので僕はプッシュを止めて、次の周にアタックに臨もうと切り替えていました」

 ただ、宮田がイエロー区間(セクター1)を過ぎた直後にイエローは解除され、宮田の後からアタックに臨んだ7台ほどはそのままアタックに臨んだ。イエローでプッシュを止めた宮田を含む4台ほどはアタック中の車両に道を譲り、翌周にアタックに臨むことになった。ただ、その譲った車両は宮田のアタック時にはトラフィックとなってしまう。

「アタックを終えたみんなはターン1〜4でクールダウンしているので、僕はレコードラインを避けながらアタックするという状況になりました。引っかかった際のロスタイムは0.2秒と、僕の(ステアリング上の)ダッシュボードには出ていたので、個人的にはかなり運がなかったなという印象です」

 その予選で11番グリッドとなった宮田は、土曜日のスプリントレースでFIA F2初のウエットレースに臨んだ。次第にリヤが厳しくなるというピレリのウエットタイヤをマネジメントしつつ、ブレーキ温度の管理にも神経を使いながら、宮田は随所でサイド・バイ・サイドのバトルを見せた。

 スプリントレースは8位までにポイントが与えられるため、3ポジションアップが宮田のひとつの目標ではあった。しかし、序盤から苦戦を強いられ、他車の後退やリタイアで一時は8番手に浮上するも、最終的には10位でチェッカーとなった。

「なんとかポイントは獲りたかったのですけど。乗っていても『なんでこんなにキツいのだろう』と思うほど、タイヤのデグラデーション(性能劣化)やクルマのパフォーマンスも厳しかったですね。それでも、自分のなかでは一生懸命にやったという感じです」と、宮田はスプリントレースを振り返った。

 明けた日曜日のフィーチャーレースは終始ドライコンディションとなった。このフィーチャーレースはスプリントレースよりも周回数が長く、また2種類のタイヤコンパウンドを必ず使用しなければならないというタイヤ交換義務もあるレースだ。

 上位勢の多くはオプションタイヤをスタートタイヤに選んだ。宮田もスタートにはオプションタイヤを希望していたが、チームの判断でプライムタイヤ(ハード/ホワイト)を履いてスタートすることになった。

「シルバーストンでの過去のFIA F2のレースを観て、ドライコンディションであればオプションスタートしかチャンスはないと僕は思っていました」と、宮田。

「フィーチャーレースでは6周目を迎えないとタイヤ交換義務を消化できません。たとえばスタートから2〜3周目にセーフティカー(SC)が入って6周目ごろまで引っ張った場合、FIA F2ではSC中もタイヤ交換義務消化となるので、オプションスタート勢はみんなそこでタイヤを替えるでしょう。ですが、プライムスタートになるとそこでタイヤを履き替えることができないので、損しかありません」

「シルバーストンでのSC導入率を見ても、SCが入る確率はかなり高いとわかっていました。また、オプションタイヤのいい部分は想定では4周ほどしか保たないため、29周のレースのうち27周近くはプライムタイヤで行かないとオプションの旨味も活かせない、という話はチームにもしていました」

 そのため、フィーチャーレースのダミーグリッドについた際に宮田の車両にはオプションタイヤが装着されていた。しかしフォーメーションラップ直前、メカニックがクルマに触れることができる最後のタイミングで、宮田のタイヤはプライムタイヤに付け替えられた。

「もしSCが入った際に、チームメイトとピットストップが被る(ダブルピットストップ)になるのを避けたいからという意図でした」と、宮田は話した。

「それに関してはチームを批判することもありませんし、彼らの考えを尊重します。ただ、どういう経緯があったのかは、第9戦ハンガロリンクの前にファクトリーにも行くので、その際にも話をしようと思います。もったいないレースだったな、というのはありますので」

 21周目終わりにオプションタイヤに履き替えた宮田だったが、「タイヤ交換を終えて、2周くらいしたらもうかなりキツいなという感じでした」と話すように、やはりオプションタイヤの旨味はすぐに消え、終盤はデグラデーションに苦しむ状況となり、ファイナルラップに2つポジションを下げて17位でチェッカーとなった。

「しんどい作戦になっちゃったな、という感じですね。自分の予想どおりに悪い結果になってしまったなと、そんな感じです」

 昨年、全日本スーパーフォーミュラ選手権とスーパーGT GT500クラスでチャンピオンとなった宮田は、国内では巧みなタイヤマネジメントや燃費走行を見せていた。国内王者に相応しい強みを持った宮田までもが苦戦するFIA F2の難しさとはどういうものなのだろうか。

「タイヤが劣化する際にはすぐに劣化する。劣化しないときは劣化しない、というのは日本での経験とは違う点かもしれません。たとえば開幕戦のサクヒール(バーレーン)では、タイヤをセーブして、ここぞという場面でプッシュすればそのとおりにタイヤが“反応”してくれました。タイヤに対してクルマもパフォーマンスがあったからそういうことができたとは思います」

「そこからFIA F2のレースも重ねて、ピレリタイヤに対する学びも経てレースに臨んでいるのですけど……タイヤが思うように“反応”しなくなっているのが現状です。去年のSFやスーパーGTでは少しクルマのパフォーマンスが足りなくても、自分なりに考えてドライビングに反映したことがタイヤにも伝わりました。FIA F2のピレリタイヤは反応してくれる幅がすごく狭い、というのが僕の印象です」

 2024年FIA F2の次戦となる第9戦は、7月19〜21日にハンガリーの首都ブダペストにあるハンガロリンクで開催される。

「ハンガロリンクもまったくの初めてのコースになり、簡単には行かない週末にはなるとは思います。周りのパフォーマンスが上がっていることもあり、自分のクルマのパフォーマンスを上げることにも、しっかりと取り組んでいきたいと思います。難しい状況ではありますけど、予選はトップ10には入りたいですし、ポイントを手にして週末を終えたいです。初めてのコースでも今までの経験を活かして、少ない時間でも自分のベストを引き出せるように、引き続き一生懸命に臨みます」

 2024年シーズンのFIA F2も残すは6戦12レースとなった。宮田の学びと経験が、結果として実を結ぶ日を心待ちにしたい。

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