日本の1970年代と同様の経済成長期にあるベトナムが迎えたカタルシス、「ロータス」の運用責任者に聞く

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2024年09月02日 11:01  サーチナ

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サーチナ

「ベトナム・ロータス・ファンド(愛称:ロータス)」の運用責任者である元木宏氏(写真)にベトナム経済の現状と今後の見通しを聞いた。
 米国をはじめとした先進国経済の成長が鈍化する見通しにある中、新興国経済への見直しが始まっている。新興国経済で代表的な成長期待の強い国はインドだが、そのインドと等しい成長の魅力がある国としてベトナムも注目されている。2017年1月に設定された「ベトナム・ロータス・ファンド(愛称:ロータス)」は、過去5年(年率)トータルリターンが15.89%と、ウエルスアドバイザーが分類する「国際株式・エマージング・単一国(為替ヘッジなし)」の平均8.77%を大きく上回る高いリターンをあげている。同ファンドの運用責任者である元木宏氏(写真)にベトナム経済の現状と今後の見通しを聞いた。

 ――ベトナムは日本を50年遅れで追いかけているという見方をされていますが、その意図は?

 ベトナムは10年におよんだベトナム戦争が1975年に終結し、その後、1995年にアメリカとの国交を樹立し、ASEANにも加盟します。そこから現在に続く経済成長が始まっているのですが、この時期が第二次世界大戦が終わった1945年頃の日本に似ているのです。日本では1949年に東京証券取引所が再開され、ベトナムでは2000年からホーチミン証券取引所がスタートしました。

 たとえば、ベトナムの1人当たりGDPは現在4324ドル(2023年)ですが、日本は1973年に3809ドルでした。ベトナムの平均年齢は32歳(2022年)ですが、日本では1980年の平均年齢が33歳です。そして、株式市場の時価総額は約41兆円ですが、日本は1972年が31兆円です。現在、トヨタ自動車の時価総額が約44兆円ですから、ベトナム株式市場全体でトヨタ自動車くらいの価値になっています。ベトナムの2020年代は、日本の1970年代に似ているのです。

 そして、日本の1970年を振り返ると、1人当たりGDPは1967ドルでした。その後、1995年に4万2110ドル、約21倍に成長しました。日本の株価は1970年に1987円(日経平均株価)だったものが、1989年に3万8916円になりました。株価も約20倍になったのです。この20年間で起こったような日本の変化が、これからベトナムで実現するのではないかと考えています。

 1969年末から1989年末まで20年間の配当を含むTOPIX(東証株価指数)の累積リターンはドル建てで4710%です。この間に円ドルレートが360円から144円に約2.5倍になったため、株価の20倍増がドル建てにすると50倍近い上昇率になりました。これは、同期間のS&P500の累積リターン804%やNASDAQの355%を大きく上回っています。この日本の「黄金期」と同じような輝きをベトナムに感じます。

 日本の1970年代を代表する政治家は田中角栄氏です。田中金脈問題やロッキード事件など汚職が社会的な問題になりました。現在のベトナムも政治家が職権を使った不正を行っていることがたびたび問題になっています。それらの事件が起こるたびに、「こんな国は信頼できない」、「こんな国には投資できない」などという議論にもなりますが、1970年代の日本で政治家の汚職は問題になりましたが、それによって日本の経済がおかしくなったということはありませんでした。株価は1989年まで20年間にわたって上昇したのです。

 株価の上昇は、その背景として経済成長がなければならないと思います。その点で、今、高い経済成長の入り口に立ったベトナム株式市場は、非常に魅力的な市場であると考えています。

 ――ベトナムが今後も成長を続けるだろうと考える根拠は?

 「安定した政権と良好な国際関係」、「労働力」、そして、「インフラの整備」です。まず、「安定した政権」によって、ベトナムの失業率は1.5%という低い水準で安定しています。共産党が1党独裁で問題をはらんでいるのではないかという見方もあるでしょうが、現在のベトナムは、一時期の中国がそうであったように「左にウインカーを出しながら、右にハンドルを切る」と例えられたような、共産党政権でありながら経済政策は資本主義的です。また、政権は4人の集団指導体制をとっていて、1人に権力が集中するような体制にはなっていません。「良好な国際関係」という点では、14の自由貿易協定を結ぶなど、世界の生産基地として国内に産業を誘致してこようという強い意志を持っています。

 ベトナムは人口が約1億人で、6000万人超の質の高い「労働力」を抱えています。現在のところ賃金は中国の2分の1以下の水準であり、世界の企業が中国から生産拠点を移そうという動きになっている中で、ベトナムは中国の代替地の1つに位置付けられています。中国企業もベトナムに生産拠点を作ることに熱心です。「インフラ整備」については、南部の大都市であるホーチミンに日本の技術協力を得て地下鉄が今年開通する見込みです。北部のハノイの地下鉄は中国とフランスの技術協力で開設されました。港湾や空港整備、発電・送電など、様々なインフラ投資計画があり、これが経済の押し上げ要因にもなっています。

 ベトナムの経済成長率は年6〜7%程度で安定的に伸びているのですが、2024年から26年まで3年間の累積成長率見通しは20%で、これは、米国の6%や日本の2%などと比較すると非常に高い成長率です。

 ――ベトナムの株価は2022年に大きく下げています。この理由は?

 2022年は米FRBが急激なインフレ進行に対処すべく急速な利上げをした事から米国株価が約20%下落した年です。ベトナムの株価は、この米国株価の動向に影響を受けました。ベトナム株式市場の参加者の90%はベトナムの資金で、そのほとんどは個人投資家です。このため、内外のニュース等に大きく反応する傾向が強いのです。株価の変動率(ボラティリティ)は比較的高い市場になっています。2021年に株価が大きく上昇した後だったこともあり、2022年は大きく下落しました。

 ――ベトナム株については、証券会社で直接投資することもできます。投資信託を使うメリットは?

 経済全体が高い成長が期待できる市場ですから、直接、個別の株式に投資したいと考える方もいらっしゃると思いますが、ベトナム株固有の事情として、個々の銘柄に外国人投資家の保有制限がかかっています。このため、有望な投資先であるジュエリー大手のPNJや大手銀行のMBBなどは上限に達していて外国人が新規に購入することができません。

 ただ、投資信託であれば、外国人の機関投資家から株式を譲り受けることで運用資産に組み入れることができます。通常、10万株以上の大量の株の個別銘柄をまとめて売買するバスケット取引を行って投資信託に組み入れます。一般的に、購入したい銘柄については、市場価格に対して数%のプレミアムを付けて買い取ることになりますが、外国人同士の間での移動ですから、保有制限の上限に達した銘柄でも購入できるのです。

 また、個人で直接投資しようとすると売買手数料や為替の手数料など、投資信託の運用で支払っている手数料率よりもはるかに高い水準の手数料を負担することになります。投資信託の場合には自分自身で投資銘柄を選ぶということはできませんが、より効率的な投資が可能になります。

 ――「ベトナム・ロータス・ファンド」の特徴は?

 ベトナム経済の成長に合わせて成長が期待される70銘柄程度に分散投資します。投資銘柄の選定にあたっては、マクロ経済の動向等を考慮するトップダウンの投資判断と、個別企業の調査・分析の結果を踏まえたボトムアップの判断を合わせて、その時々で最適な投資銘柄と配分比率を決定していきます。この個別企業の調査・分析に関しては現地の複数の有力証券会社の優秀なアナリストやトレーダーから毎日情報を得ています。

 ファンド名の「ロータス」は蓮の花を意味します。蓮の花は仏教では神聖な花とされていて仏教国のベトナムの国花です。南北に長い国土やほぼ単一の民族で1億人程度の人口であることなどを含めて、ベトナムは日本と似通ったところがあります。公用語が20の言語もあり、インダス文明以来3000年の歴史があるインドなどと比較するとわかりやすい国ということもできます。ぜひ、日本の投資家の方々にベトナムの魅力を知っていただき、親しみを持って長く投資してほしいと思い「ロータス」をファンド名に加えました。

 当ファンドは、新NISAの「成長投資枠」の対象ファンドでもあり、ベトナム経済の成長を捉えて中長期に大きな資産の拡大を目指していますので、ぜひ、資産運用の投資対象として役立てていただきたいと思います。

 ――現在のタイミングは、ベトナム株に投資するタイミングとしては良いのですか?

 ベトナム株式を代表する株価指数であるVN指数は、1500ポイントのピークを2022年につけて、2024年に入ってからは1200〜1300ポイントでもみ合っています。現在の予想利益に基づくPER(株価収益率)は約12倍で、過去10年平均の15倍に比べてリーズナブルな水準であり、割安といえます。良い投資タイミングと考えますが、投資の基本の一つである時間分散もお忘れなく。

 また、現在、ベトナム株はMSCIやFTSEなど国際的な指数会社が出しているインデックスにおいて最下位の「フロンティア」に分類されていますが、これを「新興国」に格上げしようという動きがあります。新興国株に分類されると、世界中の年金基金など機関投資家の資金が入りやすくなるため、ベトナム株式市場への注目度が一段と高まると考えられます。

 現在、FTSEが区分変更の準備を進めていて、来年3月をメドに新興国への格上げを実施するのではないかと言われています。MSCIはこれに1〜2年遅れるとみられています。この分類変更には、たとえば、現在のベトナム株への投資には予めベトナム通貨のドンを保有していなければならないという「プレ・ファンディング」の規制があり、また、外国人投資家の保有上限など、規制の廃止や緩和が求められているのですが、今、それらの条件に適うようにベトナム規制当局や証券取引関係者の間での調整が進んでいるところです。「新興国」への格上げは、ベトナム株式市場を活性化させるカタルシス(きっかけ)になると期待しています。

 また、現在のベトナムの政策金利は4.5%でコロナ禍中の4.0%を除けば史上最低水準に引き下げられていて、景気刺激的な金融政策がとられています。これまでは、この低金利のためにベトナム通貨ドンが対ドルで弱含むという副作用が懸念材料でしたが、米FRBによる利下げ観測が広がってきたために、ここ最近はベトナム通貨ドンの対ドルレートは強くなる傾向ですので、これもベトナム株の投資には安心感につながる要素だと思います。

このニュースに関するつぶやき

  • 注目ですね。中国の裏に隠れてアジアの穴場の経済スポットになるかも。
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