熊川哲也がバレエ教育に力を入れる理由「AIに勝つ人の感情を育てたい」【THE TIME,】

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2024年09月19日 12:01  TBS NEWS DIG

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TBS NEWS DIG

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海外で活躍する日本人バレエダンサーは約350人。今、日本のバレエ界は世界からも注目されています。モナコへ留学する12歳、さらに26歳のプリンシパル・ソリストの活躍とともに、熊川哲也さんのジュニア育成への思いを聞きました。

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「寝室をバレエ練習場に」12歳の世界1位を支えた家族

北海道に暮らす、中学生のバレエダンサー山田優七さん(12)。
4月に米国で開催されたコンクール「ユース・アメリカ・グランプリ」のクラシック部門で1位になり、奨学金を獲得しモナコへバレエ留学を決めました。

期間は1年間。バレエ経験のない両親はかなり驚きだったようです。

母親:
「娘の成長に親の経済力が追いつかなくて困っています(笑)」
優七さん(12):
「感謝 感謝」

優七さんが世界一に成長する陰には、家族の様々な支えがありました。
専業主婦だった母は、優七さんがバレエを始めてからパートを開始。

さらに夫婦の寝室はバレエの練習場に。大きな鏡に専用のフロアマット、レッスン用のバーも用意しいつでも練習できる環境を整えたのです。

家族に支えられ、バレエ用品メーカー『チャコット』のモデルにも抜擢されるなど今や日本を代表するダンサーになった優七さん。

7月に東京で行われたプロの舞台「Bright Step」にも出演しました。
「Bright Step」は、“日本に貢献したい”と海外のバレエ団に所属する日本のトップダンサーが、年に1回公演する舞台。
ドイツの「ハンブルク・バレエ団」のプリンシパル、菅井円加さんからもマンツーマンで指導を受けることができました。

優七さん(12):
「自分では意識していない所を注意してもらえたので、それを頭に入れておいて、モナコに留学しても教わったことを忘れないで踊りで表現したい」

モナコ留学前に憧れの人と対面

そして、モナコ留学を前に、優七さんにサプライズが!

優七さん(12):
「いつもYouTubeとかで踊りを見ていた人なので、実際に会うのがすごく夢だった」

優七さんが通っているバレエ教室に、熊川哲也さんが訪れたのです。

16歳で英国ロイヤルバレエ団に入り、プリンシパルとなった熊川さん。1999年に帰国すると、自身のバレエ団『Kバレエ』を設立しました。

そして熊川さんがすぐに取り組んだのが、ジュニアの育成。
Kバレエで活躍し、実績や教育者としての基準を満たした指導者によるバレエ学校「Kバレエ認定校」を作り、未来のバレエダンサーを育てているのです。

優七さんが通っているバレエ教室も、Kバレエの認定校。激励にやってきた熊川さんの前で、少し緊張気味に踊る優七さん。

『Kバレエ トウキョウ』芸術監督 熊川哲也さん:
「いいですよ。可愛いし、アピールもあるしね。もう少し成長して筋肉が強くなれば膝が外に向いてもっと良くなる」

熊川哲也が感じる情報社会の危うさ「だからこそバレエを」

2023年には「熊川財団」を発足し、高い志と才能を持つ子どもに奨学金を出しサポートを続ける熊川さんですが、バレエ教育への強い思いがあるといいます。

熊川哲也さん:
「すごく便利な文明の力が発達して、怖い世界に突入している危機感もありつつ、そこに対峙するためには、人の感情がAIに勝っていかなきゃいけない。それがクラシックバレエ教える上でキーになりそうな気がしてて」

情報社会の今だからこそバレエを学んで欲しいー。

熊川哲也さん:
「やっぱりね、“バレエにはセリフがない”というのは、ものすごい大きなキーだと思う。隣の人は高く跳んだけど、俺はここまでしか跳んでいない。こっちは汚く跳んでいるけど、僕はキレイに跳んでるじゃんとか、個人が優先されていくことになるから、個性の教育になる」

セリフがないバレエ。喜怒哀楽を踊りと表情だけで表現するからこそ、人間らしい感情が育まれると熊川さんは信じています。

子どもを魅了する仕掛けも…新作「マーメイド」

バレエを目指す子どもを増やそうと、熊川さんが今取り組んでいるのが、アンデルセンの童話「人魚姫」を題材にした「マーメイド」です。

熊川哲也さん:
「子どもたちに見てもらって、『あの舞台に立ちたい』とか『バレリーナになりたい』という子どもたちを、業界底上げを含めて増やしたい。例えば今、大谷君がいて、子どもは『野球をやりたい』って思うわけじゃないですか」

舞台の美術セットも、子どもたちが楽しめるようこだわりました。

ステージ後方には、水平に何本もワイヤーをはり「きらきら光る海の水面」を表現。ワイヤーの間隔が上に行くほど狭くなっているので、遠くまで続く海原のように見えます。

舞台の幕にも、まるで水中にいるかのような魚の大群が描かれています。

被災直後に観た舞台が励みに…26歳のプリンシパル・ソリスト

子どもたちにも見てほしい今回の作品。主役のマーメイドをつとめるのは、Kバレエ入団3年目のプリンシパル・ソリスト、岩井優花さん(26)です。

4歳からバレエを始めた岩井さんは、16歳でアメリカにバレエ留学しプロダンサーに。プロへの憧れを抱いたのは、2011年に、ある舞台を観たのがきっかけでした。

中学生の時に地元・岩手を襲った東日本大震災ー。

岩井優花さん(26):
「通ってたバレエ教室が沿岸に2教室あったので、教室が流されたり、被害が本当に酷くて」

震災から2ヶ月後、被災地の岩手で公演されたのがKバレエの「ロミオとジュリエット」でした。ロミオ役を演じていたのは、熊川哲也さん。

岩井さん:
「衝撃でしたね、初めてあのジャンプと踊りを見た時は。被災した直後だったからこそ、Kバレエが来て公演してくれたことが励みになったというか、すごく幸せだった」

Kバレエを観たことで、バレエに対する熱量も変化。一人で夜中まで練習を続け、バレエのためには“頑固”になることもあったといいます。

母・文枝さん:
「1回学校に呼び出しをされて(笑)。先生から『娘さんに駅伝を走らせて欲しい』と。足が速かったんですよ。でも本人にどれだけ言っても『体型が変わってしまうからバレエのためにやらない』って。先生にすみませんと謝りに行った」

本気でバレエに打ち込む娘を見て「全力で応援しよう」と決めた母・文枝さんは、整体療術師の資格を取得。娘をいつでもサポートできるよう自宅に治療用の機械も導入しました。

母・文枝さん:
「優花の公演があると必ず1日前、2日前に行って、治療をする」

公演中にじん帯に大けがをしたことがある岩井さん。「本番中に回ってて、軸足ブチってなって。靭帯が切れる寸前で」
それも母の献身的なケアで今では万全の状態で舞台に立てるようになったといいます。

幼い頃に見たKバレエで人生が変わり、それを支え続けた家族の存在。
「マーメイド」で主役を演じることで、親孝行とともに、子どもたちにバレエの素晴らしさを伝えたいと話します。

岩井さん:
「子どもさんたちが見に来た時に『私もバレエダンサーになりたい』と思ってもらえたら嬉しいので、そう思ってもらえるように頑張ります」

櫻坂46松田里奈「ジャンルは違うけど…」

櫻坂46の松田里奈さんは、バレエとはジャンルが違えど同じ思いがあると話した。家族のサポートの大切さを自身も感じ、「私も人の感情を動かせるようなパフォーマンスを一緒に切磋琢磨できたら」と、若きバレエダンサーからもらった“刺激”を噛みしめるように口にした。

(THE TIME,2024年9月5日放送より)

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