やっぱりジムニーなのか? キャンプブームが終わっても支持されるクルマ

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2024年09月06日 06:21  ITmedia ビジネスオンライン

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キャンプブームが終わっても、支持されるクルマは?

 キャンプブームは終わった、と言われている。大手キャンプ用品メーカーの業績が振るわず、キャンピングカーの売れ行きも下降傾向にある。そういう数字で見れば、確かに一つの盛り上がりが収束した感はある。


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 しかし、キャンピングカーの販売台数は2022年をピークに若干下降気味ではあるが、相変わらず売れているし、国内の保有台数は増える一方だ。つまりユーザーは確実に増えているのである。


 ブームは去ったが、その分キャンプ場の予約が取りやすくなった、マナーを知らないユーザーが減ったという声もある。ハイシーズンの週末はキャンプ場はそれなりににぎわっているようだから、今もキャンプを楽しんでいる人は多いのだ。


 そして今やオートキャンプ、車中泊はクルマの楽しみ方のスタイルとして定着した感がある。


 ただし車中泊を禁止しているキャンプ場も少なくない。冷暖房のためのアイドリングや、深夜や早朝のトイレ利用などでの乗降時にドアを開閉する騒音が問題視されているからだ。便利さ、快適さを味わいたい向きもあるだろうが、アウトドアは自然や周囲の人へのインパクトをできる限り穏やかにするのが基本ルール。楽しすぎて羽目を外してしまうことのないようにも気を付けたいものだ。


 キャンプやアウトドア、ドライブ旅行などを楽しむユーザーは大型SUVやハイエースに乗っているイメージも強いが、実際には幅広い車種がキャンプ場に集まっている。


 トヨタのランドクルーザー(ランクル)やアルファードが乗用車の登録台数でランキング上位になる異常さも日本特有の現象であるが、アウトドアを楽しんできた人でもランクルユーザーは全体で見れば少数派だ。


 プリウスがそれほど売れていない(それでも僅差でせめぎ合う11位あたりを維持)のは、役割を終えたと判断しかけたトヨタの豊田章男会長の考えが正しかったことの裏付けでもある。プリウスの燃費性能を受け継ぐさまざまなハイブリッド車が普及したことで、ユーザーの選択肢が広がり、ますますトヨタの強みが発揮されている状態になっているのだ。


●クルマとアウトドアは親和性が高い


 クルマは日常の自由な移動を実現してくれるものだが、さらに連休や週末となれば非日常を楽しむための重要な道具になる。


 アウトドアを楽しもうとする時、本格的なクロスカントリー4輪駆動車(クロカン4WD)や大型SUVで乗り込んでムードを楽しむのも大事だが、便利さや快適さ、コストパフォーマンスを重視する人も多い。


 トヨタのシエンタが売れているのは、程よいボディサイズによる取り回しの良さと高い実用性、燃費性能と手頃な価格で非常にバランスが取れているからだ。


 乗用車の登録台数ではカローラ、ヤリスに次いで3位の人気を誇っているが、カローラやヤリスが複数のボディバリエーションをまとめて集計しているのに対して、シエンタは単一ボディで上位2モデルに匹敵する人気を誇っている。実質的には1位と言えるほどの人気車種なのである。


 現時点では納車待ちはほぼ解消されており、オプション次第ではあるものの、2カ月前後で新車が手に入る。一方、登録済みの未使用車も新車と変わらぬ価格で販売されている。


 ハイブリッド車だけでなくガソリン車も人気で、2年落ちで走行距離も進んだものであっても、値落ちが少ない。しばらくこの人気ぶりは続きそうであるから、ここで取り上げる必要もないのでは、と思うほどだ。


 使い勝手のいいコンパクトカーはファミリー層に大人気だが、アウトドアでも活躍できるだけの収容力や4WDモデルの走破性(と言っても生活四駆のレベルだが)も誇っている。


 今後、日本版ライドシェアの制度が見直されて、個人ユーザーが副業で収入が得られそうな環境が整えば、こうした電動スライドドアのコンパクトカーの需要がまた一段高まることになりそうだ。


●車中泊仕様だけではない、軽バンや軽トラの楽しみ


 今後ヒットが予想されるアウトドア系のクルマとしては、2024年末に日本でも発売と言われているジムニーシエラの5ドアが挙げられる。3ドアの人気も依然として高いが、より広い室内空間を持つ5ドアは、アウトドアでの使い勝手が高まりそうだ。


 4人乗りではあるが実用性も高まることで、幅広いユーザーを獲得できそうだ。しかし3ドアに対してあまり価格が上昇してしまうと人気も限定的となってしまうだろう。


 ジムニーは軽自動車だから維持費の安さもあって人気だが、ジムニーシエラも合わせれば毎月6000台弱が売れている人気車種だ。


 コスパ優先というアウトドア系ユーザーには、スズキ・エブリイのような軽バン/軽ワゴンが支持されている。軽貨物車として宅配事業にも引っ張りだこのクルマだが、DIYで車中泊仕様にしたり、リフトアップしてオフロード仕様にしたりして楽しむオーナーも増加中だ。


 軽トラックも同様に、キャンピングカーに仕立てるだけでなく、オフロード性能の高さを強調するカスタムも人気がある。以前はボディカラーも白しかなかったようなカテゴリーだが、最近はシルバーに加えて鮮やかなメタリックカラーもバリエーションに加えられている。キャビンを延長してリクライニングを可能にするなど、自動車メーカーもこのところ軽トラの充実化には積極的だ。


●クルマを「自分だけの空間」として使う


 これらによって、従来のクルマで得られる刺激を超えた、非日常的な刺激を比較的手軽に楽しめる。これらはセカンドカーとして利用しているケースも多い。通勤やチョイ乗りには軽自動車を使い、休日の遠出には大型SUVを利用するというユーザーもいる。


 しかし、それは一部の恵まれたユーザーだけの状況とも言えそうだ。可処分所得が減る一方の庶民にとって、クルマは徐々にぜいたく品へと戻っていくのかもしれない。そうなった時、燃費性能だけでなく快適性や利便性、さらにはプラスアルファの付加価値が重視される傾向が強くなっていくだろう。


 ただの移動手段であればカーシェアや、マイクロモビリティのシェアリングサービスに取って代わられる。しかし、クルマを自分だけの空間としても利用できるようになれば、一気にコスパは高まる。


 これまでも、自室代わりにクルマの室内空間を利用してきたユーザーは少なくない。これはアウトドアではなく、インドアユーザーにも訴求できるクルマの魅力だ。バブル期以降、駐車場に停めた車内でくつろぐユーザーは増えている。


 自宅では自分が望む音量で音楽を楽しめないことから、駐車場の車内で思い切り(と言っても状況により限度はあるが)好きな音楽や映像を楽しむ向きもある。それ以外にも、読書や工作などさまざまな趣味を車内で楽しむユーザーがいるようだ。


 都内のマンション価格が異常なほど高騰するなど、首都圏の住環境は庶民にとって厳しいものになりつつある。こうしたクルマの空間利用は今後も増えていくだろう。


 前席のヘッドレストを外してリクライニングすればフルフラットになるシートは、幅広い車種で導入されている。一見、車中泊には十分な装備と思われるが、より快適に寝泊まりしたいユーザーはリアシートを折り畳んで荷室をフラットにしてマットを敷くなど、工夫している。


 前述のシエンタには7人乗りと5人乗りが用意されているが、5人乗りはセカンドシートをフラットに収納できるので、2メートルの荷室長(後部座席をフルフラットにしたときの長さ)を生み出すことができる。これも人気を支えているようだ。


●クルマの魅力を開拓し続けなければならない


 車中泊関連を中心に、車内をより快適で便利にするカー用品やアウトドアグッズが今や数多くある。


 自動運転が搭載された際に、移動中にエンタメなどを楽しむことを付加価値として考えている自動車メーカーも多いようだが、すでに車内(運転中の利用は限定的だが)でエンタメを満喫しているユーザーには、さほど魅力的には映らないのではないだろうか。


 50歳まで結婚しない、実質的に生涯独身者の比率を示す生涯未婚率は、男性は現在およそ23%、女性はおよそ14%と言われている。2040年には男性の生涯未婚率が30%、女性も18%にまで上昇すると内閣府が予測している。


 少子化に歯止めをかけなければならない政府が悲観的な予測をしているのも問題だが、親と同居している独身者は、自宅以外にくつろげる空間としてクルマを利用する傾向が強くなっていくことも予測できる。


 コロナ禍によって移動がぜいたくになった時期を経て、移動を楽しむユーザーにクルマの価値が見直されている。どういったカテゴリーであっても運転の楽しみを追求するマツダのようなクルマ作りもあれば、トヨタのようにバリエーションの豊かさを効率よく実現する手法もある。


 ともあれ自動車メーカーはこの先も、クルマの魅力を開拓し続ける努力を強いられることになりそうだ。これまでとは異なるスピード感で新たな価値を開発し、それを訴求していく。これまでにない視点、開発の手法が必要となるだろう。


(高根英幸)



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