なぜロータスの新車「エメヤ」は電気で走る4ドアGTなのか

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2024年09月03日 12:30  マイナビニュース

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ロータスといえば軽くて小さいスポーツカーのメーカーというイメージだが、このほど日本で発売となった新しい電気自動車(BEV)「エメヤ」は全長5mを超える4ドアのGTだ。どうしてこうなったのか。ロータスらしさはあるのか。気になる実車を取材してきた。


ロータスの4ドアセダンは初じゃない?



ロータスがSUVでしかもBEVの「エレトレ」を発表してから約1年。ついに4ドアGTのエメヤが日本に上陸した。。納車は2024年末から始まる予定だ。



ロータスに「セダン」のイメージは薄いかもしれないが、76年の歴史を振り返えれば全くないわけではなかった。古くはフォード「コーティナ」をベースにした「コーティナロータス」(これは2ドアセダンだったが)やオペル「オメガ」をベースにした「オペルロータスオメガ」(イギリス名はヴォグゾールロータスカールトン)、日本ではいすゞ自動車「ジェミニ」(FF)のグレードのひとつに「ハンドリングbyロータス」というクルマも存在した。


そんなロータスが最新のエレクトリックプレミアムアーキテクチャー(EPA)プラットフォームを使用して作り上げたBEVがエレトレであり、エメヤなのである。



ここでエメヤの概要を説明しておこう。



2018年、ロータスは「ビジョン80」という中・長期戦略を発表した。ロータスが80周年を迎える2028年までに、ブランドを伝統的な自動車会社からオール電動のインテリジェントでラグジュアリーなモビリティ・プロバイダーへと変革しようという構想だ。「エミーラ」を投入する前までは年産1,500台に過ぎなかったロータスだが、2028年までには年産15万台規模への拡大を図る方針だという。この戦略から生まれたのがエレトレとエメヤだ。当然、今後も複数の新型車を投入する計画となっている。



エメヤのボディサイズは全長5,139mm、全幅2,005mm(ドアミラー除く)、全高1,459mm〜1,467mm。メルセデス・ベンツ「Sクラス」並みの立派な体躯を誇る4ドアサルーンだ。この全高からもわかるように、姿勢はかなり低い。ロータスがエメヤを「4ドアGT」と呼ぶ所以だ。


パフォーマンスは最高出力612ps(エメヤRは918ps)、最大トルク710Nm(エメヤRは985Nm)を誇る。高性能バージョンのエメヤRで0-100km/h加速は2.8秒以下、0-200km/hは9秒という俊足だ。一方で最大509リットルというトランク容量を持つので、ちょっとした小旅行でも十分に荷物を積載できるだろう。


GTとして気になる航続距離は610km(WLTPモード値)。バッテリー容量は102kWhだ。例えばポルシェ「タイカンターボ」と「ターボS」は93.4kWhなので、それよりも容量は大きいということになる。



最新のテクノロジーも充実。4つのLiDAR、18のレーダー、7つの8MPカメラなどを搭載し、クルマの周囲半径約200mまでの障害物をスキャンして安全性を確保するという。システムはOTA(Over The Air)でのアップデートが可能。将来の自動運転にも対応していくと想像する。デジタルミラーが付いていたり、センター画面の操作でドアを開け閉めできたりと電子技術満載のクルマだ。

なぜスポーツカーからBEVづくりを進めない?



ロータスといえば「軽量スポーツカー」のイメージが強い。新型車が「4ドアGTでBEV」と聞くと、これまでとは全く異なる印象を抱くかもしれない。ロータスはなぜ、エメヤのようなクルマを開発したのだろうか。



これは「ビジョン80」の実現に向けた戦略と見るべきだろう。まずはラインアップを拡充し、現在のロータスユーザー以外からの流入を活発化しなければいけないのだ。



そうはいっても、ロータスのもともとのイメージを大切にしなければ、せっかくのファンが離れていってしまう危険性もある。BEVを作るにしても、最初は軽いスポーツカーにしておけばよかったのでは……。こんな風に考える人もいるかもしれない。そのあたりについてロータス・カーズ・アジアパシフィックおよび中東・アフリカ地域の責任者であるダン・バルマーさん尋ねてみると、以下のような話を聞くことができた。



「バッテリーの現状の技術レベルを考えると、いまのロータスのサイズのスポーツカーに搭載するには大きすぎるのです。そこで、スペースが許されるサイズのクルマ(セダンやSUV)から作り始めました。ただし、将来のバッテリーテクノロジーは小さなパッケージにも対応できてきますので、当然、(スポーツカーを作ることも)可能になるでしょう」



ロータスの創業者であるコーリン・チャップマンは、スポーツカーだけでなくさまざまな構想を持っていた。「ここ最近は小さなスポーツカーが多かったのですが、今後は過去と同様にいろんなものにトライしていきたいと思っています」というのがバルマーさんの考えだ。



ただし、ここで絶対に譲れないことがある。それは、ロータスにユーザーが求めるもの、言い換えればロータスらしさだ。「運転した時の楽しさやハンドリングのレスポンスは重要です。つまり、ドライバーとの一体感やダイレクト感ですね」とバルマーさん。それを実現するにはBEVの方がやりやすいという。



「特にEVに関しては、アクセルペダルを踏み込んだ時のレスポンスがすごくいいですし、サイズの大きなクルマほどそういった印象がわかりやすくできるでしょう。実は私は毎日のようにBEVに乗っているのですが、これと比べるとガソリンエンジンのクルマは反応が遅くて、古く感じてしまうんです。このあたりは、エメヤやエレトレに乗っていただければ、理解してもらえるはずです」



スポーツカー以外の分野への進出に意欲を見せるロータス。当然、今後はマーケティング面も変わってくる。その点について、同じくロータス・カーズ日本と台湾を統括する寺嶋正一さんは、「ライフスタイル寄りのイベントをより多く開催していきます。ロータスがある生活を表現したいのです」と述べる一方で、「これまで通り、サーキットを含めた走行重視のイベントも引き続き開催もします。そうすることで、ロータスはこんなに幅広く楽しめるのかということを訴求したいんです」と語っていた。



また、ロータス・カーズ・アジアパシフィックおよび中東アフリカ地域のマーケティング&広報のヘッド、ラムジ・アタットさんも、「新しいお客様もお迎えしたいのですが、当然、これまでのお客様も大切にします。なぜなら、彼らこそロータスの良さをわかっているからです。そこにはロータス以外のデイリーユースのクルマもあるでしょう。それをロータスに変えてもらえるいい機会にもなりますね。とにかく乗ってもらうこと、そうすればロータスだということがわかってもらえるでしょう」と話していた。


はたしてロータスが4ドアGTやSUVなどを作って市場に受け入れられるのか。正直、疑問はぬぐえないが、彼らは相当な自信をもって計画を推し進めている。その証拠に、同社は先ごろ、ニューヨークのナスダック市場に上場をはたしているし、実際、昨年の売り上げは過去最高を記録したそうだ。



それでも心配そうに話を聞いている私にダンさんは、「ガソリンエンジンのスポーツカーも開発は続けていきますよ」とにっこりと笑って教えてくれた。ロータスは電動車とガソリン車の二正面作戦で今後の歩みを進めていくことになる。


内田俊一 うちだしゅんいち 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験をいかしてデザイン、マーケティングなどの視点を含めた新車記事を執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員。 この著者の記事一覧はこちら(内田俊一)

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  • いすゞといえばクロカン四駆のビッグホーンにも「ハンドリングbyロータス」が存在したからそう驚くことではない。
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