いつの時代もホラーは根強い人気があるジャンルだが、ここ最近のマンガ界ではちょっとした変化が起きている。おどろおどろしいホラーにさわやかな青春要素が入り混じったホラー×青春マンガの名作が、次々と生まれているのだ。今回はそのなかでも注目の作品を3つ取り上げ、紹介していきたい。
まずは椎名うみによる『青野くんに触りたいから死にたい』。2016年12月から『月刊アフタヌーン』(講談社)で連載が行われており、2022年にはWOWOWにて実写ドラマ化もされた。
恋に憧れる天然な女子高生・優里は、隣のクラスの“青野くん”と付き合い始め、有頂天になっていた。しかし付き合って2週間で青野は亡くなってしまう。そして悲嘆に暮れる優里の前に青野の幽霊が現れたことから、奇妙な物語が幕を開ける……。
こうした設定だけ見ると、“触れたいのに触れられない”関係を描いた切ないラブストーリーのように見えるかもしれない。だがそれとは別に、至るところで顔を覗かせる狂気と恐怖も大きな魅力となっている。
優里は交際期間がたった2週間にもかかわらず、青野を激情的に愛していて、何の躊躇もなく自分もこの世を去ろうとする。そしてその一方、青野は幽霊になっても紳士的でやさしいが、時折“黒青野”という別人格に変貌。不気味で恐ろしい一面を見せるのだ。
|
|
甘いロマンスと見せかけて、しっかりとしたホラー展開を味わわせてくれるのが同作の魅力と言えるだろう。
またさわやかな青春とのギャップという意味では、『光が死んだ夏』も負けていない。同作はモクモクれんが『ヤングエースUP』で連載している作品で、『このマンガがすごい!2023』にてオトコ編ランキング第1位に輝いているほか、アニメ化も発表されている。
主人公のよしきは、山のなかで1週間行方不明だった親友・光が無事に戻ってきたことに安堵するが、実はその“中身”は別のナニカにすり替わっていた。しかし光を失いたくないよしきは、偽物だと分かっていながら、傍にいることを選ぶ。そして 少年とナニカのあいだで、歪で濃密な交流が始まる。
自然豊かな集落で少年たちが繰り広げる日々は、どこかノスタルジックで感傷的だが、時折それを吹き飛ばすほどに強烈なホラー展開が挟まれる。ほかのマンガでは一切味わうことができない、唯一無二の読後感だ。
最後は、コノシマルカが手掛けるオカルト×ボーイ・ミーツ・ガールマンガ『写らナイんです』。今年3月から『週刊少年サンデー』(小学館)にて連載されており、8月17日には単行本の1巻が発売される予定となっている。
|
|
同作の主人公・黒桐まことは、生まれもっての超霊媒体質。自分の意志とは関係なしにこの世ならざるものを引き寄せてしまうため、まともな青春を送ることに憧れていた。そんなある日、オカルト部の部員である少女・橘みちるに熱心な勧誘を受け、人生が一変することに……。
黒桐の周囲ではさまざまな心霊現象が起きるのだが、それがことごとく橘によってキャンセルされるのが同作の面白さ。というのも橘はオカルト好きだが霊感が一切なく、触れるものを一瞬で成仏させる最強の除霊体質なのだ。黒桐は橘のおかげで、人生で初めて“普通の青春”を送れるようになる。
ギャグ寄りの作品ではあるものの、ホラーマンガらしい描写がそれなりに多く、黒桐と橘の関係についても見どころたっぷり。ある程度ホラーが苦手な人でも、問題なく楽しめるだろう。
夏といえばホラーの季節。酷暑が予想される今年のお盆は、さわやかで背筋が凍るホラー×青春マンガの数々に触れてみてはいかがだろうか。
|
|
|
|
Copyright(C) 2024 realsound.jp 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。