DRAGONが全日本F3/SFライツ参戦200戦を達成。ライツへの思いとこれからの“夢”

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2024年07月25日 22:20  AUTOSPORT web

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全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第4大会の第10戦で参戦200戦を達成したDRAGONとチームメンバー
 全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦の併催として、7月19〜21日に静岡県の富士スピードウェイで開催された全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第4大会。この最初のレースとなった第10戦で、マスタークラスを戦うDRAGON(TEAM DRAGON 324)が全日本F3選手権/スーパーフォーミュラ・ライツを通じて参戦200戦という偉業を達成し、第11戦のレース後には、シリーズを運営する一般社団法人SFLアソシエーションから表彰された。DRAGONはスーパーフォーミュラ・ライツ公式ホームページのなかで、200戦達成について語っている。

 DRAGONは1967年生まれ神奈川県出身。B-MAX株式会社(2023年に屏風浦工業から社名変更)の代表を務める会社経営者である一方、モータースポーツ、特にフォーミュラカーのレースに情熱を燃やし続けている。

 そんなDRAGONは、ポルシェカレラカップ等のレースに参戦していたが、2008年のリーマンショックをきっかけに、フォーミュラでの活動に切り替えた。「F1や全日本F3000などを見ていたこともあって、フォーミュラが好きだったんです」とDRAGON。レーシングカートの経験はなかったが、スーパーFJに乗りフォーミュラの魅力にのめり込むと、2013年には全日本F3選手権のF3-Nに挑戦を開始した。

 以降、DRAGONは一貫して全日本F3選手権、全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権に挑戦を続けてきた。2017年には念願のF3-Nチャンピオンを獲得。シャシーが共通になり、マスタークラスが設けられてからも2019年に初代チャンピオンを獲得すると、2021年にも王座に輝いた。

「フォーミュラで走ることに楽しさがありますね。レーシングカートも乗ったことがなかったので。当然、やるならちゃんとやろうと思い、スーパーFJで3年間きちんと基礎を学び、JAF-F4にもスポットで何戦か出て。当時、全日本F3選手権にはNクラスがあり、選手権として確立していたこともあり、出場することになりました」とDRAGONは参戦し始めた頃を振り返った。

「当時はホンダさんやニッサンさんの育成ドライバーも(F3-Nに)出場していましたから、チャレンジし甲斐がありました。年齢のこともあり、もちろん勝つ、勝たないはありませんでしたが、若手に対し何秒以内で走ろう……等テーマをもって取り組んでいました」

 フォーミュラに挑み始めたのが42歳。現在は57歳になった。

「もう15年もフォーミュラをやっていると思うと長いですね(笑)。Nクラスがなくなり2018年から最新の車両で戦うことになりましたが、体力の厳しさに対して、トレーニングも増やすようになりました。ストイックな生活をするようになりましたね。フォーミュラに乗るようになってタバコも止めましたし、生活はぜんぶ変えました」

 そんな挑戦はついにF3/SFライツ挑戦200戦という数字に繋がった。当然、F3/SFライツは若手の登竜門という位置づけが強く、長いドライバーでも3〜4年の参戦が通常。年間6〜9ラウンドで1大会あたり2〜3戦が開催され、多い年では20戦、少ない年でも15戦が開催されるのが全日本F3/SFライツだが、200戦という数字はこのクラスのフォーミュラではなかなかない。

「たぶん世界最強です(笑)。こんなことを200戦もやるドライバーは他にいないと思います」とDRAGONは笑った。

「スポーツカーのワンメイクレース等であればいるかもしれませんが、育成カテゴリーにこうしてオジさんが参戦すること自体が異例な話ですよね(笑)。歓迎されているかはさておき、長くやっているだけいろんなことを分かっているつもりです」

■「やれる範囲でもう少し」飽くなき挑戦は続く
 ドライバーとしての挑戦を続ける一方で、DRAGONにはB-MAX RACING TEAMの組田龍司総代表としての顔もある。2024年で言えば、B-MAX RACING TEAMとしてスーパーフォーミュラ、SFライツ、FIA-F4に挑戦。ライツでメンテナンスを手がける台数は7台にも及ぶ。

「若手の夢を共有する、支えることに情熱をもっています。以前はメーカーの育成プログラムをやっていたわけではなかったので、才能があってもメーカーの育成から外れてしまったドライバーを再生するというところに重点を置いていました」とDRAGON。

「競技なので、パフォーマンスがいちばん大事だと思っているんです。ただ素行が悪かったりと、そういう理由で外されていたドライバーがいますよね。いちばんの存在は関口(雄飛)でしたが、当時からすごく速かった。“打倒ワークス”ではありませんが、そういう人たちと戦うこと、夢を共有することがすごく楽しいんですよね」

 DRAGONにとっては、“夢”の共有こそキーワードのひとつだろう。その時々で「レベルの違いこそあれ自分が乗っていると、何が起きているのかなど、ドライバーの気持ちが分かりますよね」と自らがステアリングを握ることの大切さを語った。

「スーパーフォーミュラ・ライツのレベルだと、ドライビングがうまくても心構えがまだ子どもだったりするので、そういったところを修正しながら、なんとかプロに押し上げたい……ということを一生懸命やるようになった感じです」

「チャンピオンを争う若手ドライバーたちを、どうやったらチャンピオンにできるかの戦略、進め方は、一緒にやっているからこそ分かると思います。今年はクルマが大きく変わりましたが、一緒に乗っているので『今はこうだよね』、『こういう難しさがあるよね』ということが共有できるので、乗っていないよりも乗っている方がいいかな、と思っています」

 2024年はマスタークラスに参戦するライバルも増え、第4大会の富士では激しいバトルも演じられた。いずれもメンテナンスを手がける車両だが、今季からはデータ共有も「禁止」にしており、チーム内のルールを作りながら戦いを楽しんでいるという。

 今後いつまで続けるのかの問いについて「キング・カズ(サッカーJFLアトレチコ鈴鹿クラブの三浦知良)が引退したら僕も引退しますよ。同い年なので(笑)」と冗談めかしたが、「今のスーパーフォーミュラ・ライツは体力面でもすごく厳しいので、『もうやめようかな』と思いながら毎年やっています」という。しかし、マスタークラスの戦いは楽しい。近年覇を競う今田信宏は年上だ。「やれる範囲でもう少しやろうと思っています」とDRAGON。

 そしてもちろん、チーム代表としても大きな夢がある。

「いまはFIA-F4も含めてホンダさんから若い子どもたちをお預かりする大事な立場を任されていますので、しっかり取り組んで、スーパーフォーミュラ・ライツを経由してスーパーフォーミュラにドライバーを送り出したいと思っています」

「またチームとしての夢ですが、我々のチームから巣立ったドライバーがスーパーフォーミュラをさらに超えて、F1やインディカーなどで活躍する姿を見たいと思っています。国内で頂点を極めるという目標はもちろんですが、世界レベルのドライバーを自分のチームから輩出するのも夢のひとつですね」

 これまでも多くのドライバーがチームで育ち、国内外のトップカテゴリーで活躍している。そしてそんなドライバーたちとともに200戦を戦ってきたのがDRAGONだった。SFライツ/FIA-F4の実況を務めるサネカタイッセイさんの言葉を借りれば『ミドルフォーミュラのキング』と呼ばれる男の挑戦は、まだまだ続くことになりそうだ。

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