巨人の菅野智之が今季終了後にメジャーリーグ移籍を目指すことが分かった。
4日の米スポーツ専門局「ESPN」の報道を受け、5日、菅野は東京ドームでの全体練習後に取材に応じ、「向こう(メジャー)でプレーするという気持ちでいる」と表明。4年前に叶えられなかった夢に向けて、その決意は固そうだ。
菅野は2020年オフにポスティングシステムでのメジャー移籍を試みた。しかし、その時はメジャー各球団との交渉がまとまらず、巨人に残留。あれから4年、今度は海外FA権を獲得し、改めて大舞台に挑戦する。
プロ生活12年目を迎えた菅野は今季開幕から絶好調。シーズンを通じて安定感あふれる投球を続け、24試合で15勝3敗、防御率1.67をマークし、チームを4年ぶりのリーグ優勝に導いた。
ただし、メジャーに挑戦するにあたって大きな懸念もある。それが奪三振率の低さだ。かつては9イニング当たり9個前後を誇っていたが、今季は156回2/3で111三振。9イニング当たり6.4個という物足りない数字だった。
それでも今季は抜群の制球力と熟練の投球術を駆使してセ・リーグの強打者をきりきり舞いさせてきた。優勝争いの渦中にいたシーズン終盤には、中4日での登板や、1試合125球の熱投など、自慢のスタミナも健在だった。今月11日に35歳の誕生日を迎えるが、長いイニングを投げられる投手はメジャーでも貴重な存在だけに今回は交渉がまとまる可能性はかなり高いだろう。
移籍先の候補として挙がるのは、かつて巨人と業務提携の関係にあったヤンキースが筆頭か。他には、大谷翔平と山本由伸がいるドジャース、先発投手陣が手薄なダイヤモンドバックス、かつて先輩・上原浩治が世界一に導いたレッドソックスあたりも触手を伸ばす可能性がありそうだ。
4年前は複数の球団が3年契約を提示したとも報じられたが、今回は年齢的に長くて3年、おそらく2年契約が基本線となるだろう。今季のパフォーマンスを鑑みれば、年平均は1000万〜1500万ドル(約14億8000万〜22億2000万円)が妥当なところか。
ただ菅野の頭の中にあるのは、16日に始まるクライマックスシリーズファイナルのこと、そしてその先の日本シリーズを勝ち抜くことだけだろう。
「シーズンが終わったタイミングで、もう一回自分の口から話させてもらいます」
自ら設けた5日の取材で、菅野はそう言い放った。
巨人が最後に日本一に輝いたのは、菅野が入団する前年の2012年。菅野自身は3度(13、19、20年)日本シリーズに出場しているが、いずれもパ・リーグ覇者に苦杯をなめている。菅野は“四度目の正直”を果たし、日本一を手土産にアメリカへと羽ばたくことができるか。その雄姿に注目だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)