「スパイスとハーブがあれば料理はもっとおいしくなる」 水野仁輔が教える、自宅とBBQでの手軽な使い方

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2024年08月04日 13:00  リアルサウンド

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スパイスやハーブの魅力をつねに伝え続ける水野仁輔氏
■今までの料理を劇的に変える、スパイス&ハーブの底力

  昨今、街を歩くとインド料理やタイ料理の店を至るところで目にするようになった。これらの料理に共通するのが、スパイスとハーブを使用しているため独特の香り、色み、そして辛みがあることだ。スパイスとハーブが効いた料理は、一度口にすると病みつきになる人が続出。WEBメディアや雑誌、テレビで特集が組まれるほどのブームになっている。


  そんなブームを牽引する一人、水野仁輔氏が『もっと自由に、もっと楽しく!スパイス&ハーブの教科書』(ナツメ社/刊)を刊行した。初心者であっても、スパイスとハーブの奥深さを感じられるだけでなく、実際に料理に使うときのコツまで徹底的に解説し、さらには水野氏おすすめの世界中のレシピも紹介している保存版の内容だ。


  世界各国を旅して歩き、スパイスとハーブを活かした料理を探求し続けている水野氏に、自宅で手軽に楽しむスパイスとハーブの使い方と本書の魅力を聞いた。


■スパイス&ハーブ、ブームが起きている背景は?

――近年、日本でもスパイスを専門としたレストランなどが多く登場していますし、メディアでもそうした料理の特集が定番になっています。


水野:はい、どんどん増えていますね。でもまだ日本人はスパイスやハーブに抵抗がある人が多くて、レストランでは食べていても、自宅の料理ではカレー以外は手を出しにくいイメージがあるようです。でもスパイスとハーブって壁みたいなのがあって、それを乗り越える経験をしてしまうと、不思議と急激に身近になるんです。例えばブルーチーズも最初は苦手だったけど、病みつきになる人がいますよね。クセがあると思われる食材は、そうした傾向があると思います。最近ではそんな壁を越えた人が増えていて、ブームというより、もはや定番になりつつあると実感してます。


――スパイスを使った料理といえば、カレーや麻婆豆腐が有名ですよね。ハーブといえばどんな料理がありますか。


水野:タイ料理によく使われるパクチーが有名ですよね。現在では、どんな料理にもスパイスやハーブが取り込まれるようになりました。ブームを牽引しているレストランでは、こんなものにもスパイスやハーブを使っているのかと、驚くような料理が登場しています。


――そもそも水野さんがスパイスに興味を持ったのは、カレーがきっかけだったそうですね。


水野:はい。僕が本格的にスパイスにハマって、意識して料理を作るようになったのは20代の頃です。いろんなスパイスを集めてカレーを作っていると、次第に海外を旅したくなるんです。それからインドを皮切りにあちこちを回りました。そうすると、どの国に行ってもスパイスやハーブが親しまれていて、いろんな料理がある。これが本当にどれもおいしくて、より深く探求してみようと思ったのです。


■素材の味を引きたてる! スパイス&ハーブを使った手軽でおいしいおすすめ料理

――スパイスと聞くと、カレーに用いるイメージが強すぎるせいか、他の料理にどう使えばいいのか迷う人も多いかと思います。


水野:初心者の方は、『もっと自由に、もっと楽しく!スパイス&ハーブの教科書』にレシピが載っている「キャベツの蒸し焼き」を一度作ってみてほしいですね。この料理をおすすめするのは、本当に僕が大好きだから(笑)。自宅でしょっちゅう作る料理なんです。本では写真映えするような見た目に作っていただいたのですが、家ではキャベツの葉っぱを手でむしってフライパンで蒸し焼きし、クミンを加えるだけ。本当に簡単でおいしいです。


――こんなに簡単でシンプルなのに、クミンが合うのですか。


水野:相性抜群ですよ。理由は、スパイスもハーブも素材の味を香りで引きたてるものだからです。クミンの刺激で、キャベツの甘みが一層引き立つ効果があります。


――この「かぼちゃの天ぷら」は甘くておいしそうですね。


水野:シナモンパウダーを効果的に使っているレシピです。かぼちゃの甘みや風味をシナモンが増幅させる働きがあります。かぼちゃもシナモンパウダーも両方甘みがあるので、相乗効果が得られておいしいんですよ。


■ハーブを食材となじませれば香りが引き立つ

――「トマトのバジルサラダ」はワインと合わせたら、凄くおいしそうですね。


 


水野:いちおしのレシピです。トマトのエキス、それにバジルの香りとチーズをなじませることにこだわっています。しっかりと混ぜることでそれぞれの素材の旨みがミックスされて、まるで高級イタリアンレストランのような絶品なんです。


――バジルの葉をつぶしているのがポイントなのでしょうか。


水野:バジルは一般的には、トッピング感覚で最後に料理の上に散らすことが多いですよね。実は、それではもったいないんです。バジルはつぶしたり、たたいたり、ちぎったり、揉んだりすることで香りが立ちますから。その香りがメインの食材となじむと、一気に味わいが増しますよ。


――パクチーもなじみ深いハーブですが、おすすめのレシピはありますか。


水野:これも本書にある「トマト卵炒め」です。パクチーは香りが強いので、加熱しても風味が残り、いいアクセントになります。卵炒めって、まろやかな料理ですよね。そこにパクチーが入ると、よりまろやかさが増幅されるのです。ハーブがメインの素材の味を引き立たせてくれるおすすめのレシピです。


■スパイス&ハーブはアウトドア料理にピッタリ!

――どれもおいしそうなレシピを紹介していただきました。本書にはもっと多くのレシピが掲載されていて、読んでいてとても楽しいですし、どれも本当においしそうです。今すぐ作ってみたくなりますね。


水野:手軽にできるレシピが多いです。先ほど紹介した4つを全部作って、どれもハマらなかったら、少し休憩してください(笑)。どれか1つでもおいしいと思ったら、他のレシピを作ってみてくださいね。


――どんなシチュエーションで料理するのがおすすめですか。


水野:アウトドアやキャンプ、仲間とのパーティに向いていると思います。自宅で一人でももちろん楽しめますが、人が集まった開放的な場で作ると、いろんな料理にチャレンジしやすい。


――誰かと一緒のほうが、新たなスパイスやハーブとの出会いや魅力を発見するチャンスになるかもしれませんね。


水野:初めて作る料理ってやはり警戒心があると思います。だけど気の合う仲間となら、チャレンジもしやすいし、友人に「うまい!」と言われたらやっぱり作った者としては嬉しい。それに相乗効果みたいなのがあって「うまい」と誰かがなると「お、これはうまいのかな」と仲間たちのハードルも下がる(笑)。みんながスパイスやハーブ料理を楽しむきっかけになります。


■目指すは自分だけの味−−ミックススパイスの魅力

――紙面ではコラムも読み応えがあります。どれもスパイスとハーブの雑学が満載です。中でもミックススパイスについて、わかりやすく書かれていますね。市販のミックススパイスはたくさん販売されていて、いつも悩んでしまうのですが購入する際のポイントがわかります。


水野:ミックススパイスは自分でゼロからミックスすると大変なので、まずは市販品を買うのがベストです。僕が常備しているのが、ドライハーブが多く入っている「クレイジーソルト」。これを超えるものって、なかなかないんですよ。ハーブはフレッシュなものほど香りがいいというイメージがありますが、乾燥させると香りの質が変わります。ミントも、パクチーも、ローズマリーも、乾燥すると香りが穏やかになるんです。そして、そんなドライハーブ同士がミックスされると、汎用性の高い香りとなり、万能なミックススパイスになる。


――乾燥させているからこそ、楽しめる香りがある。スパイスとハーブは奥が深いです。


水野:それに「クレイジーソルト」はその名の通り主体が塩なので、とても汎用性がある。塩に香りをつけたものなので、普段から塩のかわりとして使ってます。塩を使いたいと思ったら、「クレイジーソルト」にしてみる。そんな気軽な感じで使うことができるので、初心者の入口としても最適なのです。


――他にもおすすめのミックススパイスはありますか。


水野:「エルブ・ド・プロヴァンス」です。南フランス系のドライハーブのミックスです。これは「クレイジーソルト」と違って塩が含まれていないので、塩と一緒に使ってもいいでしょう。おすすめは、バーベキューで肉を焼いているときに振りかけること。多めに振りかけたとしてもバーベキューだとスパイスが落ちるので、ちょうど良い塩梅になりやすい。野菜でも、魚でも、シンプルに焼いたものに「エルブ・ド・プロヴァンス」を振りかけると、普段とは違う香りと美味さを実感しやすいと思います。


■スパイスドリンク、どう楽しむのが正解?

――最近はスパイスドリンクを扱うお店も増えました。居酒屋のメニューにもなっているほど、ブームになっていると思います。


水野:スパイスもハーブも嗜好品なので、ルールがあるようでないんです。だから開発者や作り手の好みをダイレクトに出せて、自由度がとても高い。逆にいえば失敗が少ないので、アルコールでも、ノンアルでも、スパイスドリンクが広まっているのでしょう。


――スパイスドリンクの魅力はどんなところにあるのでしょうか。


水野:まず、香りが入ると風味が豊かになる。ソフトドリンクならよりおいしく感じられると思います。アルコールもスパイスを少し加えるだけで、まったく別物になりますよ。例えば、普通のジンやウォッカ、甲類の焼酎を買ってきて、スパイスやハーブを何種類か入れて置いておくだけ。そのまま3日くらい経てば、良い香りがつきます。1カ月くらい寝かせておいたならば、のけぞるくらいの香りになる。これをグラスに注いでソーダやジントニックで割ると、バーで出てくるのと遜色ないレベルの味になりますよ。


■余ったハーブの活用法

――本格的な味わいなのに、今すぐ作れそうですね。


水野:ハーブの活用方法としても使えます。他にもあまったハーブを適当にポットに入れて熱湯を注ぎ、1〜2分おくだけでハーブティーもできます。油にハーブを突っ込んでおくと、ハーブオイルが作れます。配合の正解は特にないので、気軽にやってみてはいかがでしょうか。


――水野さんの本を読んで、スパイスやハーブを日常に取り入れてみようと考える読者が増えそうですね。


水野:この本の「パート3」には、世界のスパイスとハーブ料理のレシピを紹介したページがあります。ここは特に気合いを入れていて、224ページ中、80ページくらい割きました(笑)。いずれも、世界各国で長きにわたって親しまれてきた料理を厳選しています。写真がとても良くて、どれもおいしそうに思えます。ぜひパラパラめくりながら読んでほしいですね。そして、これはおいそうだと思ったものを、ぜひ作ってほしいです。料理が苦手な人は、周りにいる料理好きに、「これを作って」とお願いしてもいいかもしれません(笑)。


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