スマートフォンで写真を撮り、データとして保存することが多い現在。「現像」した写真を大切にしている人はどれだけいるだろうか。Xにて8月中旬に公開されたオリジナル漫画『Shutter』(笑えない女性の話)は、運命を変えるような一枚の写真、アナログな宝物の愛おしさを感じさせてくれる。
笑えば幸せになれると信じているが、笑顔になることができない女子大生・ユウ。周囲から勘違いされ、避けられることの多い彼女だが、同じ大学に通う徹から告白される。ユウはそれを受けるが、「私に笑い方を教えてほしいの」と条件を付けて――。
作者の藤千華さん(@323snow)は今年の3月、「週刊少年サンデー」に読切作品『方向音痴の道の果て』が掲載され、今後が期待される漫画家だ。写真がつなぐ不器用なラブストーリーがどのようにして描かれたのかなど話を聞いた。(望月悠木)
■ユウの表情を描くうえでの意識
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――『Shutter』を制作した理由は?
藤:私自身、写真を撮ることも見ることも好きなのですが、他の人に撮ってもらった写真を見て「あれ?自分ってこんな表情もするんだ」と、新しい自分を発見する時があり、「このことを題材にして漫画を描こう」と思ったことがキッカケです。
――ユウと徹はいい意味で一般的な大学生に見えました。
藤:そうですね。一般的な大学生の男女に見えるように描いています。ただ、強いていうのであれば、本作ではギャップはいらないので、キャラクターの性格とビジュアルのイメージに齟齬が生まれないように意識しました。
——ユウは笑うことが苦手な女性です。だからこそ、表情を描くことは難しかったのでは?
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藤:感情表現が苦手でも、目元や口元に感情は出やすいと考えています。ユウは感情を描きたい時は目元や口元のアップを入れるようにしました。ちなみに、徹は感情表現ができる人間なので、逆に目元や口元のアップはほぼ入れておりません。また、48ページ以降は徹のセリフに若干の変化があります。わかりづらいかもしれませんが、ぜひ探してみてください。
——ユウの心理描写が多く描かれる作品でした。
藤:ユウの心理を描く時は背景の描き込み具合、空白、ベタの割合、セリフの多さなどを調節しています。わかりやすい場面を挙げると、18ページでゆうの頭の中が混乱状態に陥った際、文字数が他のページよりも多くなっていたり、文字そのものが大きく前に出ていたりなどしています。
——「思い出を保存できる」「私の笑顔を見つけてくれたから」など、グッとくるセリフも多く見られました。
藤:「キャラがそのまま言ったこと、言いそうなことをセリフにして作者が描き出している」という感覚です。「自分が選んでいる」というよりは「キャラが自分の口から発した」という感覚に近いです。
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――今後はどのような作品づくりを進めていく予定ですか?
藤:これからも読み切りなど、漫画をずっと描き続けていくつもりです。今後の作品もぜひご覧になっていただけると幸いです。
(望月悠木)
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