KDDI×ローソンの「リアルテックコンビニ」始動 Ponta経済圏拡大、povoの利用促進を目指す仕掛けとは

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2024年09月18日 23:51  ITmedia Mobile

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3社が目指すは未来のコンビニ。実店舗にテクノロジーを取り入れ、小売店の運営上の課題解決につなげる

 三菱商事、KDDI、ローソンの3社は9月18日、「コンビニの未来の姿」を明確にし、その実現に向けた取り組みを始めた。同日、顔をそろえた以下3社トップの発言をもとに、コンビニとモバイルの関係性や、コンビニの次の姿を解説する。


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・三菱商事 代表取締役社長 中西勝也氏


・KDDI 代表取締役社長 CEO 高橋誠氏


・ローソン 代表取締役社長 竹増貞信氏


●ローソンを共同経営するKDDIと三菱商事 各社の関係性を整理


 3社が次世代コンビニの実現に向けて大きく動いたのは2024年4月。KDDIがローソンへのTOB(株式公開買い付け)を実施した。TOBは成立し、ローソンは三菱商事とKDDIが50%ずつ出資する共同経営で、9月に再スタートを切った。


 ローソンの50年に渡る歩みと、三菱商事の関わり方について、中西氏はこう振り返る。


 「ローソンは1975年に大阪府に1号店をオープンして以来、着実にオペレーションを拡大。1997年には47の全都道府県への出店を達成した。創業25年目の2000年には三菱商事はローソンと業務提携を開始。2017年には三菱商事がローソンを子会社化した」


 「4半世紀にわたって筆頭株主として、ローソンとともに歩んでいく中で、東日本大震災やコロナ禍などの数多くの困難にも直面。その度に三菱商事グループ一丸となり、ローソンを後押しし、共に成長してきた」


 「2000年当時は三菱商事の純利益が1000億円にも満たない規模だったが、その利益を上回る規模の投資を決断できたのは、ローソンが小売業という枠組みを超えて、社会インフラとしての大きな可能性を秘めていると確信を持ったから」


 KDDIとの関係性についてはこう説明。「創業50周年を迎えるタイミングで、われわれ(三菱商事)は新しいパートナーであるKDDIを迎え入れる。KDDIとは2019年の資本業務提携契約以降、ローソンを通じて着実に関係を深め、2024年現在ではわれわれと同じようにローソンに対して、小売業の枠を超えた大きな可能性を感じている」


 「テクノロジーや強固な顧客基盤を持つKDDIとともに、ローソンのさらなる成長を支え、生活者の皆さんに新しい価値を提供することに挑戦していく。今回の提携を未来への布石とし、新しいコンビニモデルの創造の幕開けにしたい」


●社会インフラと化したコンビニ、次世代は「リアクテックコンビニ」に


 ローソンをはじめとするコンビニは、食品や日用品を安定供給できる「社会インフラ」として欠かせない存在となっている。中西氏はその未来像の姿を「リアクテックコンビニ」といい表す。


 ローソンは2024年現在、国内に1万4900店舗、グローバルにも8000近い店舗を展開している。「2024年はこれらの実店舗を拠点とし、ここにテクノロジーをしっかりと入れることで、グローバルにリアルテックコンビニエンスを展開できるローソングループにする」と竹増氏はアピールする。


 その具体的な店舗が「Real×Tech LAWSON」だ。2025年春、KDDI本社の移転先である「TAKANAWA GATEWAY CITY」(東京・港区)に、ローソンを2店舗(オフィスフロアと一般フロア)オープンする。人手不足や食品ロスなど、小売店の運営上の課題を、デジタル技術の活用で解決する目的の一環となる。


 この店舗は「社会課題解決のための実験場」だという高橋氏は、ここで体験できる内容を5つ紹介した。


 1つ目はAIとサイネージの活用による購買体験の変革だ。「スマートフォンでの決済」「AIカメラを活用した商品のレコメンド」「街の天気やイベントなどと連動したサイネージ」などにより、来店者が本当に欲しい商品を簡単に買いやすくなる。


 2つ目はAIロボティクスによる業務の改善。品出しや清掃、オフィス内への配送をロボットに頼ることで、人手不足の解消につなげる。


 続く3つ目はクイックコマース。天候、購買データ、配送員の位置、人口動態を分析し、需要予測や食材手配を最適化して、「最短15分での配送を実現する」(高橋氏)という。「既に中国で実現している短区間でのデリバリーが日本でも活用されていく」(高橋氏)


 4つ目はリモート接客。店舗内の専門スタッフが通信、電気、ガスなどの生活に欠かせないインフラサービスの相談に応じる。将来的にはAIの活用も検討しているという。


 5つ目はデジタルツインの店舗の整備だ。「スタートアップ企業の技術をシミュレーションし、その結果をリアルに動かしていくようなデジタルツインを、コンビニエンスストアでも作り上げていく。KDDIは1000億円程度かけて、GPUプラットフォーム(AIの学習基盤)を準備する。これを活用すれば、バーチャルの世界で、さまざまなシミュレーションを実行できる」(高橋氏)


 3社は今後、高輪店での実証結果をもとに、Real×Tech Convenienceの仕組みを構築し、他店舗への拡大も目指す他、三菱商事が有する海外での事業ネットワークなどを最大限活用し、ローソンの海外展開(既存展開エリアを含む)を支援していく。


●KDDIはポイント経済圏の拡大など、ローソンは街づくりを目指す


 KDDIはこうした取り組みだけでなく、「Pontaポイント経済圏の拡大」「通信サービスの活用」により、ユーザーとの接点を強化していく。


 Pontaについては、10月2日にクーポンやコンテンツのセットサービス「auスマートパスプレミアム」を「Pontaパス」へリニューアル。月額料金は548円(税込み)となっている。ローソンで利用可能な無料、割引クーポンを週替わりで提供する他、ローソンでau PAYを利用するときにPontaポイント還元率を上乗せするなどして、「お得」をアピールしていく。


 高橋氏は「ローソンが5月から全国に導入した次世代発注システムのAICO(アイコ)、KDDIが持つデータ、在庫データ、SNSのトレンドデータなどを組み合わせて、利用者に合う商品をレコメンドするサービスも提供したい」と今後の構想を語った。


 通信サービスの活用については、オンライン専用ブランド「povo」とローソンの連携を指す。KDDIはローソンに来店した人に対して、1回あたり100MB(月あたり1GB、最大10回)を付与する「povo Data Oasis」を2024年内に開始予定だ。「皆さんがお使いの主回線にトラブルがあったとき、主回線においてデータ上限に達したときに、このサービスをお使いいただける」と高橋氏。


 来店時に自動でチャージされるのかどうかについては、こう説明した。「来店時にアプリケーションでの操作は少し必要になると思うが、GPSのデータ(スマートフォンの位置情報)を組み合わせながら確認をしてチャージをする(ような仕組みになる)と思う」(高橋氏)


 KDDIはローソン店頭でのデータ専用eSIMも同年度内に販売開始予定で、これら2つのサービスで「ローソンへの来店機会を増やす」(高橋氏)狙いがあるようだ。「povoはさまざまなサービスに埋め込まれていくようなイメージで、2つのサービスはコンビニエンスストアに埋め込まれる1つのサービスの形としてご提案した。povoを使うとコンビニへ行きたくなるようなサービスを目指している」(高橋氏)


 このように、3社が描くコンビニの未来像の実現が目前に迫っているわけだが、実はローソンとして目指すのは「コンビニのさらに先の世界観」だ。「血脈を超えた老若男女が楽しくリアルで出会い、リアルで過ごして、それをテクノロジーで便利につないで、サービス展開していく――そんなハッピー ローソン・タウンづくりにチャレンジしていきたい」と竹増氏は熱弁する。


 街中でドローンでの商品配送、ローソン運営の農場/保育園の併設、自動運転バスの運行などが実現する予定だ。ローソンは4月、この街づくり構想を「ハッピー ローソン・タウン」と銘打ち、2030年の実現を目指すことを発表していた。「次の50年」を竹増氏は「店舗の出店・運営にとどまらない」年とし、小売業態の1つであるコンビニの垣根を越え、テクノロジーで人同士をつなぎ、コミュニティーを作っていく考えを示した。



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