映画『ラストマイル』ヒット作を量産する塚原あゆ子監督「歯車であり続けたい」

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2024年09月28日 10:30  ORICON NEWS

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『ラストマイル』塚原あゆ子監督 (C)ORICON NewS inc.
 公開35日間で観客動員数324万人、興行収入46.3億円を突破(9月26日時点)する大ヒットとなっている映画『ラストマイル』。同映画の塚原あゆ子監督は、丁寧な演出に定評があり、彼女が手がけた作品が立て続けにヒットしている。現在、最も新作が期待される監督の一人だが、意外な経歴の持ち主である。

【動画】LAST MILE -Premium Talk−〈Episode.3 アンナチュラル編〉

 大学卒業後、1997年にテレビ番組の制作プロダクション、木下プロダクション(ドリマックス→TBSスパークルの前身)に入社。「大学が文学部だったので、就職活動のときに『進むならなんとなくマスコミ系かな』という感じで、いくつか制作会社も受けていて、最終的に入ったのがドラマや映画を作る会社でした。どうしてもこの業界に入りたい、監督になりたいという強い思いがあったわけではなく、社員になっただけで、経理の仕事をしていてもおかしくなかったんです。会社員として、与えられた仕事に一生懸命取り組んでいたら、それがプロデューサーの仕事であったり、助監督と呼ばれる仕事だったりしただけで…。人生って、本当に不思議だと思う」と、どこか他人事のように話す。

 助監督の経験を経て、演出家としてのデビュー作となったのは、2005年のドラマ『夢で逢いましょう』(TBS)。以降、ドラマ『夜行観覧車』(13年)、『Nのために』(14年)などの話題作の演出を次々と手がけ、15年には優れたTVドラマのクリエイターに贈られる第1回大山勝美賞を受賞した。その後も、ドラマ『重版出来!』(16年)、『リバース』(17年)、『アンナチュラル』(18年)、『MIU404』(20年)など、演出を手がけた作品が立て続けにヒットする。

 「監督としてのキャリアのスタートは、湊かなえさんの小説原作の三部作(『夜行観覧車』『Nのために』『リバース』)だと思っています。とくに『Nのために』がなかったら、『アンナチュラル』は生まれなかったと思います。野木亜紀子さんが脚本を担当された『重版出来!』のメイン演出の土井裕泰さんがサブ演出で私を呼んでくださって、野木さんと初めてお会いしたのですが、その時、『Nのために』のファンだとおっしゃってくださって、それがきっかけでオリジナル脚本を書いてくださることになり、生まれたのが『アンナチュラル』でした。続く『MIU404』で、野木さんから『アンナチュラル』の毛利刑事を登場させたいという提案があって、それが『ラストマイル』に帰着した。この10年、すべてが地続きでつながっているような感じですね。10月スタートの日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』も野木さんの脚本ですが、野木さんの頭の中にしかない世界をまたちょっとのぞき見させてもらっているような感じです」。

 天賦の才があった、ということ?と、問いかけると、「そんな才、ありません。凡人中の凡人ですよ。でも、人間というのは、何かをやらざるを得ない状況に立たされると、一生懸命勉強したり、アイデアが生まれたり、頑張ったりするものです。後からついてきた感じです。やっていくうちに、好きになることもあるじゃないですか。仕事ってそういうものじゃないか、とも思うんです。継続してやっていれば、そのうち好きなところが見つかって、最終的に天職だと思えたら幸せですよね。だから、続けられるかどうかが結構大事かもしれません」。

 映画監督デビューは2018年、同名ベストセラー小説を映画化した『コーヒーが冷めないうちに』。漫画原作の『私の幸せな結婚』(23年)、『ラストマイル』が3作目で、木村拓哉主演のドラマの続編『映画 グランメゾン★パリ』(12月30日公開)や、坂元裕二氏のオリジナル脚本による映画『1ST KISS ファーストキス』(2025年2月7日公開)が控えている。

 「多作でありたいですね。今年考えるべきこと、来年考えるべきこと、再来年考えなければいけないことは、たぶん違っているだろうから、1年に映画1本のペースでコンスタントに作品に関わり続けて、エンターテインメントがつながっていくような歯車であり続けたいと思っています」と、終始謙虚な姿勢を崩さなかった。

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  • なんとなくの選択と人との繋がりで成功?そりゃあ運と才能があったんでしょう。
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