【角田裕毅を海外F1ライターが斬る】2026年は旅立ちの時に。欲しがられる存在になるため、今の力を維持する必要がある

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2024年07月18日 11:40  AUTOSPORT web

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2024年F1第10戦スペインGP 角田裕毅(RB)
 F1での4年目を迎えた角田裕毅がどう成長し、あるいはどこに課題があるのかを、F1ライター、エディ・エディントン氏が忌憚なく指摘していく。今回は、第10戦スペインGP、第11戦オーストリアGP、第12戦イギリスGPの3連戦に焦点を当てた。

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 マックス・フェルスタッペンはドライバーズ選手権で余裕のリードを築き、レッドブルもコンストラクターズ選手権でフェラーリとマクラーレンにそれなりの差をつけてトップに立っている。そんなレッドブル陣営のなかで、セルジオ・ペレスが行き詰まっていることは痛いほど明らかだ。今の彼は、すべてがうまくいかず、新人のようなミスを犯している。

 カレンダーのなかで最も家から近い場所で行われるグランプリであるため、私はシルバーストンまで出かけて行った。その週末、私が知りたかったことのひとつは、2025年にフェルスタッペンのチームメイトになるのは誰なのか、ということだった。もちろん、6月に発表されたプレスリリースから、ペレスが2026年末までレッドブルとの契約を結んでいることを誰もが知っている。一方で、契約書に書かれた文章にはほとんど価値がないことを知らない者はいないだろう。良い成績を出していれば安全だが、パフォーマンスが低ければ、契約があっても解雇される。

 私がレースチームを所有していたころ、タイトル争いをしたこともあるドライバーをシーズン半ばで解雇したことがある。彼は調子を落とし、集中力を失っているように見えた。さらに、実際は素晴らしいマシンを「あまり良くない」と言い、「ボスはチーム運営の仕方を分かっていない」と私に面と向かってほざいた。大した度胸だ。結局解雇されたがね。それ以前にもクビにした人間は何人もいる。たとえば……はいはい、分かっているよ。私が話さなければならないのは、自分のことではなく、角田裕毅のことだということは。ここからの話が私の素晴らしい見解につながっていくところだったのだが、君は相変わらずそういうことを理解しようとしないのだな……。

 角田はカナダ、スペイン、オーストリアと、3戦連続でポイントを獲得できなかったが、シルバーストンでは再びダニエル・リカルドを圧倒し、3番目に遅いマシンに乗って、1ポイントを手に入れてみせた。なんと素晴らしいパフォーマンスだ。

 さてここからは、君が邪魔したせいで先ほど言えなかった話をしよう。クリスチャン・ホーナーが今すべきなのは何なのか、という話だ。私としては、若き裕毅をペレスの代わりにレッドブルに乗せて、RBの空いたシートにリアム・ローソンを据えるべきだと考える。

 トップ4チームのドライバーのなかで、ペレスが他の7人と同じレベルに届いていないことは明白だ。ホーナーにとっては、シーズン途中でペレスを降ろすのであれば、ダニエル・リカルドを起用することが理想的なのだが、リカルドにはかつての輝きはない。時折光るところを見せるが、大体は角田のパフォーマンスにおよばない。リカルドをレッドブルに乗せたところで、ペレスよりはるかに良い成績を挙げるようなことはないだろう。

 今のレッドブルドライバー4人のなかでは角田が2番目に速い。しかしホーナーは、角田について、いつかテストで走らせるかもしれないとは言いつつ、将来レッドブルでレースをする可能性は暗に否定した。ホーナーは、角田が2025年シーズンを終えた後、ホンダのもとに戻ることになれば、重要な情報がホンダに伝わってしまうかもしれないと警戒しているのかもしれない。だが私が思うに、ホーナーは、単純にヘルムート・マルコが称賛するドライバーを自動的にブラックリストに入れ、それ以外のドライバーをお気に入りとして扱っているだけなのだ。ローソンとアイザック・ハジャルが控えていることを考えれば、角田は2026年に向けてレッドブル関連以外の、競争力のあるチームを探さなければならないだろう。

 まだ2025年のラインアップがすべては確定していない時期ではあるが、角田のマネジメント陣営は、今が2025年の7月であるかのように、2026年に備えて行動するべきだ。角田はこれからもリカルドに勝ち続け、感情を抑え、今年ここまでやってきたような走りを続けて、他チームが関心を持つようなかたちで、自分をショーウインドウに飾らなければならない。そうすれば、オファーは届くはずだ。万が一、フェルナンド・アロンソと角田がペアを組むことが実現したら、どれほど素晴らしいだろう。ふたりならアストンマーティン・ホンダのパフォーマンスを高めることができる。考えただけでわくわくするではないか。

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筆者エディ・エディントンについて

 エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。

 ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。

 しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。

 ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。

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