「ガリガリ君」はなぜ国民的アイスになった? 赤城乳業が明かした「人気フレーバートップ5」 課題は海外市場の開拓

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2024年09月04日 09:51  ITmedia ビジネスオンライン

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ガリガリ君が支持される理由は?

 日本を代表するアイスキャンディー「ガリガリ君」。1981年の発売以来、コンビニやスーパーの定番となり、現在に至るまで売れ筋商品としてヒットを続けている。


【画像】これはすごい! ガリガリ君工場の削氷室、充填する様子、棒を挿す様子、人気フレーバートップ5(全8枚)


 アイスキャンディーなどのいわゆる「氷菓」は、食べているときは涼感があって良いものの、ねっとりとし過ぎていたり、甘すぎたり、しばらくしてかえってのどが渇くような商品もある。それに対してガリガリ君には独特な、かき氷に近いスッキリとした後味があって、のどの渇きも潤う感がある。


 ガリガリ君を製造販売する赤城乳業の本社は埼玉県北部の深谷市にある。「日本一暑い街」として知られる熊谷市に隣接しており、やはり夏は暑い。赤城乳業はかつて「天然氷」で商いをしており、氷に関する知見が深い。酷暑を乗り切るノウハウとして、喉が乾きにくい氷菓を考案したとも考えられる。


 現在、ガリガリ君に使っている氷は、不純物のない溶けにくい「純氷」。雑味のない軟水の氷を削っているので味がストレートに伝わり、ガリガリ食感と涼感が持続する。同社には他にも、「ガツン、とみかん」「ソフ」などといったナショナルブランドを有するが、軽やかでスッキリとした後味は共通した作風となっている。


なお、赤城乳業の社名は、群馬県に近く、赤城山が本社からも見えることから付けたという。牛乳を製造販売したことはないものの、将来的には営む予定だった説もあるらしい。


 深谷というと、新1万円札の肖像画に選ばれた「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一の生家がある。地元は盛り上がっており、隣接する本庄市にある工場見学と、渋沢栄一記念館をセットで観光する人も増えているとのこと。


 さて、今回はそんな赤城乳業の大ヒット商品・ガリガリ君の開発背景と、人気が持続する秘訣を探求していこう。


●オイルショックがきっかけ? かき氷がカップからワンハンドへ進化


 赤城乳業の前身である広瀬屋商店の創業は、1931年までさかのぼる。創業の地である深谷は、中山道の深谷宿として発展した街で、昔から信州との交易が盛んだった。渋沢栄一も若い頃、深谷の特産だった染料となる藍玉の行商で信州・上州を売り歩き、財を成した。広瀬屋は軽井沢の製氷工場から上質な天然氷を仕入れて、JR高崎線・深谷駅前で販売していた。その後、1960年に合資会社赤城乳業と社名を変更し、翌年に株式会社赤城乳業としての歩みを始めた。


 1964年にはかき氷カップの「赤城しぐれ」を発売し、ヒット。店先で氷を削ってもらって食べるのが主流であるかき氷を、もっと手軽に食べられるように、カップにかき氷を詰めた、当時としては画期的な商品だった。


 狙い通りにヒットした赤城しぐれだったが、1970年代に起こったオイルショックの影響でコスト高が襲い、1個30円から50円に値上げを実施。競合他社は値上げを踏みとどまったため、値上げした赤城しぐれの売り上げが激減し、経営は危機的状況に陥った。


 会社のピンチを打開すべく、新商品の開発がスタートした。「子どもが遊びながら片手で食べられる、かき氷を作れないか」といった考えから、新タイプのアイスキャンディー・ガリガリ君の着想に至ったという。


 当初のガリガリ君は、かき氷を固めたバーの商品として販売していた。しかし、店頭に並ぶまでに、パッケージの袋の中で、かき氷がバラバラになってしまう問題があった。そこで、その問題を解決するアイデアとして、外側の薄いアイスキャンディーで、内側にあるかき氷を包む、二重構造となった商品にバージョンアップ。このような技術革新により、1981年に現在のガリガリ君の姿になったとのことだ。


●2000年に1億本を突破 人気の秘訣は「消費者との共同作業」


 ガリガリ君の販売数は、2000年に1億本を突破。2007年には2億本、2010年に3億本、2012年に4億本と、着実に人気を拡大してきた。現在はシリーズ全体で約4億本とのことなので、高い水準で安定しているといえる。単純計算で、日本国民1人当たり、年間4本弱を食べていることになる。売れる季節としてはやはり夏が強く、毎年7〜8月が売り上げのピークだ。


 では、ガリガリ君はなぜ、このように長らく人気を保っているのだろうか。同社の広報は「お客さまの日常生活で愛される商品として、お客さまとともに育ててきたという面がある」と説明する。


 例えば、2000年に消費者調査から挙がった意見を基にして、キャラクターの大幅リニューアルを実施。従来のキャラクターに「泥臭い」「レジに持っていくのが恥ずかしい」などと、厳しい意見が相次いだからだ。そうして、現在のように元気で愛嬌(あいきょう)のある、「ニューガリガリ君」が誕生した。


 また、子どもの頃にガリガリ君を食べていた大人世代に、もう一度手に取ってもらえるよう、2006年に「ガリガリ君リッチシリーズ」を販売開始。価格は少し上がるが、乳製品や菓子素材などを使ったワンランク上の製品を提案した。


 特に、2012年に発売した「ガリガリ君リッチコーンポタージュ」は、顧客からの「ガリガリ君にはもっと面白いチャレンジを期待している」という熱いエールをきっかけに開発をスタートした商品だ。フレーバーの奇抜さが、発売前からSNSで話題となり、発売するや否や売り切れて生産が追いつかなくなり、3日で販売休止する事態に追い込まれたほどのヒットを呼んだ。その後も、メロンパン味、ナポリタン味、たまご焼き味などといった、他社では決して商品化しないユニークなフレーバーを連発している。


 2015年には、細かい氷のジェラートのような味わいをコンセプトとした「大人なガリガリ君シリーズ」の販売を始めている。贅沢感あるキウイの種が入った「キウイ」「まる搾り白桃」などの商品がある。


 「今後もお客さまの声に耳を傾けながら、さらに多くの方々から愛される存在になるために、ともに成長を続けていきたい」と広報は意気込みを話す。


●ソーダと梨がツートップ


 さて、数々の取り組みを行ってきたガリガリ君だが、現在の顧客層はどうなっているか。広報によれば、ガリガリ君リッチシリーズや大人なガリガリ君シリーズを投入した効果もあり、30〜50代がボリュームゾーンとのこと。ガリガリ君はコンビニを当初から販売ルートとして重視。コンビニと共に成長してきた面もあるので、コンビニの主要顧客と重なる感がある。この世代は、子育て世代でもあり、親から子へとファンが継承されていくと思われる。


 歴代人気フレーバーのトップ5は、次の通りだ。まず、1位は「ガリガリ君ソーダ」。発売当初から年間販売している定番フレーバーである。2位は「ガリガリ君梨」。通常のガリガリ君よりも氷の粒を細かくして、本物の梨のシャリシャリとした食感を再現した。3位は「ガリガリ君リッチコーンポタージュ」。駄菓子「うまい棒」で人気なコーンポタージュ味だが、温かいものを冷たいアイスで食べるギャップの面白さを狙った点が人気を呼んでいるようだ。


 4位は「ガリガリ君リッチチョコミント」。2018年の発売以来、毎年ファンからリクエストがあるほど根強い人気を誇っている。5位は「ガリガリ君九州みかん」。2017年に発売した商品で、パッケージでは「くまモン」とコラボした。売り上げの一部は熊本地震復興支援として寄付している。なお、トップ5のうちソーダと梨は、ガリガリ君の代名詞ともいうべき商品で、人気が突出している。


 赤城乳業の将来ビジョンとして、海外市場の開拓が大きな課題の一つだ。2016年、タイに子会社を設立。東南アジアに進出して、タイ・ベトナムを中心にガリガリ君の販路を拡大してきた。「今後も、サンプリングイベントなどを通じて、現地のお客さまにもガリガリ君を知ってもらい、食べてもらう機会を増やしていきたい」(広報)としており、国内の人口減が見込まれていることもあり、海外の販売拡大にも注力していく計画だ。


 海外の多くの人に愛される「ガリガリ君」になれるか。ぜひ、ラーメン、寿司、天ぷらなどに続く、クールジャパンの「食」として、世界中に涼を届けてほしいものだ。


(長浜淳之介)



このニュースに関するつぶやき

  • 安いから。。。コスパ良いからじゃない??www  美味しいは美味しいけど、他のアイスを差し置くほど特別に美味しいって感じでもないし。
    • イイネ!2
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