我が子は中学受験と高校受験のどちらに向いているか、判断する基準について東田先生に聞きました。
高校受験が向いているタイプ1:競争適性の低い子
中学受験では、成績がクラスや座席に影響するシステムを導入している大手塾も多くあり、競争が日常になっています。勉強が好きだったり、優秀だったりする子でも、この独特な「競争」に馴染めるとは限りません。「中学受験の競争システムに耐えきれなくなり、病んでしまう子をたくさん見てきました。実際に、円形脱毛症など体に影響が出る子もいます。
『あの子より偏差値を上げて上のクラスに行くんだ』という気持ちをモチベーションにできる子や、クラスが上がって自己肯定感が満たされる子、競争をゲームのように楽しめる子なら、中学受験向きだといえるでしょう」
一方で、「競争適性が低い」状態で、高校受験はうまくいくのか心配になります。
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高校受験は、中学受験のペーパーテスト一発勝負とは違い、内申制度や書類審査、併願優遇といったさまざまな入試制度があり、誰もが合格を得やすいシステムになっています。『勉強が得意でも競争適性が低い子』にとっては、実力を発揮しやすい環境だといえます」
高校受験が向いているタイプ2:早生まれや晩熟タイプ、のんびりした子
中学受験は早熟タイプが向いているという話はよく耳にしますよね。実際に、中学受験の最難関校として知られる灘中学合格者は、4〜6月生まれの子どもが197人(全体の36.4%)で、1〜3月生まれの子どもはわずか76人(全体の14.1%)というデータもあります。「早生まれや晩熟タイプの子は心の成長が比較的ゆっくりで、特に小学生の頃は早熟タイプの子との差を努力で埋めるのは難しく、受験に不利となってしまいます。とはいえ、生まれ持った脳の成長スピードも、15歳になれば早熟タイプとの差が埋まってきます。
都立高校では生まれ月による合格者の割合にそれほど差がないことから、晩熟タイプの子は高校受験のほうが力を発揮しやすいでしょう」
高校受験が向いているタイプ3:好きな習い事を続けたい子
小学校高学年になると、中学受験塾とそのほかの習い事を両立することが難しくなります。一方でこの時期は、小学生の間に頑張ってきた習い事の集大成の時期でもあります。勉強以外の習い事を続けていきたいと考えている子にとっては、中断することはつらい決断になります。「中学受験では、小学5年生頃になるとどうしても習い事を整理していく流れになりますよね。納得いかない思いがしこりのように残り続けてしまうと受験に集中できないケースがあります。
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高校受験が向いているタイプ4:英語が得意な子
「中学受験と英語は相性が悪い」とも、東田先生は語っています。「現状、中学受験の難関校で英語入試を実施している学校はほとんどなく、帰国子女入試は狭き門。小さい頃から英語を学んできた子が中学受験塾との両立ができずに途中で断念するケースもありますが、大変もったいないですね。
一方、高校受験では英語が主要科目で、合否を左右するのは英語ともいわれます。英語力を生かすことができれば高校受験では優位に立つことができるので、ぜひ高校受験をおすすめしたいです」
「後伸び」タイプは中学受験からの離脱も選択肢
このように、中学受験に向かないタイプの子が努力をしても結果につながらなかったとき、自己肯定感が著しく低下してしまうことが最も危険だという東田先生。「自己肯定感は『ありのままの自分を受け入れ、自分は価値のある人間だと感じることができる心の状態』のことです。早い段階からの通塾で自己肯定感が低下してしまった子が、不登校やうつ病などにつながるなどの深刻なケースもあります」
特に公立高校を受験する場合、学校での勉強を積み重ねていけば、おのずと実力に見合った学校に届くシステムであることも高校受験の特徴なのだとか。
「学校での学習をコツコツとこなし、部活動や課外活動と両立しながら過ごし、本格的な受験勉強は中学校3年生の夏期講習以降でも志望校に手が届く可能性は十分にあります。概ね3年間しっかりと受験に特化した勉強が必要な中学受験とは違う特徴ですね。
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我が子が「後伸びする」タイプかもしれないと気づいたら、思い切って中学受験から離脱し、高校受験に切り替えることも選択肢として持っておきたいですね。
東京高校受験主義(東田高志)プロフィール
Xで4万7000フォロワー(2024年10月現在)がいる教育系インフルエンサー。首都圏の受験情報を毎日配信している。実生活では、20年のキャリアを持つ塾講師。長年、学校と塾の変化を見続け、小中学生を教えてきた。おもに首都圏を中心とした教育ウォッチャーでもある。フィールドワークとして都内各地の公立中学校や都立高校を訪問、区議会議員とのコラボイベントも開催している。(文:東京高校受験主義(東田高志))