サッポロとキリンなど5社が、羽田空港でビアガーデンを開催 狙いは?

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2024年09月07日 07:31  ITmedia ビジネスオンライン

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サッポロビールの「サッポロ SORACHI 1984」(公式Webサイトより引用)

 サッポロビールとキリンビールは9月7日と8日の2日間、ビアガーデン「SORACHI BEER GARDEN(ソラチビアガーデン)」を、羽田エアポートガーデンで共同開催する。国内のクラフトブルワリー3社とも協力し、北海道で開発されたホップ「ソラチエース」使用のビール5種類を販売するという企画だ。“ライバル企業”のイメージが強い両社が、垣根を越えて手を組む理由とは――。


【画像で見る】どんなビールが提供される?「SORACHI 1984」「ブルックリンソラチエース」はこちらから


 サッポロとキリンが共同でイベントを開催するのは、実は初めてではない。両社は2019年に、ソラチエースを使用した商品を発売。サッポロの「サッポロ SORACHI 1984」と、キリンの「ブルックリンソラチエース」(米ブルックリン・ブルワリー社との共同出資会社ブルックリンブルワリー・ジャパンによる輸入発売)だ。


 これをきっかけに両社は同年の9月、あまりメジャーとはいえないソラチエースの認知を広げる狙いから、両商品を同時に味わえるイベントを都内のビアホールで開催。競合同士のコラボとして注目を集めた。


●欧米で人気に火、「逆輸入」で脚光の“ソラチエース”


 そもそもソラチエースとは、サッポロが1984年に北海道で開発、品種登録したホップだ。ホップは苦みや爽やかな香り、抗菌性などを持たせる役割を持つ、ビール作りに欠かせない原料。ソラチエースは、ヒノキやレモングラスに似た香りが特徴的なホップだが、当時の日本の消費者がビールに求めていたのは“爽快に飲める”こと。個性的な香りを持つソラチエースは、売り上げに苦戦した。


 ところがこのソラチエースを、2002年に米国のホップ農家が高く評価。2009年にブルックリン・ブルワリー社が商品化すると、米国でのクラフトビール人気も追い風になり、全土での発売に至った。2010年代には欧州にも広がり、好評を博したという。


 こうして人気となったソラチエースを、ブルックリン・ブルワリー社の社員が、親交のあった日本の木内酒造(茨城県那珂市)に紹介。木内酒造はこれを受け、2010年に国産の麦芽と米国産のソラチエースを組み合わせたビール「NIPPONIA」を発売した。


 「サッポロ SORACHI 1984」ブリューイングデザイナーの新井健司氏はソラチエースの歴史を振り返り、「1社だけではつなげない物語をつないできた」と評価。5社で開催するイベントの意義を強調する。


●クラフトビール3社も参加、国産化の拡大も狙う


 今回のイベントには、木内酒造、ヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)、忽布古丹醸造(ホップコタン、北海道上富良野町)と、クラフトビールを醸造する国内3社も参加。サッポロの契約ホップ生産者が栽培したソラチエースを用いて、限定ビールを販売する。ソラチエースが誕生してから40周年という節目にその認知をさらに広げ、「ホップで選ぶ」というビールの楽しみ方を提案し、市場の活性化を狙う。


 現在、日本のホップ生産農家は減少傾向にある。日本産ホップの生産量は、2008〜23年までの16年間で446トンから123トンと4分の1に(※キリン調べ)。担い手不足や機械化の難しさもあり、困難な局面が続いている。


 しかし、サッポロとキリンは日本産のソラチエースの生産量を増やしたい考えだ。気候変動といった環境変化にも対応しながら、生産者の支援や新たな品種の開発に取り組んでいる。


 サッポロの新井氏は「いつかは日本産100%の『SORACHI 1984』を作りたい」と意気込みを見せ、キリンの金惠允(きむへゆん)氏(ブルックリンブルワリージャパン コマーシャルダイレクター)も、「ホップの特徴、魅力を生かした商品化が重要だと捉えている。今は圧倒的に海外産が多いが、 日本産のホップの魅力を生かした商品もたくさん作っていきたい」と話す。


 羽田空港に登場した「SORACHI BEER GARDEN」は、2日間で合わせて1000人の来場客数と、3000杯の売り上げを目標に掲げる。5社の取り組みで、ビール市場に新たな風を呼び込めるか。



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