『シビル・ウォー アメリカ最後の日』ISOさん・奥浜レイラさんはどう観たか。対話なくジャッジする怖さ

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2024年10月22日 18:10  CINRA.NET

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Text by 生田綾
Text by 南麻理江

10月4日に公開され、週末動員ランキングで初登場1位となるなど反響を呼んでいるA24の最新作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』。分断が深まり、国を二分する内戦が起きたアメリカを描いたディストピア・アクション映画だ。

CINRAが配信するPodcast番組『聞くCINRA』では、ライターのISOさん、映画や音楽に関するMC・ライターとして活動する奥浜レイラさんと、本作について語り合うエピソードを配信。番組の一部を抜粋して紹介する。

※記事では、物語後半の内容に触れています。あらかじめご了承ください。

奥浜レイラさん、ISOさん

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、連邦政府から19もの州が離脱したアメリカが舞台。共和党支持者が多いテキサスと、民主党支持者が多いカリフォルニアが同盟を組み、「西部勢力」として政府軍と対立。激しい内戦に突入していた。

物語の中心人物は、崩壊間際に迫ったアメリカの姿を取材するジャーナリストたちだ。キルスティン・ダンスト演じるベテランの戦場カメラマン、リー・スミスは、ジャーナリスト仲間であるジョエル(ヴァグネル・モウラ)、サミー(スティーヴン・ヘンダーソン)とともに新米カメラマンのジェシー(ケイリー・スピーニー)を引き連れ、大統領を取材すべくワシントンD.C.を目指す。

国中が戦地と化し、誰が「敵」か「味方」なのかもわからなくなった恐怖を描いた作品だ。

ポリティカルな要素が注目される一方で、娯楽作品としても成立しているのが、この作品の魅力の一つとISOさんと奥浜さんは強調する。本作は戦争映画でもあるが、アメリカののどかな田舎風景が広がるロードムービーでもある。

緊迫感のあるシーンに軽妙な楽曲が流れるなど、音楽の演出も印象的だ。イギリスのバンド・Portisheadのジェフ・バーロウと、ビヨンセの楽曲なども手がける作曲家のベン・ソールズベリーが音楽を手がけていて、劇中音楽にはDe La SoulやSuicideなどの楽曲が採用されている。

主人公のリー・スミスは、数々の戦場を潜り抜けてきたベテランの戦場カメラマンだ。物語では、国の悲惨な状況を前にしたリーが心を乱していく姿や、彼女に憧れる新人カメラマンのジェシーがリーの意志を継いでいくような場面が描かれる。

本作で観た人の心を激しく揺さぶるシーンが、ジェシー・プレモンス演じる謎の兵士が登場する場面だろう。プレモンス自身の発案により採用されたという真っ赤なサングラスをかけ、得体の知れない異様な雰囲気を醸し出す兵士は、リーら主人公一行を絶望に陥れる。

一行は、戦闘服を着た兵士2人が大勢の遺体を土に埋めているところに遭遇する。兵士は銃を構えたまま、リーたちに「どういう種類のアメリカ人だ? 中米か? 南米か?」と問いかける。そして、「コロラド」と答えたリーに「そうとも。それが米国人だ」と返すと、リーらの旧知の仲であるアジア人ジャーナリストに同じ質問をしたあと、間髪入れずに彼を撃ち殺す。

増長していくヘイト、銃社会の果てを描いたような衝撃的な場面だが、ISOさんと奥浜さんは、日本で暮らす私たちにとっても「他人事」ではないシーンだと分析した。
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