クルマのクイズ 第35回 幻の日産製ロータリーエンジンを搭載するはずだったクルマとは?

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2024年10月17日 11:31  マイナビニュース

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● ロータリーエンジンといえばマツダというくらいに強固なイメージがありますが、実は日産自動車もロータリーエンジンを開発していたんです。今となっては幻となった日産製ロータリーエンジンを積んでデビューするはずだったクルマとは?


世界的・歴史的な出来事が発売に影響?



日産のロータリーエンジンを積むはずだったクルマは、1973年に発売予定でした。デビュー直前に起きた世界的・歴史的な出来事が、このクルマの運命に大きな影響を及ぼしました。



――正解は次のページで!● ○問題をおさらい!


正解はこちら!


○【答え】「シルビア」


そもそもロータリーエンジンは、1960年代にフェリクス・ヴァンケル博士とNSU社が共同で開発し、さまざまな特許を取得していました。軽量コンパクトで「おむすび」型のローターがハウジングの中で1回転する間に、通常のエンジンの燃料噴射、圧縮、爆発、排気をこなせる夢のようなエンジンといわれ、多くのメーカーが技術提携を申し出ていました。日本ではマツダや日産、ドイツでもメルセデス・ベンツが関与していたのです。


マツダはさまざまな技術的な試練を乗り越え、ロータリーエンジンの生産に成功します。一方のメルセデスは、耐久性や燃費、排ガス対応などが上手くいかずに開発から手を引きました。では、日産はどうだったのでしょう。



1972年10月に開催された第19回東京モーターショーで日産は、当時の「サニーエクセレント」にロータリーエンジンを搭載した試作車を公開しています。当時の資料によりますと、エンジン性能はほぼ目標を達成、エンジン自体の耐久テストも終了し、車両テストが進行している段階とされていました。日産は翌1973年秋以降、大衆乗用車クラスのスポーティーカーにロータリーエンジンを搭載して発売予定と発表していたのです。

1975年、件のスポーティーカーがデビューしました。その名を「シルビア」といいます。



初代シルビアは1965年に2ドアクーペとして登場。しかし、当時の「サニー」の倍に相当する価格設定などから成功とはいえず、1968年には生産を終了していました。ただ、そのデザインは今でも美しいと高く評価されています。



日産は、しばらくその名が消えていたシルビアにロータリーエンジンを搭載し、1973年秋に発売しようと開発を進めていたのですが、発売の直前に中東戦争による「オイルショック」が起きました。同時にガソリン価格も急上昇し、燃費への関心が一層高くなってしまったのです。



ロータリーエンジンはローターハウジングの内側でローターが回転する関係で、どうしても燃焼室の温度を高く維持できないこともあり、ガソリンの完全燃焼がしにくく、燃費はあまり良くありませんでした。そこで日産は、市販目前だったロータリーエンジンをあきらめ、通常のエンジンに転向。排気ガス関連で開発期間が延び、予定よりもおよそ2年遅れてシルビアがデビューしたのです。


予定通りロータリーエンジンを搭載したシルビアがデビューしていたら、どうなっていたでしょうか。今よりも一般的なエンジンと見られるようになっていたかもしれませんが、社会情勢を考えると、あまりいい面ばかりではなかったと思われます。結果論ですが、日産が断念したことから、マツダがロータリーエンジンの開発にかける熱意が増したとも言えるでしょう。



それでは、次回をお楽しみに!



内田俊一 うちだしゅんいち 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験をいかしてデザイン、マーケティングなどの視点を含めた新車記事を執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員。 この著者の記事一覧はこちら(内田俊一)

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