関東学院大学の意外な魅力…小泉進次郎氏「学歴ロンダリング」批判は的外れ

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2024年08月25日 11:00  Business Journal

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関東学院大学(「Wikipedia」より/あばさー)

 9月の自民党総裁選挙へ立候補する方向で検討を進めていると報じられている小泉進次郎氏。小泉氏の出身大学である関東学院大学がにわかに注目されているが、どのような特徴があり、難易度はどれくらいなのか。また、小泉氏は同大学卒業後に米国コロンビア大学大学院に留学し、修士号を取得しているが、かねてより一部では「学歴ロンダリング」を指摘する声もある。この経歴に、ことさらに議論を呼ぶような要素はあるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。


 自民党総裁選の立候補者は乱立の様相を呈している。すでに立候補を表明している小林鷹之氏に加え、石破茂元幹事長、上川陽子外務大臣、河野太郎デジタル相ら計10人以上が立候補するとみられている。なかでも有力候補と目されているのが小泉進次郎氏だ。2009年に衆議院議員に初当選した当時から将来の首相候補として高い人気を誇り、直近のマスコミ各社の世論調査でも次期自民党総裁にふさわしい人物として1位となっている。


関東学院大学の基本情報

 その小泉氏の出身大学は関東学院大学 経済学部 経営学科(2017年に経営学部として独立)だ。1884年(明治17年)に横浜山手に米国バプテスト伝道協会によって設立された横浜バプテスト神学校(のちの東京学院神学部)を源流とし、1949年(昭和24年)に設置。法学部・経済学部・理工学部・看護学部をはじめ計11学部13学科からなる総合大学で、在籍学生数は約1万1000人。神奈川県横浜市の金沢八景、関内、金沢文庫にキャンパスを持つ。


 サッカー部は毎年のように卒業生がJリーグのクラブに加入する強豪として知られるほか、工業専門学校と経済専門学校を母体として設立されたという経緯から産官学連携に積極的なことでも知られている。


 主な就職先としては、経営学部をみてみると、以下となっている(公式サイトより)。


●主な就職先(過去3年の実績)
本田技研工業、イトーキ、立川ブラインド工業、伊藤ハム米久ホールディングス、大東建託、日立建機日本、リコージャパン、イオンリテール、崎陽軒、星野リゾート、東海旅客鉄道、サイバーコ厶、パナソニック、アサヒビール、野村不動産パートナーズ、積水ハウス、アイリスオーヤマ、ビームス、東京信用保証協会、筑波銀行、神奈川銀行、横浜信用金庫、横浜農業協同組合、宇都宮市、静岡市、警視庁、神奈川県警察本部、会計検査院など


 難易度はどうなっているのか。大手予備校・河合塾が公表している「2025年度 入試難易予想ランキング表(私立大)」の「経済・経営・商学系」では、経営学部の偏差値は40。ランクとしては、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)、日東駒専(日本・東洋・駒澤・専修)よりは下、大東亜帝国(大東文化・東海・亜細亜・帝京・国士館)と同クラスといえる。


 関東学院大学の特徴とは何か。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏はいう。


「小泉氏が卒業した関東学院大学経済学部経営学科は2017年に経営学部として独立しています。現在は11学部、学生数約1.1万人の大規模校となっています。難易度は小泉氏が卒業した04年時点では河合塾公表の偏差値で42.5でした。その後、コロナ禍前は50.0前後まで上がります。これは首都圏私大が激戦となった影響です。24年現在は37.5〜42.5となっています。難易度が20年前と同程度になったのは、コロナ禍以降、年内入試(総合型選抜、学校推薦型選抜)に各私大ともシフトするようになった影響です。


 神奈川県内では中堅私大として県内の高校からは評価されています。横浜バプテスト神学校を源流にもつミッション系です。初代院長の坂田祐が第1期生の入学式で述べた言葉「人になれ 奉仕せよ」が現在も校訓として残っています。ミッション系ながら、あまりそのイメージが強くないことで損をしてきた大学、ともいえるでしょう。一時はそれで学生集めが低迷していました。


 ただ、大学改革は進めていて、17年には小田原キャンパスだった法学部を横浜・金沢八景キャンパスに移転。さらに23年には横浜・関内キャンパスを開設し、法学部、経営学部、人間共生学部(コミュニケーション学科)の修学キャンパスとなっています。横浜・金沢八景キャンパスは社会学部、経済学部など9学部の修学キャンパスとなっています。関内キャンパスは立地が良いので今後、人気となっていきそうです。


 表面工学や介護用の溶けないアイスクリーム、ピッチングマシーンなど意外なところで研究実績があり、22年度の特許権実施等件数(文部科学省調べ)では7位の774件(私立大学では1位)、収入は約1.3億円で11位(私立大学では2位)でした」


 都内の私立大学関係者はいう。


「近年の新卒就職市場が売り手市場になっていることも影響しているかもしれませんが、就職実績は悪くはないようなので、就職支援課による手厚いサポート体制が整備されていると見受けられます。これは、上位大学ではないゆえに関東学院大学が抱く危機意識がプラスに作用していると考えられます。


 キャンパスのロケーション的に周囲に新宿や渋谷、池袋のような若者を誘惑する繁華街も少ないため、学生がその気になれば仲間と一緒に何かに打ち込んだり、公務員試験や資格試験などの勉強に集中できる環境が整っている点も魅力といえるでしょうし、そこで培った経験は就活にも役立つことになります。何か明確な目標を持って大学生活を送りたいという学生にはおすすめといえます」


学歴という意味では「かなり高い」

 小泉氏は2004年に関東学院大学を卒業後、米国コロンビア大学大学院政治学部に留学し、06年に修士号を取得。同年に米国戦略国際問題研究所(CSIS)に研究員として就職している。この経歴について、かねてから一部では「学歴ロンダリング」との声もあった。


 「コロンビア大学はアイビーリーグの1校で、その大学院ともなれば世界中から優秀な学生が集まってきています。小泉氏は同大学院で日本政治を研究しているジェラルド・カーティス教授のもとで政治学を学び、父の跡を継ぎたいと希望しました。首都圏の中堅クラスの大学からアイビーリーグの大学院に進学するわけですから、学歴ロンダリングといえばそうでしょう。アメリカの大学・大学院の場合、大学での成績や学力試験だけで合否が決まるわけではありません。推薦やその学生の将来性なども大きく影響します。


 小泉氏の場合、当時、父親は現職の総理大臣でした。日本政治研究をする側からすれば、受け入れるに相当する、と考えるのが当然です。合格には英語力向上(TOEFL600点以上)が必要だったと思われますが、TOEFL600点以上は実用英語検定1級に相当する難易度です。『学歴ロンダリング』『コネを使った』といった批判があり、そう言われても致し方ない部分はあります。ただ、英語力を大きく向上させたことは事実ですし、修士号を取得したのも事実です。入学の経緯はどうあれ、努力してきた点は評価に値するのではないか、と考えます。『人になれ 奉仕せよ』という校訓を掲げる大学を卒業し、自民党総裁選に挑戦しようとしています。この校訓を実現できるかどうか、小泉氏の政治手腕に注目したいと思います」(石渡氏)


 米国留学経験のある大手IT企業管理職はいう。


「基本的にアメリカの名門大学の大学院は成績が悪いと進級すらできず、特に英語がネイティブではない国の学生の落第率は英語ネイティブの学生より高く、優秀ではないと修士号は取得できない。なので、小泉氏の学歴という意味では『かなり高い』といっていい。そもそも小泉氏は小学校から関東学院系列でエスカレーター式で大学まで上がったので、一般入試で関東学院大学に入ったわけではなく、子どものときから将来は政治家になることを見越して、父・小泉純一郎氏の地元である横浜の学校だという理由で入学したのだろうから、関東学院大学のランクと小泉氏の学力を関連づけて論じることにあまり意味はない。


 また、安倍晋三元首相は成蹊大学、菅義偉元首相は法政大学の卒業であり、高学歴とはいえないが、彼らの首相としての功績と学歴に関係があるとはいえないだろう。父・純一郎氏の出身校である慶應義塾大学と進次郎氏の関東学院大学は偏差値的には大きな差があるものの、それが首相としての働きぶりに何か大きな差を生むとは思えない」


(文=Business Journal編集部、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)



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  • 「経営学部の偏差値は40」⇒ ダメでしょw
    • イイネ!2
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