キヤノンから多くの人が待ち望んでいた新製品が2つ、正式に発表された。1つは、5月に開発発表だけされていたEOS Rシリーズ初の「1」モデル、「EOS R1」だ。
ソニーが「α1」、ニコンが「Z9」とフラッグシップを投入した時期、キヤノンが用意したのは「EOS R3」と、あえてフラッグシップの型番を付けなかった。今回はとうとう「1」である。
そしてもう1つ、同時に発表されたのが「EOS R」の主力モデルの1つでありながら後継機がなかなか出なかった「EOS R5」の新型「EOS R5 Mark II」だ。R5と同時に出たR6は早々に「Mark II」を出していたので、R5を狙っていた人はやきもきしていたに違いない。
同時に発表したのには意味があった。同じ新技術を多く搭載しているのである。同時に開発されていたということだ。今回は、実機を触る機会があったので、ちょっと感想がてら解説を。
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●EOS R1もR5 Mark IIも裏面照射積層センサーを採用
EOS R1は何はともあれ「EOS-1」の系譜を継ぐフラッグシップモデル。かつて、EOS-1が高速AFと高速連写で高い評価を得て以来、EOSの「1」はこの2つが最優先だったといって過言じゃないだろう。
そして新型の裏面照射積層センサーを開発。
グローバルシャッターではないものの、電子シャッター時でも「EOS-1D X Mark III」(もちろんメカシャッター)と同等のローリングシャッター歪みを実現……つまり、一眼レフで撮るのとEOS R1の電子シャッターで撮るのはまったく変わらんよ、ということだ。
電子シャッター時は最高で秒40コマで、最大20コマのプリ連続撮影が可能となっている。
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そのために「DIGIC X」の前段に「DIGIC Accelerator」を置き、より高速でハイレベルな処理が可能になったそうな。もちろんAFも強化、トラッキング性能が上がった。
ちなみに、「EOS R5 Mark II」も裏面照射積層センサーを搭載。
こちらは画素数が多いこともあって、EOS R1ほど高速ではないが、それでも歪みはEOS R5の約40%に抑え、デフォルトで「電子シャッター」を使う設定になってるそうな。
EOS R5 Mark IIの連写は秒20コマ。そこにちょっとR1との差が出ている。これで、EOS R1、R3、R5 Mark IIと3モデルが「積層センサー」になった。
AFはどちらもトラッキング性能が向上したほか、人物に関するAFがすごく強化されている。
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ユニークなのは「アクション優先」AF。主要な動きをしたものを優先して合わせにいく機能で、ターゲットはスポーツだ。
アクション優先をオンにし、対象となる競技を選ぶ。今のところ「サッカーとバスケットボールとバレーボール」だ。ラグビーやアメフトには今のところ未対応。
多くの人がファインダー内に出たり入ったりする集団球技のため、よりニーズがあるのだ。
また、登録した人物を優先して追う機能も付いた。これもまたスポーツなど多くの人が同時にファインダーにはいってくるようなとき、撮りたい人物に優先して合わせてくれるもの。
スポーツ撮影に強いEOS-1という伝統を強化し、より実用的な機能を開発してきたな、と感じる
●AIを駆使した機能にも注目
さらに、両者共通の強化点として3つ挙げたい。
1つは「カメラ内アップスケーリング」。
ディープラーニング技術を使った機能で、撮影した写真に対して、縦横それぞれ2倍のアップスケールができる。高解像の写真を作れるほか、トリミングしてアップスケールすれば、強力なデジタルズームもできる感じか。これはJPEG画像に対してもOk。
もう1つ、ディープラーニングの応用として、ノイズを抑える「ニューラルネットワークノイズ軽減」も搭載。こちらはRAW現像時に行うものだ。
どちらも処理に時間はかかるが、より高い画質を得られるわざで、これを「カメラ内」で行えるようにしたのが特徴だ。
最後は「視線入力AF」。
EOS R3の同等機能より視線検出の読み出し速度も上がり、メガネをかけたときの検出精度も高くなっているというので、ぜひ試してみたい。
これでEOS R1/R3/R5 Mark IIと3モデルで視線入力が可能になった
●EOS R1はフラッグシップ機らしい頑丈さ
EOS R1のデザインはEOS R3を強化した感じだ。
ただフラッグシップ機らしく、メディアはCFexpress Type-Bのデュアルスロットに(EOS R3はCFexpress Type-BとSDのデュアルだった)。
EVFの画素数は966万ピクセルに増え、OLEDのサイズも大きくなり、見やすくなった。
細かいところでは表面のテクスチャパターン。EOS R3のドットパターンから変更された。構えてみると、確かにグリップしやすい。
全体としては、電子シャッターメインでも常用できるレベルとなり、AFや連写、そして堅牢性に優れた過酷な環境でも過酷なスポーツの撮影もこなすフラッグシップ機になったということだ。
発売は11月の予定だ。ちょっと先。キヤノンオンラインショップでの予定価格は、税込みで108万9000円。いわゆる100万超えになった。
●「EOS R5 Mark II」の重量は「EOS R5」とほぼ同じ
EOS R5 Mark IIは前モデルが2020年発売でかなり間が空いたこともあり、レベルアップの幅がすごく大きい。
約4500万画素の高画素を保ったまま、裏面照射型積層センサーで電子シャッターの常用を可能にし、AFも賢く速くなった。
EOS R1に迫る性能を持っているのに、ボディは小型でコンパクトなのが特徴だ。
基本デザインはEOS R5を継承している。
ちなみに、質量は約746gでEOS R5より8gだけ重い、というかほぼ同じ。
今回の製品発表では動画撮影性能への言及が多かった。
8K/60+ RAWや4K/60p SRAWのカメラ内部記録にも対応。
CINEMA EOSとの併用もしやすくなったようだ。
ユニークなところでは冷却ファンを内蔵した縦位置グリップというオプションも用意されているところか。EOS R5 Mark IIの底面には冷却用のスリットがあり、冷却ファン内蔵のグリップと組み合わせることで長時間撮影時の温度上昇を軽減できるという仕組みで、動画撮影時に威力を発揮する。
その他、通常のバッテリーグリップとEthernet端子付のバッテリーグリップも用意されている。
何はともあれはやく実機を使って撮影してみたい2機種だ。
EOS R1はもう完全にプロ用の、特にスポーツなど高速連写が必要なニーズ向けのフラッグシップ機なので誰でもって感じではないけれども、EOS R5 Mark IIはミドルクラスのハイエンド機……いや、十分なハイエンド機。EOS R1と共通ともいえる高性能といい、裏面照射積層センサー搭載で4500万画素という高画素を維持したところといい、速さと画質をいい感じに兼ね備えたかなりの高性能機だ。
キヤノンオンラインショップでの予定価格はボディのみで65万4800円(税込)だから、円安とはいえ、価格も含めてハイエンド機だよね、とは思うけど、静止画から動画までマルチで活躍しそうなカメラなので要注目である。
なお、やはり待っていた人は多かったようで、予約受付を始めてすぐに「商品の供給状況についてのお詫び」のページに両モデルの名前が掲載された。通常よりも納期が遅くなる可能性があるという。
キヤノンオンラインショップの販売ページには「発売日にお届けできない可能性があります」と書かれている。購入を検討している人はそれなりの覚悟したほうが良いかもしれない。
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