講談師の旭堂南湖「なにか変わったことをできれば」艶笑講談を開催 魅力は「物語の面白さ」

0

2024年09月29日 12:33  日刊スポーツ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊スポーツ

講談と縁の深い大阪城をバックに笑顔を見せる旭堂南湖(撮影・阪口孝志)

講談師の旭堂南湖(51)が「艶笑講談〜官能と芸術〜」(11月4日、恵比寿寄)を開催する。戦国時代から続くとされる講談は神田伯山の活躍によって再注目されているが、50年ほど前にポルノ講談が人気を集めた時期があり、南湖の師匠3代目旭堂南陵も多くの作品を残した。再び「艶笑講談」として演じる南湖が思いを語った。


◇  ◇  ◇  


神田伯山の活躍で再注目を集めている講談。南湖は伯山のおかげで、地方に公演に行っても「認知度が上がってやりやすくなった」と感謝する。


落語と比較されることも多いが、話芸の落語に対し、講談は読み聞かせるところが異なる。歴史は落語よりも古く、盛衰を繰り返してきた。1970年代になり、女流講談師の田辺夕鶴(後に天の夕づるに改名)がポルノ講談で人気を集めたが、これを巡って講談協会が分裂する大騒動に発展。下火となり、お座敷芸としてほそぼそと残るのみとなった。


南湖の師匠3代目旭堂南陵もまた、多くの作品を残していたが、南湖は「お座敷芸としてあるものが、このままなくなっていくのは忍びない」。新世界に今年できたばかりの恵比寿寄(えびすよせ)で講演をすることになり、「なにか変わったことをできれば」と“艶笑講談”として上演することを決めた。


「ポルノブームは女性解放運動ともつながっていた。男性が大っぴらにシモのことを言っても非難されなかったが、女性が語ろうとすると非難された。今でも、隠してしまうところもある。もうちょっとおおらかであってもいいんじゃないかっていう思いはある。戦国時代には衆道、いわゆる男色というものもあり、今よりよっぽど多様性がある。現在の多様性の時代で、性をおおらかに語ってもいいんじゃないか」


多様性が叫ばれる時代だからこそ、あえて演じる意義を見いだしている。


根っこにあるのは「講談を広めたい」という思い。講談の魅力は「物語の面白さ」だという。


「忠義忠臣の話や人情、怪談といろんな話がある中で、色っぽいのもありますよ、と。赤穂義士には興味ないけど、色っぽいものから『講談っておもしろいな』って興味を持ってもらえるとうれしい。半世紀前に危機感を持ってやっていたんですから、令和の時代で新しい読み物を作って披露していくのはいいと思います」


落語の世界にも「艶笑落語」があり、上方四天王の桂米朝、笑福亭松鶴らも演じた。公演では艶笑落語を引き継ぐ落語家森乃石松と共演する。「落語と講談の違いも見えてくると思う。張り(扇)でパンパンとたたいて勇ましく語るリズムとかね」


講談の魅力を知るきっかけにしてみるのもいかが?【阪口孝志】


◆旭堂南湖(きょくどう・なんこ)1973年(昭48)8月28日、兵庫県生まれ、滋賀県育ち。大阪芸大大学院在学中に3代目旭堂南陵の講談を聞き、99年に入門。琵琶湖にちなみ「南湖」の名をもらう。同年6月初舞台。03年、大阪舞台芸術新人賞受賞。10年、文化庁芸術祭新人賞受賞。古典講談の継承、探偵講談の復活、新作講談の創造に意欲的に取り組む。なみはや講談協会所属。

    ニュース設定