サッカー日本代表の3バックとは違う 三笘薫がブライトンの布陣変更で見せた別格の動き

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2024年10月20日 13:00  webスポルティーバ

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 プレミアリーグ第8節。6位のブライトンはアウェーで7位のニューカッスルと対戦した。代表ウィーク明けの初戦。ブライトンのファビアン・ハーツラー監督は、移動距離が長く、2試合(サウジアラビア戦、オーストラリア戦)で計178分(プラス、アディショナルタイム)出場した三笘薫を今季初めてスタメンから外した。

 三笘はブライトンで先発フル出場が大半を占める、いまどき珍しすぎる左ウイングだ。監督がロベルト・デ・ゼルビ(現マルセイユ監督)からハーツラーに代わっても、扱いに変わりはない。本来なら、ずっとピッチに立たせておきたい選手なのだろう。ここまで監督から厚い信頼を得ている選手も珍しい。その三笘を、重要な上位争い同士の対決であるにもかかわらず、ハーツラー監督はスタメンから外した。この先を見越した選手起用。森保監督にできるだろうかと、ふと考えてしまう。

 とは言っても、ハーツラー監督は"堪えきれずに"という感じで、三笘を後半15分に、最初の交代選手としてピッチに送り込んだ。その時、スコアは1−0。ブライトンがリードしていたが、試合内容はニューカッスルの一方的なペースだった。前半35分、右ウイング、ジョルジニオ・ルター(元U−21フランス代表)とのワンツーでダニー・ウェルベック(元イングランド代表)が先制するまで、ブライトンにチャンスらしいチャンスはなかった。

 後半に入ってもアウェー、ブライトンの劣勢は続く。そのタイミングで三笘は投入された。三笘は直後、後方から蹴り込まれたロングボール追いかけることになったが、そのスピード感溢れるいきのいい姿は、ピッチ上で燦然と輝いていた。

 ブライトン同様、ニューカッスルも各国の代表選手の集合体だ。ブルーノ・ギマランイス、ジョエリントン(ともにブラジル代表)サンドロ・トナーリ(イタリア代表)、アレクサンダー・イサク(スウェーデン代表)、アンソニー・ゴードン(イングランド代表)ら、好選手で固められている。三笘はそのチームに対しても、雰囲気満点の別格のプレーを見せつけた。100人以上とされる欧州組日本人選手のなかでも、三笘はナンバーワンであると太鼓判を押したくなった。

【ブライトンが3バックに】

 後半26分と27分には、左サイドでボールを受け、ドリブルで仕掛けながら、それぞれMFジャック・ヒンシェルウッド(U−19イングランド代表)、左SBペルビス・エストゥピニャン(エクアドル代表)とのコンビネーションで縦のエリアを崩した。

 このウイングプレーが絵になった。三笘が投入されるまで、左ウイングを務めていたヤシン・アヤリ(スウェーデン代表)に、この典型的な左ウイングとしての絵柄を望むことはできない。

 ウイングバックとしてプレーする日本代表の三笘は、単独プレーになりがちだ。孤立して見えるが、4−2−3−1の布陣上では、周囲とのコンビネーションプレーにも期待が持てる。攻撃はこちらの方が多彩になる。後半39分、さらにアディショナルタイムに入った後半47分には際どいシュートも放っている。長距離移動の疲れもなんのその。出場時間はアディショナルタイムを含め40分弱だったとはいえ、三笘の動きはタイムアップまですこぶるよかった。採点すれば、控え目に見ても7点に近い6.5という感じだった。

 後半36分、ブライトンのハーツラー監督は布陣を4−2−3−1から3−4−3に変えた。1−0を保つべく、守備固めに出たわけだ。数日前に実際に見たばかりの森保式3バックの3−4−2−1と比較せずにはいられなくなった。

 三笘はサウジアラビア戦と、オーストラリア戦では後半25分に中村敬斗が投入されるまでの間、ウイングバックとしてプレーした。オーストラリア戦で後半25分からプレーしたのは2シャドーの左側だった。

 一方、ニューカッスル戦の終盤は3−4−3の左ウイングに入った。3−4−2−1の2シャドーの左より確実に外側だった。そして相手ボールに転じると、5−4−1の4の左へと移動した。

 3−4−2−1と3−4−3の差は大きい。相手ボールに転じれば5−4−1になる点は同じだ。何が言いたいのかと言えば、三笘の移動距離だ。3−4−2−1の2シャドーの左から5−4−1の4の左への移動と、3−4−「3」の「3」の左から5−4−1の4の左への移動とでは、どちらがサッと移行することができるか。移動距離が少ないのはブライトンの三笘だ。それは高い位置から網を掛けやすいことを意味する。

 日本ではいままで、3バックといえば2シャドー型(3−4−2−1)と相場は決まっている。3−4−3はまず見ない。元日本代表監督アルベルト・ザッケローニがウディネーゼ監督時代に得意とした布陣だが、ザックジャパンではうまくいかなかった。

 実現したのは次のアギーレジャパン時代で、それは4−3−3との可変式だった。マイボールに転じたとき、4−3−3の守備的MFだった長谷部誠が最終ラインに降り、同時に、両SBが高い位置を取り3−4−3を形成する。

 なぜ3バックといえば3−4−2−1なのか。日本サッカー史上最高の左ウイングであり、現在の欧州組のなかで最高のフットボーラーと断言できる三笘の力を最大限に活用しようとすれば、最適解は3−4−2−1の左ウイングバックではない。どうしても3バックにこだわるなら、なぜブライトン式にしないのか。

 代表ウィーク明けに行なわれたこのニューカッスル戦は、「三笘」という共通項を通して森保ジャパンを考えるにはいい教材だった。三笘の力を日本代表でどう活かすかに、もっと焦点を当てるべきではないのか。学ぶべきことはハイレベルの攻防のなかにある。

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