「お前は、どの種類のアメリカ人だ?」の俳優はキルステン・ダンストの夫「本当に苦しんでいました」

0

2024年10月06日 13:00  ORICON NEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ORICON NEWS

映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(公開中)(C)2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.
 2024年最大の問題作との呼び声が高い映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が、4日より公開されている。4年に1度の大統領選(現地時間11月5日)を控え、この作品で描かれる“アメリカ国内での内戦”という衝撃的な設定が、もはやフィクションとは言い切れないほど現実とリンクしているとして話題になり、全米興行収入ランキングで2週連続1位を獲得した作品だ。

【動画】映画『シビル・ウォー』予告映像

 主人公のジャーナリスト、リー・スミス役を演じるキルステン・ダンストは、脚本を最初に読んだ時「あまり政治について語っていない」と感じたという。それは完成した映画にも反映されており、「どちらかというと観客それぞれの理解や想像力に任せる部分が大きい」と彼女は語っている。

 映画の舞台は、連邦政府から19の州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟による“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられている。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている――」。3期目に突入した権威主義的な大統領は、テレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目の前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていない大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへ向かう。だが戦場と化した旅路を進む中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていく。

 日本公開の直前に、キルステン・ダンストがオンラインでインタビューに応じた。彼女は、サム・ライミ監督の『スパイダーマン』三部作(2002・2004・2007年)のヒロイン役や、ソフィア・コッポラ監督作『マリー・アントワネット』(2006年)のマリー・アントワネット役で知られており、ジェーン・カンピオン監督作『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021年)ではアカデミー賞助演女優賞にノミネートされるなど、その演技力が高く評価されている。

――今回の企画を聞いたとき、率直にどう感じましたか?

【キルステン】脚本を初めて読んだときの印象は、「あまり政治について語っていないな」というものでした。どちらかというと、観客の理解や想像力に任せている部分が大きい作品だと思いました。ただ、分断というのはどこの国でも起こり得ることで、どの国もそのリスクを免れているわけではないと感じました。

――リーの役を引き受けるにあたって、何かリクエストや監督とのアイデア共有はありましたか?

【キルステン】監督のアレックス・ガーランドは、非常にオープンな性格で、俳優やスタッフに対して非常に敬意を払ってくれる監督です。役をもらったときに、リーが使うカメラを撮影に入る前から貸してほしいと頼みました。自然にカメラを扱えるようになりたかったんです。そのおかげで、準備をしっかり整えて撮影に臨むことができました。

――リーが危険を承知でホワイトハウスに向かう行動をどのように理解しましたか?

【キルステン】リーは、真実を伝え、問題を明確にするという使命感を持って仕事をしています。それを成し遂げることに全力を注いでいるのです。彼女はこれまでに多くの悲惨な現実を目の当たりにし、痛みやトラウマを抱えているはずですが、それらを心の奥底に押し込んで、表に出さないようにしていると感じました。

 撮影前に、メリー・コルビン(取材活動中に命を落としたアメリカ人戦争特派員で、黒い眼帯が象徴的な人物)を題材にした映画『Under the Wire』(2018年)を観ました。ジャーナリストの仕事や戦争の危険性について考えさせられる作品で、参考になりましたが、簡単に理解できるものではないということもわかりました。なので、自分の感情を素直に表現することを心掛けました。俳優として何かを表現することと、リーが写真を通して何かを伝えようとしていることは、共通する部分があると感じたのです。

――「お前は、どの種類のアメリカ人だ?」という台詞が印象的でした。日本はアメリカほどの分断には至っていませんが、その火種のようなものは存在するように感じました。このシーンに関して何か印象に残っていることはありますか?

【キルステン】あのシーンは、脚本を読んだときから非常に衝撃的でした。2日かけて、ほぼ長回しで舞台のように撮影しました。本当にひどい、人種差別的で吐き気がするようなシーンでした。その台詞を言ったのは私の夫、ジェシー・プレモンスが演じているキャラクターなのですが、彼もあの役を演じるのに本当に苦しんでいました。

――この映画と出会う前後で、ご自身に何か変化はありましたか?

【キルステン】ジャーナリストへのリスペクトがさらに強くなりました。彼らは「あえて危険な場所で活動している」というイメージが先行しがちですが、その勇敢さや献身はもっと評価されるべきだと思うようになりました。

――今も続いている虐殺や戦争の悲惨な報道に対して人々が麻痺しつつある中で、この映画に期待することは何ですか?

【キルステン】アレックス・ガーランド監督は、非常に革新的な戦争映画を作ったと思います。現代の戦争の複雑さを、非常にユニークな形で描き出しているのです。この映画が観客それぞれにとって意味を持ち、考えさせられる作品になることを期待しています。衝撃的で刺激的、そしてスリリングな映画であることは間違いありません。日本の皆さんにも、この作品を体験してもらいたいです。

    ニュース設定